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第50話 文化祭開幕!俺のテンションは爆上がり!!

時は流れ、11月中旬――


ついに、ついに文化祭当日がやってきた。



「それじゃ皆さん、楽しい文化祭を」

午前9時、担任の合図を皮切りに、教室の空気が一気に弾ける。


「楽しみー!!」


「絶対売上勝とう!」


「午前は宜しく!」



「お、おぉ……」


みんなのテンションに引っ張られるように、俺も落ち着かない気持ちになっていた。


放課後に残って準備した日々が頭をよぎる

段ボールの壁を立てたり、備品を揃えたり、試作を重ねたり。


今回、俺たちの出し物は喫茶店

場所は普通の教室ではなく、家庭科室をパテーションで改造した特設スペースだ。


教室使用の申請が通った時は、本気でホッとした。



俺もベストは尽くしたつもりだ。

スポンジケーキをベースにした各種スイーツ。


パフェもある。

さらにランチ用にサンドイッチとスパゲッティ!!


どうだ。結構本格的だろ?



いや、大丈夫かな?

う……売れるといいな……


そんなことを考えていると――


「ゆかっち〜!どうかな!」


振り向くと、そこにはウェイトレス姿の真桜さんが立っていた。


おおぉ、

ウェイトレスなんて括りには収まらない

皇帝とかの給仕係みたいで

店にいたら、指名料だけで数万円取られそうなレベルだ。


「め……めちゃくちゃ似合ってます……!」


「ありがとー!」


真桜さんはくるっとスカートを翻す。


「これから二時間はヒカと私が接客担当!ゆかっちは文化祭楽しんでね!」


「あ……うん、ありがとう!」


よし、俺も楽しもう。


そう思って歩き出しかけたところで、なぜか足は調理ブースの方へ向かっていた。


「あ……あの、大丈夫かな?私も手伝おうか?」


するとすぐに声が返ってくる。


「大丈夫よ!裕香さん!私たちちゃんと覚えてきたから!」


「前川さんのおかげで問題ないって!」


「俺たちは余裕だからさ!午前は楽しんできなよ!午後頼む!」



……ううぅ……!

いい人たちだ……!

刈谷さん、三島さん、大島くん……

ありがとう……!

みんなの名前……ちゃんと覚えたよ……!


シフトは二時間交代制

俺は午後の最後の担当だ。


それまではかなり時間がある。




ということで――

文化祭をぶらぶら回ることにした。



……とは言ったものの。


「誰と……回ろうかな……?」


白石さんは多分久我さんと一緒だろうし

神崎さんも忙しそうだし。



翔…と…一緒に…?



いやダメだ!!

変な噂になるに決まってる!!



……まぁいい

一人でも全然大丈夫だ。


一人でも全然大丈夫だぁ!!


そう自分に言い聞かせた、その時。


「裕香さん、よかったら一緒に回らない?」


「え?」


振り向いた瞬間、思わず声が裏返った。


「ええ!? 白石さん!?」


そこに立っていたのは、笑顔の白石さんだった

「あ、あの……久我さんとは?」


「ふふ、実はね。11時から一組のコスプレショーがあるの

一緒に見に行かない?」


コスプレショーつまり

翔たちのクラスだ。


「み……見ます!ありがとうございます!」




というわけで――

文化祭デート……じゃなかったな、もう…


憧れの白石さんと、友達として文化祭を回ることになった!

これは普通にラッキーだ、やったー!。


文化祭の校内は想像以上に賑やかだった。

フランクフルトやたこ焼きみたいな定番屋台もあれば、

チュロスやパイみたいな本格派スイーツもある。



教室の前には手作り看板

呼び込みの声

焼き物の匂い


文化祭って、本来こんなに楽しいのか。



「ん〜!おいしー!」


満面の笑みでチュロスを頬張る白石さん。


「し、白石さん……チュロス三本目……??」


「今日は大丈夫!次、たい焼き行こう!裕香さん!」


「ええ!? あ、はいぃ……」


……あれ?

白石さんって、こんなに食べる人だったのか?

普段はあんなに上品なのに。

浮かれてるとこうなるのかな……?


