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第23話 人生初めての青春…なんか思ったより違う!リッチ! 前編

夏休み、中頃。


ダラダラとピアノをいじったり、ゲームしたり、健康の為に

軽く散歩したり 


そんな日常……


そしてついに来た………!!


この夏、最大のイベント。


海だ。


「海だ〜〜〜!!遊ぶぞぉぉぉ!!」


真桜さんが車の窓から飛び出しそうな勢いで叫ぶ。


「真桜、はしゃぎすぎよ。

ほら、翔くんくらい落ち着きなさい」


白石さんが呆れ顔で笑い、

翔は腕を組んで無駄にクールぶっている。


「全くだ。車の中でテンションMAXなのはお前だけだそ?」


「はは、真桜さん…すごいテンションだね…」


「海だよ!?テンション上げるしかないでしょ!!」


今日も神宮寺家の黒塗りの高級車で優雅に送迎。


中には、俺・翔・真桜さん・白石さん。


「兄ぃ〜、今日は日帰りなんだよね?」


「そうだ。いきなり泊まりはハードル高いだろ。

 ……次は考えてやる」

(ついでに、旅行プランも考えておくか…)


「裕香さん、忘れ物は大丈夫?日焼け止めは?飲み物は持った?」


「あ、うん……多分……たぶん大丈夫……!」


白石さん、完全にお姉ちゃんモード。

これはこれで悪くない…いや、かなり良い…ふふ…


そして今日は—


翔が予約したプライベートビーチ。

 ホテルは、なんと五つ星。


「プライベートビーチって……どんな場所なのかな…白石さん」


俺がぽそっと聞くと、


「ホテル専用のビーチのことよ。一般の人が入れないの。

 五つ星だとサービスも段違い…それを貸し切りってるって

楽しみね!」


「父さんの特権、こういう時に使わないと〜!」


「高校生がそんなこと言うな。

まぁ今日は俺達の奢りだし、裕香も白石も気にしなくていい。

思いっきり遊んでくれ」


「翔くん、いつもありがとうね。何かお礼がしたいんだけどなぁ」


「えっ!?奢り??…あ……私も……ありがとう」


「ええ〜?兄ぃ、私は?」


「お前は割り勘だ」


「なんでぇ!?」


車の中は、すでに夏休みのテンションで満ちていた。


「桐谷と剛は大丈夫なのか?」


「うん、二人は現地集合だよ〜、

なんか昨日もお泊まりしてたらしいし」


「へぇ、そりゃアツアツだな」


翔と真桜さんの、何気ない会話


高校生でもお泊りはするんだなぁ…

そりゃあ……色々……だよな……下着の話してたし…

桐谷さん達、もう大人の階段……うわぁ……

高校生でも3割がなんたら…


そんな下世話な妄想をしているうちに――


「着いたぞ、降りろ」


黒塗りの高級車が、ホテルのロータリーにゆっくり停まった。


「お、おぉ……」


五つ星ホテルの外観に、俺は思わず声が漏れた。

海外映画でしか見たことないような入口。

ガラス張りの天井、高そうな石畳、立ち並ぶスタッフ。


こんな所に女子高生4人+男子2人のパーティで来るって

どう考えても普通じゃない。


駐車場で車を降りると――


「おーい!こっち!」


手を振っていたのは、桐谷さんと飯田くんだった。


「うおー!相変わらず!すげぇ高級車!!」


「神宮寺んとこは別格だな」


桐谷さんは目を輝かせて高級車を見つめ、

飯田くんは、ぽけ〜としていた。


「へっへっへ〜、すごいでしょ!私んちの“普通の車”だぞ!」


「だから真桜、そういうのはやめとけ。はしたない」


黒塗りの車がホテルの正面玄関に入った瞬間、

スーツ姿のドアマンとベルスタッフが一斉に動き出す。


「ようこそお越しくださいました、神宮寺さま」

「荷物はこちらでお預かりいたします」


翔は軽く会釈しながら答える。


「いつもお世話になります。よろしくお願いします」


ロビーへ足を踏み入れると、天井の中心で巨大なシャンデリアが輝き、

大理石の床に海の青が反射してきらめいていた。


「ひゃ〜、来た来た!」

「ほら真桜、走るな行くぞ」


はしゃぐ真桜さんの袖をつまみながら、翔が呆れ気味に導く。


ほどなくして、品のある身のこなしのコンシェルジュが

優雅な微笑みで近づいてきた。


