表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/30

第12話 揃わない結果と、揃い始めるもの


 クラウスが俺を呼んだのは、昼休みの訓練場だった。


「今日は少し条件を変えて試したい」


「何を変える?」


「君の意識の向け方だ」


 クラウスは手元のノートを開いた。細かい文字がびっしり並んでいる。


「これまでの検証から、いくつか仮定が絞れた」


「聞かせろ」


「まず、現象は君の回避行動に連動している。アルトが指摘した通りだ」


「次に、傷が残らなかった件から、力の伝達と接触の記録が分離している可能性がある」


「そして」


 クラウスはペンを立てた。


「最も重要なのが、再現性の問題だ。同じ条件でも起きるときと起きないときがある。これは環境の差ではなく、君の内部の差だと考えた」


「俺の内部?」


「意識だ。より正確には、"注意の向け方"」


 俺は少し考えた。


「確かに、大きくズレたときは何か違った気がする」


「どう違った?」


「……漠然とした感じだが、ただ避けようとしたんじゃなく、もう少し具体的に何かを意識していた」


「それだ」


 クラウスはノートに書き込んだ。


「今日はそれを意図的に試す。石を投げる。君は避ける際に、"どこに外したいか"を意識してみてくれ」


「やってみる」


 距離を取る。クラウスが石を持つ。


「いくぞ」


 石が飛んでくる。


 俺は動きながら、"右に外したい"と思った。


 石が、わずかに右にずれた。


「……」


 クラウスが止まる。


「もう一度。今度は左」


 左と思いながら避ける。


 石が左にずれた。


 もう一度。今度はあえて意識しないで避けた。


 石はそのまま通り過ぎた。ずれなかった。


「……」


 沈黙が落ちた。


「条件が見えた」


 クラウスが言った。静かだが、確信がある声だ。


「意図だ。漠然とした"避ける"ではなく、具体的な意図を持ったときに発動する」


 俺は手を握った。


「まだ安定しない」


「そうだ。でも、これは訓練できる可能性がある」


 俺はそれを聞いて、少しだけ息を吐いた。


 訓練できる、か。


 分からないままのものが、少しずつ形になっている。


 それが、なんか少し嬉しかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