しかし、太らないか心配になるが、

うーむ……なるほど……

栄養は全部……そっちに……ほうほう



――って俺は何考えてるんだ!!



そんな邪念を挟みつつ、二人でベンチに腰掛けた。


「たい焼きおいしぃ……」


焼きたてのたい焼きはホクホクで、外はカリッとしている。

やっぱり祭りといったらこれだよな。


しかも…!!


「尻尾まであんこ入ってる……」


手が込んでる。最高だ。


「私はクリーム派かな!」


白石さんがにこにこしながら頬張る。

……あの

それ何個目ですか?

胃袋どうなってるんですか?


食べても太らない系女子って、本当に存在したんだな……

そんなことを思っていると。


「あ、白石さん。もう11時だ」


「え? あ!そうね!行きましょう!」


俺たちは慌てて体育館へ向かった。

体育館の中には、パイプ椅子がずらりと並んでいる。

簡易ステージの前には、すでに人だかりができていた。


そして――


「それでは次は、三年一組によるコスプレショーです!」


「おおおぉ……楽しみ……!!」


コスプレを生で見るのは、BGF以来だ。

果たしてどんなのが出てくるのか



その瞬間



スピーカーからアニメソングが流れ始める。


(こ……これは……!?)


思わず身を乗り出す。


「ライジングイレブンの曲!?ま、まさか!!」




ステージ袖から現れたのは――

ライジングイレブンの主人公校・日出中学校のユニフォーム姿の集団。


しかもただのコスプレじゃない!

一人がサッカーボールを持ち出し、

そのまま軽やかにリフティングを始める。


「うおおおお!!」 


観客席から歓声が上がる。



「おおお……レベル……高っ!」


思わず声が漏れた

ただ衣装を着ただけじゃない!


ちゃんと作品を再現してるだと!?

文化祭の出し物とは思えない完成度だった。


「アニメ見たなぁ……おお!あれ寄動だ!」


「ええ!裕香さん!それに業炎寺もいるわ!」


「え?白石さん、ライジングイレブン見てたの!?」


「え?……あ……えと、そ、そうなの……」


い、意外すぎる趣味だ

ライジングイレブンって基本男子向けアニメだよな……?

 

白石さんが見てたなんて、ちょっと衝撃だ。


「あのカップリング…推せる〜…」


「ん?白石さん?」


「へ!?あ!な、なんでもない!!それよりステージ見ましょう!」


「あ…あ!うん!…サッカーってことは飯田くんも出るのかな?」


「さぁ……あの人、ゲームとかアニメ見るイメージないけど……」


そんな話をしていると、曲調が変わった

壮大なオーケストラ風のBGM。


「おお!アメコミヒーローだ!あのキャラなら分かる!」



男子なら一度は見たことがあるであろうヒーローたちが登場する。


赤青スーツの蜘蛛のヒーロー

黒い蝙蝠のスーツのヒーロー

胸にSマークを掲げた赤マントのヒーロー

赤い金属装甲のハイテクロボットヒーロー



うおおお!!かっこええ!!

俺もアメコミ……見てみようかな……?


「す……すげぇ……かっこよ……」


「ふふ……まるで男子みたいな反応ね」


「え!? あ……えと……つい……」


慌てて取り繕う。


「あれ……もしかして飯田くん……!?」


「そ、そのようね!あ!その横は多分神崎さん!」



ステージの中央に立った二人。

飯田くんらしき人物は、立派な髭をつけて

四角いハンマーを天にかざす。


なんだあれ……めちゃくちゃ強そうだ……!

電気とかバチバチしてそうな…


そして神崎さん。

剣と盾を構え、赤と青を基調とした鎧風のスーツ

なのに下はミニスカートという絶妙なバランス。


かっこいいのに、どこか華やかだ。


「二人とも……似合ってるなぁ……何のコスプレか知らないけど……」


「知ってたらもっと面白いわね」


それでも会場の盛り上がりは十分だった。

その後も、


懐かしの魔法少女

最近流行りの鬼狩りアニメ

人気ゲームキャラ

レベルの高いコスプレが次々と登場し、


知っている人は歓声を上げ、

知らない人でも見惚れてしまう完成度だった。


だけど…

未だに翔と久我さんが出てこない

もうそろそろ最後のはずなのに。



「二人とも……いつ出るのかな?」


「きっともうすぐよ……」


俺と白石さんは身を乗り出して待つ。


そして――

曲が変わった。


「……へ?……へ?ええ!?」



イントロ一瞬で分かった。

ゲーム音楽なのにどこかスタイリッシュで、

英語ボーカルが混ざるあのテーマ曲

KAMENシリーズ5の戦闘曲!!!!


