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第18話 俺は海で水着を着るためにプールへ行く準備をします。美人な友達と

「ついたー!」


「ついたなぁ……」


目の前に広がるのは、夏らしくカラフルに並んだ水着売り場。

メンズ・レディース問わず、壁一面にずらりとディスプレイされている。


「今年はどれを着ようかなぁ〜♪」


真桜さんはテンション高く、早速ラックを漁り始めた。


対して俺はというと――

「うぉ〜、すげぇ腹筋……」


つい、男性用マネキンの鍛えられた腹筋に目を奪われていた。


「ゆかっち〜!こっちだよ!」

「あ、はい!」


男女が入り混じるフロアは、なんとなく居心地が悪い。

自然と目線はメンズコーナーへ流れてしまう。

そもそも水着とかスポーツウェアとか

そんな買い物なんて、ろくにしてこなかったんだよなぁ……。


「ゆかっちはどんな水着がいいの?」


真桜さんの声で現実に引き戻される。

ずらりと並ぶレディースの水着。

形も色も、驚くほど多彩だ。


……いや、これってもう下着だろ!?

よくこんなの人前で着れるな……!

みんな普通に選んでるけど、恥ずかしくないのか?


「う、うーん……地味なやつなら……」


「卑屈だなぁ〜ゆかっち。もしかして、みんな漫画に出てくるみたいなセクシー水着着ると思ってた?笑」


「え?」


「最近のはね、もっと種類あるんだよ!」


そう言って真桜さんが取り出したのは――

オフショルダータイプの白いひらひら水着。

露出は少なめで、どこか清楚で可愛い。


「お、おお……!こんなのあるんだ!」


「でしょ〜?漫画やアニメで知識止まってちゃダメだぞ〜?」


そう言いながら、真桜さんはニヤリと笑い、俺の頬をツンツンしてきた。


更衣室のカーテンを閉めると、外の喧騒がすっと遠のいた。

区切られた小さな空間。

鏡の前に立つと、そこにはわずかに緊張した自分の顔が映っている。


「……よし、着替えるか」


静かに呟き、手にしていた新しい水着に腕を通す。


白のオフショルダー。

軽やかな生地が肌をふわりと撫で、まるで空気を纏うような感触。

胸元のフリルは柔らかく波打ち、腰まわりの薄布はほんのり透けている。


下着のように見えるのに、いやらしさは一切ない。

むしろ清楚で、上品でどこか儚げ。

“可愛い”という言葉が、自然と心に浮かんだ。

俺は思うがままに試着を始める。




「……水着というより、衣装みたいだな」


鏡の中には、水着を着た女の子が立っていた。

肩を出し、頬を赤らめながら、それでも少しだけ誇らしげに微笑んでいる。


「ちょっと……いいかも?」


思わず口から漏れたその言葉に、自分でも驚いた。

もし男の頃の俺がこの子を見たら確実に目で追ってただろう。

水着って……すごい。


シャッ。


意を決して、カーテンを開ける。

真桜さんが待っていた。


「着てみたけど……どうかな?」


真桜さんがにやっと口角を上げて言った。


「へへへ〜、いいよぉ……いい感じ! ゆかっち!」


「……あ、ありがと……」


恥ずかしい…やっぱりこういうのって慣れてないな

けれどその一言で、ほんの少しだけ…

自信が芽生えた気がした。


最近、真桜さんと二人きりで過ごす時間が増えた。

それがなんというか、むず痒い。

でも、不思議とワクワクしている自分もいた。


「それじゃ……私、これにしようか」


白のオフショルダー水着を手に取り、購入しようとしたそのとき。


「ん?」


「え?」


真桜さんが首をかしげる。

……ん?なんで?この水着、俺のために選んでくれたんじゃ……?


「せっかくだからさ〜……もう少し着てみよっ!」


そう言うやいなや、真桜さんはワゴンの中から次々と水着を取り出した。

花柄、レース、ワンピース、ビキニ……まさにカラフルな服の山。


「ひ、ひぇ……」


そうだ。忘れていた。

女子の服選びは、男子の感覚でいえば博物館巡りに等しい。



――――


そして数十分後。


「結局、最初の白のやつにしたか!」


「ははは……やっぱりこれが一番落ち着くかな」


「私は、赤のビキニも良かったと思うんだけどなぁ〜?」


「そ、それは……ちょっと……!」


何着も試着させられ、すっかり“着せ替え人形”になっていた俺は、

結局、最初に選んだ白のオフショルダーを購入することにした。


「それじゃ、次は私の番ね。ゆかっち、私の水着も見てもらっていい?」


「え? あ、いいよ!」


俺の前半戦が終わり今度は真桜さんのターン

正直、真桜さんの水着姿…

この前のスクール水着より、さらに破壊力があるんじゃないか?


いや、そうに違いない。


でも待て、水着=セクシーとは限らない!

