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第13話 成り立たない現象と、成立し始めた仮説


 クラウスの検証は続いた。


 俺は毎日、昼休みの一部を使って実験に付き合った。別に義務でもないし、強制でもない。でも断る理由もなかった。何より、自分でも知りたいと思っていた。


 今日の課題は「軌道の操作範囲」だった。


「どこまで、どの方向に、どの程度ずらせるか、確認する」


「分かった」


 石を投げてもらい、俺は意識を向けながら避ける。


 右。


 左。


 上。


 斜め。


 ずれる。ずれない。ずれる。微妙にずれる。


 三十分後、クラウスはノートを閉じた。


「結論。君は投射物の軌道を、半径一メートル程度の範囲内で操作できる。ただし、精度は低く、意図が明確なときにしか発動しない」


「そんなに範囲があるか?」


「最大でそのくらい動いた。平均は三十センチ程度だ」


「制限は?」


「複数の対象は難しいと思われる。今日は試していないが、君の意識が分散すれば精度が下がるはずだ」


 理屈は分かった。


「あとは?」


「現時点では分からないことの方が多い」


 クラウスはそれだけ言って、少しだけ間を置いた。


「一つ聞いていいか」


「なんだ?」


「君は自分の力が怖くないのか」


 意外な質問だった。


「怖い?」


「分からないものは、人を不安にする。普通は」


 俺は少し考えた。


「別に」


 正直なところだ。


「分からないから使えないと思ってたのは最初だけだ。使えるなら使う。それだけだ」


「……なるほど」


 クラウスはまたノートを開いた。


「君のそういうところが、最も分析しにくい」


「どういう意味だ」


「普通は"力が解明されるまで慎重になる"か、"力があると分かってから調子に乗る"かのどちらかだ。君はどちらでもない」


「そうか?」


「うん。だからデータが揃いにくい」


 なんか失礼な話だった。


「俺の性格を変える気はないぞ」


「分かってる。それでいい。君のまま動いてくれれば、俺が観察する」


 クラウスは当然のように言った。


 (この男、なんか変なところで図太いな)


 俺は小さく笑った。


 まあ、悪くない。

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