「ううううそ……うそ……!」


横を見ると、白石さんも完全に固まっていた。

ということは――

白石さんも知ってるのか!?このシリーズを!?


ステージ袖から姿を現したのは――


黒を基調にしたスーツ

赤い手袋。


目元だけを覆う派手な仮面

怪盗のようなシルエット。


KAMENシリーズ5の主人公――阿宮!!!


「「わああああああ!!!」」


気づいたら俺と白石さんは抱き合っていた。



久我さんだ!!いやもう本人だろこれ!!

細身の体格も、立ち姿も、雰囲気も調和してて

完全に阿宮そのものだった。


「奏くん……!!阿宮のコスするなんて!!」

「もう……どうにかなりそう……!!」


白石さんがここまでテンション上がってるの初めて見た。

でも分かる…!分かりすぎる!!


知ってる人には刺さりまくるやつだ。

あの静かな久我さんが、

こんなド派手な主人公コスをしているというギャップ。


すげぇ……久我さん……


そして――

次々と登場するキャラクターたち。


「坂上……! 鷹巻……! あわわわわ!!」


「す、すごいわね……! 本当に……!」


ステージ上では、KAMEN5の仲間たちが次々と現れていく。


他のメンバーも、細部まで作り込まれている。

衣装の質感

ポーズや立ち姿の雰囲気


どれを取ってもレベルが高い!


正直恐れ入った…なんてクオリティだ

しかし、俺に淡い期待がよぎってしまう



俺が一番好きなのは、シリーズ4なんだ…

まさか……な?

もうすぐ終わりだし…?


いや、でも

まだ翔が出てない。


つまり――可能性はある。



その時だった。



曲が変わる

ギターの効いたバンドサウンドのイントロ。


「おおお……!?」


次の瞬間…!!


背筋に電流が走った。


「!!!!?!!」


「裕香さん……これ……!」


間違いない!KAMEN4の戦闘曲だ。


何度も聞いた。

何千何万甲斐がも戦闘で流れた曲。


そして――

ステージ袖から現れた人物。


銀色の髪

知的な印象のキリッとしたメガネ。 


ステッチの入った制服

右手には日本刀


「……あわわわわ……あわわわ……」


言葉が出ない…!

理解が追いつかない…!!

そして次の瞬間、叫んでいた。



「し……翔……いや……鳴神だぁぁぁぁぉぁ!!」


まるでゲームの中からそのまま出てきたみたいだ。


「うわぁぉぁ!!すごすぎる!!」


今、俺は…!!

最高レベルのコスプレを見ている。


「裕香さん!凄い!ほんとに!!」


白石さんも完全にテンションが振り切れている。

翔……なんてコスプレしてくれたんだ??


久我さんもすごかったけど。

翔もまた完成されている!


もはやこれは――

衣装を着ているんじゃない。

キャラクターが降りてきている

そんなレベルだった。


俺のテンションも、完全に振り切れていた。


最高だった。

その後もレベルの高いコスプレが続き、

会場は最後まで盛り上がったまま――

コスプレショーは無事に終了した。


観客席から人がぞろぞろと出口へ向かう。

その流れに混ざりながら――


俺と白石さんは、

しばらく何も話せなかった。


「…………」


「…………」


当たり前だ

興奮を使い切った。


頭の中が真っ白だ

やがて、白石さんがぽつりと呟く。


「裕香さん……すごかったわね……」


「…………うん……」


それしか言えなかった。

だって今のは――

文化祭の出し物なんかじゃない。


完全に有料イベント級だった。

心臓の鼓動が、まだ少し速いままだった。


その時、背後から声が響いた。


「すみませーん! 伝え忘れてましたー!

これより撮影会を始めまーす! よかったら是非どうぞー!」


「「!?!?」」


さ……撮影会?