俺だって清楚で可愛いタイプを身をもって証明したんだ。

……だから、真桜さんもきっと――


「おっけー!どうだ!」


カーテンが開く。

そこに現れたのは――


淡いピンクのビキニ。

グラビアアイドルとか、海辺で撮影してそうな“あのタイプ”だ。

上品なのに、どこか艶っぽい。

光沢のある布地が肌に沿い、健康的な小麦色の肌をいっそう引き立てている。


「ま、漫画みたいなセクシーな水着だ……!」


「え? 今回プライベートビーチでしょ? だから普通にこういうの着るよ?」


なるほど…確かに…


しかし改めて見ると

本当に綺麗だなぁ。

腰のライン、くびれ、視線を逸らしたくても逸らせない。


(わぁ……この人、俺が一緒にプールや海を行くのか……?)


気のせいか、なにか神々しいオーラーも見えてしまう。

その美しさに見惚れてしまった…


「へ、へへへ……」


気づけば、変な笑いが漏れていた。


「おぉ〜……ゆかっち?なんか変な笑い方になってるよ〜?」


「へ…へ!?あ、いや!これは…!」


「ふふーん?さては、私の身体に慣れてきたんだ?堪能できる余裕も出てきたかな?」


「う…!別にそんなことは…!」


いや、正直に言えば、慣れてきていた。

だって、最初に見せたのは、全裸だった。

その次に見せたのは下着。

次はスクール水着。

なんで逆にレベルが下がったるだよ。


でも、そのおかげで、俺は目の前の“女神の彫刻”とも呼べそうな姿を、じっくり、しかもためらいながら眺めることができた。

いやぁ…これは役得かなぁ…


「うーむ、私的には

『わ!真桜さん!?ちょ、ちょっと…!』

っていう反応を期待してたんだけどなぁ」


「いやいやいや! ごめんなさい!」


「ははは!なんで謝ってるの〜?」


試着室を出たあと、二人は購入する水着をレジに持っていった。


お会計を済ませ、袋を手にした帰り道ふと、俺はつぶやいてしまった。


「……ビキニ、真桜さん……似合ってたなぁ。

なんというか、性的な意味もあるけど……女性としての完成度が高いというか……」


「ふふっ、ありがと。でもさ、ゆかっちも着ればよかったのに。絶対似合ってたよ」


「い、いやいや!それはまだ……その勇気はありません!」


顔を赤くして否定する俺を見て、真桜さんはおかしそうに笑った。


「じゃあ次は〜、明日のプールに必要なもの買おっか!

 ラッシュガードとか、サンダルとか!」


「ラッシュ……ガード?」


「うん。濡れても大丈夫な羽織りのこと!

これがないとね、怖〜いナンパに巻き込まれちゃうんだよ?」


「こ、怖〜いナンパ……?」


「ぶっちゃけ、着てても声かけてくるヤツはいるけどね。

 でもまぁ、基本持ってたほうがいいの!」


ナンパ……そんなのまだ存在してたのか。

“姉ちゃん、お茶しない?”とか、そんな感じのやつのイメージ。


(まぁ、真桜さんみたいな人なら確かに大変だろうな……)


そう思いながら、俺は隣を歩く真桜さんの横顔をちらりと見た。


「変な人に声かけられないようにしようね、ゆかっち!」


「まるで小学生みたいな言い方だね…」


(ん〜でもさ、私はともかく、ゆかっちがナンパに巻き込まれたら守りきれるかなぁ?うーん……あっ!そうだ!)


そう言って何かを思いついたような笑顔を見せる真桜さん。

俺はそのまま深く考えず、彼女と談笑しながら帰路についた。


──そしてその夜。


神宮寺家。


「ふぅ……取り合えず☆5ホテルの予約完了。レンタルビーチも確保……。

クルーザーは無理か。くそっ、船舶免許、取っておくべきだったな……」


ノートPCを閉じる翔。

真剣な眼差しは、まるで企業の経営者か何かのようだった。


「ただいま〜。兄ぃ、まだ起きてたんだ?」


「おう、夏休みの旅行準備だ。

 ……で、真桜。お前はどこ行ってた?」


「ありがとねー、兄ぃ! 私はね、ゆかっちと水着を買いに行ってたの!」


ピクッ……。


「……ほ、ほぅ。仲良しだな……」

(コイツ……俺を差し置いて……どこまで裕香と距離を近づける気だ……!?)


「それでね! ゆかっちの水着、めっちゃ可愛いんだよ! 白のオフショルダーで!」


ギリギリギリ……ッ!


「あ、ああ! いいんじゃないか! 露出控えめで! 健全だ!実に健全だな!!」

(何もかも先にやりやがってえぇぇぇ……ッ!!!)


「でね〜、明日、ゆかっちとプール行くの!」


「…………え!?な、なんだって!?」

(な……なんだとォ!?!?!何突然企画してるんだよ!!

お前の気まぐれ企画に裕香を巻き込むな!!)


「まぁまぁ、あんまり羽目を外すなよ」

(ふざけやがって…もう二度と研究手伝ってやらん……!!)


「うん!でね〜、可愛い女子二人だけじゃちょっと怖いから……兄ぃも来る?」


「スケジュールキャンセルするわ。何時出発だ?」

(神よ……俺はこの妹を一生崇める……!!)


──こうして、

夏休みの海を前に、神宮寺家の姉弟と前川裕香、

一足早く水着慣らしのプールデート(?)が幕を開けるのであった。



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