第1話 無属性――それでも、水晶が割れた
結果は、無属性。
その一言で、教室全体の空気がひっくり返った。
「無属性? ここに入れたのが奇跡じゃないか」
「普通は一次試験で弾かれるだろ」
「なんで今まで黙ってたんだ」
笑い声が漏れる。遠慮がない。
俺――レイン・ヴェリスは、測定水晶から手を離しながら、教室を一度だけ見回した。
(……別に、どうでもいい)
無属性は事実だ。今に始まった話じゃない。
(俺もなぜ入れたのかはわからない)
問題は、そこじゃない。
さっき、水晶に触れた瞬間のことが引っかかっている。
色は出なかった。反応もなかった。それは当然だ。
でも――指先の感覚が、おかしかった。
水晶に"触れていた"はずなのに、どこかズレていた。距離が噛み合っていない、みたいな感覚。ほんの一瞬だけ、何かに触れたような気がして、次の瞬間には消えていた。
(気のせいか?)
たぶんそうだ。
俺は列の端に下がり、次の生徒が水晶に触れるのを眺めた。
鮮やかな赤が弾ける。
「火属性、良好」
教師の声。周囲からほっとしたような声が上がる。
正常な反応。正常な結果。
そうだよな。それが普通だ。
俺みたいなのが例外なんだ。
そのとき――
パキ、と。
小さな音がした。
「……?」
誰かが息を呑む。
中央の測定水晶に、細いひびが一本走っていた。
広がる。
ゆっくりと、確実に。
「誰か触ったか」
教師の声が強張る。
全員が水晶を見ている。誰も動いていない。
俺も見ている。
自分の手を見る。
そして、水晶との間の空間を。
(……繋がってる?)
理屈はない。でも、そう感じた。
さっきの"ズレ"が、まだどこかで続いている。
触れていない距離を挟んで、何かが届いている。
俺が、壊したのか?
そうとしか、思えなかった。
面白かったらぜひブックマークよろしくお願いいたします。