「神宮寺翔様。本日のプライベートビーチ貸切予約、確認しております。こちらへどうぞ、ご案内いたします」


ロビー奥には“Beach Guest Only”と書かれた専用デスクがあり、

スタッフは俺たちを見て軽くうなずく。


「こちらが本日のビーチアクセスキーでございます。

レストルーム・プライベートエリア・パラソルはすべてご自由に」



「なはは!よし剛、海行くぞー!」


「俺もさっさと泳ぎてぇな」


ホテル裏のデッキへ向かうと、

ゴルフ場で見かけるような電動カートが待機していた。


「ご乗車くださいませ」


カートが走り出すと、潮風がふわりと髪を撫で、

森と波の匂いが混ざった夏の空気が胸いっぱいに入ってくる。


海沿いの小道を過ぎ、ゲート前に到着すると、

スタッフがカードキーを確認して扉が開く。


「ここも随分リニューアルしたね」


「そうね、前より広くなってる」


そんな会話を白石さんたちは自然に交わしている。


「裕香さん、大丈夫……?」


白石さんが心配そうに覗き込む。


「…………………」


んんんんん??

なんでこんな別世界を当たり前みたいに過ごしてるんだみんな!?俺か?

俺がおかしいのか!?


最近の高校生って、みんなこんな遊びしてたのか!?

え、えええ???


「えっと……いや……その……色々と凄くて……」


すると白石さんが苦笑しながら肩をすくめる。


「まぁ、真桜や翔くんと本気で遊ぶと、だいたいいつもこんな感じだよ。今回は国内なだけ気軽かな」


「な〜……この前はイタリアだったしな。疲れたなー」


白石さんと桐谷さんは慣れた感じで話している。


金持ちって……凄い

そんな浅い感想しか出てこなかった。


何はともあれ――

プライベートビーチ……日本にもこんな優雅な場所があるなんて……。


白い砂浜とエメラルド色の海。

遠くではホテル専用のスタッフがパラソルを準備していて、

その横には巨大なプールと、海と地続きに見える露天温泉まである。


「そんじゃ、各自準備してまたここ集合な」


「はーい!行こ行こーみんな!」

真桜さんがテンション高く手を振る。


俺は自然と真桜さんのあとについていくことにした。


「す……すごい……」


思わず言葉が漏れた。

更衣室……というか、

これが高級のレストルームか。


白い間接照明、アロマの香り、

ふかふかのベンチ、パウダールーム。

シャワーブースは全部個室で、

もう施設が豪華すぎて、逆に何がなんだかわからなくなってくる。


「ここに個室あるから使っていいよ!」


「あとさ、ここのプールも温泉もめちゃ綺麗だから、あとでみんなで入ろ!」


「おー!海からの温泉か!それ絶対いいやつ!」


「そうね…!海と境目が繋がって見えるようになってるやつ」


「はは…またあとでね…」



そして俺たちは、それぞれ鍵付きの個室へ入り――

水着に着替えることにした。



個室に入り、扉を閉める。

鏡の前に立ち、ゆっくりと服を脱ぎ、下着も外し

白のショルダー水着へ着替える。


「……ふぅ」


まだ2回目の水着姿なのに、

思ったより慣れてきた自分に少し驚いた。


肩にかかる白いストラップ

腰のラインに沿う布地。

思えば男性なら触れない布部…

それも違和感が無くなりつつある


前野裕介の頃では絶対に想像もしなかった姿だ。


(……青春を過ごしたかったけど……本当にこれでいいのかな、俺)


不意に心が沈んだ。


前野裕介としての18年間は、

ほぼ孤独で、自分なんて居なくてもいいと思ってた。


それが今は――

友達がいて、誘ってくれる人がいて、

笑い合って、守ってくれる人がいて。


比べものにならないくらい…

幸せな時間を過ごしてしまっている。


(…俺なんかが、こんないい思いしてもいいのか……?)


胸の奥が少しギュッとする。


その時―


キャッ!キャッ!


ドアの外から、

着替えを終えた女子たちの楽しそうな声が聞こえてきた。


(……………)


「……よし」


深く息を吸い、鏡の中の自分を見つめる。


「変なこと考えず……楽しむぞ、俺」


青春を楽しむ為に…いざ扉を開ける…!