つまり――

鳴神になった翔と写真が撮れる……!?


こ、これは……!

いや、でも――流石に競争率が……!

それに翔に迷惑がかかるんじゃ……。


そんなことを考えていると――


ガシッ!


「へ……?」



振り向くと白石さん??

それも、見たことのないくらい真剣な顔で。


「行きましょう、裕香さん!」


「え……?」


「これは命に関わる問題よ」


「えっ??」


口調が違う。

いつもの清楚で穏やかな白石さんじゃない

どこか戦場に向かう兵士のような気迫だった。


し……白石さんって……

もしかして。

隠れオタクなのか……!?


いや、それより――

そうだな。

推し活は戦いだ。

行かなければ、やられるだけだ!



「……うん!」


俺と白石さんは同時に頷き、

そのまま体育館へ向かって駆け出した。



そして――

体育館の中に戻った瞬間。


「……うわぁ」


ズラァ――

長蛇の列、案の定だ。


しかも――

翔と久我さんの列だけが異常に長い!?



ちくしょう!!

元々のビジュ良組が強すぎる!!


「うへぇ……すごい……行列……」


「並びましょうそして……写真を撮るの」


「推しキャラであり、想い人でもあるから。……お互いにね」


白石さんはそう言うと、

迷いなく久我さんの列へ並んだ。


「お……お互いに……か……」


俺も胸を高鳴らせながら、

翔の列の最後尾へ並ぶ。



前の方から女子の声が聞こえてくる。


「キャー!かっこいい!メガネの神宮寺くんもいける!」


「それ何のキャラ?」


うううう……!

もう少し原作知っててくれぇ!!

めちゃくちゃ面白いゲームなんだぞ!!



そう心の中で叫びながら、

ひたすら順番を待った。


そして――



ついに。

俺の番が来た、翔と目が合う。




(ゆ……裕香……!?来てくれた……だと!?)

(いや……アイツの好きなキャラを選んだが……

まさか……本当に来るとは……)




もちろん分かっている

学校では基本、翔とは距離を置く。


だから――

俺は慎重に距離を保った。


「あ、あの……!!」


「それ……私の好きなキャラです!!

KAMEN4の鳴神ですよね!?」


「めちゃくちゃ似合ってますし……!

かっこいいです!!本当にかっこいいです!!」


テレビとかでよく見る喋り方

完全に推し活女子じゃないか俺。


「し……写真……お願いします!」


「……!? あ……うん。いいよ」


翔はいつも通りの落ち着いた声で答えた。



シャッター音が響く。



「ありがとうございました……!!」

「……やったぁ……鳴神……!」


思わず頬が緩む。

俺はルンルン気分のまま体育館を後にした。




外のベンチで、合流する。


白石さんもどこか放心したような表情だった。


「二人とも……あんなに拘ってたなんて……」

「奏くん、何も教えてくれなかったから……びっくりしちゃった」


「あはは……翔もかな。でも……すごいサプライズだった」


文化祭の空気

さっきまでの興奮

そして、写真の余韻


その全部が混ざって

気づけば俺たちは、

自然と恋バナみたいな話を始めていた。




一方その頃――

撮影会を終えた翔は、更衣室でコスプレ衣装を脱いでいた。


「…………」


ふと、手が止まる。

脳裏によぎるのは

さっきの裕香の顔だった。

あんな表情は、初めて見た。

目を輝かせて、少し頬を赤らめて、興奮を隠しきれない様子で


そして、あの言葉。


『めちゃくちゃ似合ってますし……!かっこいいです!!

本当にかっこいいです!!』


「かっこいい……あんな……笑顔で……裕香が……俺を……」



沈黙…そして


「――いいよっしゃあああ!!」


「拘った甲斐があったぞ!!

やってやったぞ俺!!」


まるで大会で優勝したかのような勢いだった。



「神宮寺くん……すごい嬉しそうだね……」


横で着替えていた久我が、少し呆れたように言う。


「当たり前だろ!ここまでどれだけ苦労したと思ってるんだ!」


いつものように強く喜んでいた。

文化祭…高校のもう一つの成長イベント

まだまだ終わっていない。

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