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第14話 仮説の輪郭


 ある夜、俺は一人で練習していた。


 暗い中庭。人はいない。


 石を地面に転がして、遠くから"外したい方向"を意識してみた。


 動く。


 次。


 動く。


 次。


 三回に一回くらいは動かない。でも、前より確実に安定している。


 (意図、か)


 クラウスの言葉を思い出す。漠然と"避ける"ではなく、具体的に"どこへ"という意識を持ったとき。


 俺はふと、別のことを試してみた。


 石を手に持つ。


 自分の手と石の"位置関係"を意識する。


 そのまま、石を空中に固定しようとした。


 一秒。


 二秒。


 三秒。


 落ちた。


 (当然か)


 でも、落ち方が変だった。


 普通に落ちるより、わずかに遅かった気がする。


 もう一度。


 同じように試す。


 また遅い。


 (気のせいじゃないかもしれない)


 頭の中でクラウスの声がする。"再現性がなければ存在しないのと同じだ"。


 うるさい。でも分かる。


 俺はもう一度試した。


 今度は意識を変えた。"石を固定する"じゃなく、"石と地面の距離関係を維持する"。


 一秒。二秒。三秒。四秒。五秒。


 落ちなかった。


 六秒目に力が切れて、ぽとりと落ちた。


 俺はその石を見た。


 (……できた)


 小さい。三メートルの高さから落とせるような力じゃない。数秒、数センチの距離で維持しただけだ。


 でも。


 確実に、何かができた。


 俺は石を拾い上げた。


 また試す。


 今度は少し長く。


 少しずつ、手が馴染んでくる感じがした。


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