「あ!ゆかっち!白か〜!似合ってるじゃん!」


「……可愛い……よしよししたい……」


「でしょ〜?私が選んであげたんだよ!」


三方向から褒め声が降り注ぎ、目の前には水着姿の三人が立っていた。


……まず目に飛び込んできたのは、その圧巻の光景。


完璧ボディで大胆なピンクビキニの真桜さん。


すらっとスポーティーな桐谷さん。

水着は引き締まった紺、綺麗な腹筋と健康的な脚線が眩しい。


むっちり柔らかそうな白石さん。大人っぽい落ち着いたオレンジのビキニは、自然な色気と包容力を醸し出している。


「え……へ、へへへ……ありがと……」

(うわ、すげぇ……!やっぱり俺なんかとは全然レベルが違う。この三人の横に並ぶなんて……!)



そう卑屈になる一方で、体は正直だった。

下腹部の奥がくすぐられるような、変な快感がキュン……と


男子の思考として、彼女たちの魅力に反応し

女子の身体としての、肉体の反応する。


(ドキドキとムラムラ…複雑な感覚を備えてる……

相変わらずなんて、不思議な身体だな俺は)


でも…うん、いいなこれ

やっぱりもうちょっとだけ……

前川裕香の…この青春をちゃんと楽しむとしよう

そう自分に言い聞かせた。


集合場所。


翔と飯田はとっくに着替え終わり、

パラソルの下で待機していた。


「…………」

翔が落ち着かない。やたらソワソワ。


「なぁ翔、なんでそんな落ち着かねぇんだ?」



「!??…いや、その……久しぶりに大人数で遊ぶからな!

 色々トラブルとか……ほら、気を遣うだけだ!」


「お、おう……なんかありがとうな。頼りにしてるわ」


その時――


「海だぁぁぁ〜〜ッ!!!」

「おっしゃー!!いくぞぉ!!」


真桜と桐谷が視界に入った瞬間、

砂浜へ一直線にダッシュ。


一方その後ろでは――


「裕香さん、髪まとめてあげるね」


「え…あ、ありがと……」


白石が器用に裕香の髪を結っている。


「おーう、光、やっと来たな」

飯田が振り返る。


「翔、これで全員だよな?」


「……………………」


「おい、翔? 今度は何ぼーっとしてんだ」


翔は白石と裕香のツーショットを見つめて、

完全に思考停止していた。


(な、なんで……なんであいつら……距離近くない……?

いや、白石が悪いわけじゃねえけど…むしろ髪が整って魅了上がってるし…くそ…!先手を打たれた!)


「……翔? 白石と前川…?が気になるのか?」


飯田がポツリ。


「いや…違う、大丈夫だ俺は大丈夫」



「そうか」

(動揺してんな…やっぱり白石の方、気にしてんなコイツ……なるほどな)



手前では、

真桜と桐谷さんが全力ではしゃぎ――


後方には、

白石さんが世話を焼き、

裕香は照れ混じりに後ろをついていく。


そんな光景を見ながら、翔はひとり思い馳せていた。


(やっぱり……水着……いいな……今回は最初からラッシュガード無しか……最高かよ…前川裕香、よくぞここまで成長してくれた……企画してよかった…!!

500万くらいかかったが安いくらいだな…経費だけど)


(しかしまぁ……この2ヶ月ちょいで……本当に“女子”になったな……立ち方も歩き方も、仕草も、やけに自然だ……)


ボソッと感慨をこぼしたところに――


「おまたせ!!さぁ海エンジョイするぞぉー!!」


真桜さんのテンションMAXな掛け声が響く。


その合図で、

俺たちは五つ星ホテルのプライベートビーチを一斉に堪能しはじめた。


──まず、景色。


「……すげ……」


沖縄でもないのに、これだけ透き通った海。


エメラルドの波が砂をなでるたびにキラキラ反射して、

雑誌かテレビの世界みたいだった。


──次に、サービス。


スムージー、ジュース、スイーツは飲み放題。

まぁそれは分かる。


だが――


「無料マッサージの受付はこちらです」


「オイルエステもできますよ」


「……マッサージ……?オイル…なんたら……?無料……?」


真桜さんと桐谷さんと白石さんは

「やったー!」とテンション爆上がり。


──昼食は。


高級ホテルの鉄板シェフが焼くステーキ。


「ナ…ナイフの持ち方、えと…」


「大丈夫!ほら、こうゆっくりでいいからね」


白石さんが横で小声で教えてくれたおかげで、

なんとか形になった。


そして――


「……うまぁ……っ!」


人生で食べた肉で一番美味かった。

もう語彙力なんてどこかに消えた。


「……はぇ……すご……すごしゅぎ……」

テーブルに突っ伏したくなるレベルの衝撃。


まだ午前中なのに、

気持ちも胃袋も景色もサービスも、

全部が満たされすぎてクラクラする。


俺の“初めての夏”は、

まだまだこれからだ。


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