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第16話 今までとは違った形で青春を堪能する俺

というわけで、やってきましたプール日和。

残念ながら、見事な晴天。

クラスの女子たちはみんなテンションが高い。


「あ〜……緊張するなぁ……」


女子だけの授業とはいえ、やっぱり落ち着かない。

プールへ向かう2組の女子たち。

その道すがらも会話が弾む。


「楽しみー!」

「最近ちょっと太ったから、水着着たくないなぁ〜」

「でも暑いから丁度いいよね!」


みんなそれぞれ自由で、眩しいくらいに明るい。


「よっしゃー!!プールだー!!」


桐谷さんは相変わらず一番元気だ。


「ここのプール、なんでこんな奥にあるのかしら……歩くの面倒くさいわね」


「あわわ…ソウデスネ…」


と、文句を言いつつも足取りは軽い白石さん。

そして俺はと言えば、完全に挙動不審だった。


さて……問題の更衣室。

扉の向こうから、もう女子の賑やかな声が響いてくる。

ゆっくり扉を開けると――


そこには、ラップタオルで身体を覆っている子

平然とスク水姿で話している子

普通に下着姿の子

まさに混沌とした女子空間だった。


(う、うひゃー……す、すごい光景……!)


俺の中でいろんな感情が混ざり合う。

緊張、興奮、罪悪感――。

せめてもの対策として、

極力みんなの方を見ず、視線を泳がせながらコソコソと着替える。


「ゆかっちは相変わらず照れ屋だなぁ」


「光、人にはそれぞれの距離感があるのよ」


「ヒカは逆にオープンすぎ!」


「なはは!細かいことは気にすんな!」


桐谷さんはなんと周りの目とか気にせずスッポンポンで

着替えていたのだ…いや小学生じゃあるまいし…

ワイルドだなぁ。


……うう。しかし、やっぱり変な距離感だ。

俺も、あんなふうに堂々とできればいいんだけどな。


それでも、昨日真桜さんに練習してもらったおかげで、

なんとか着替えを終えることができた。


胸の奥がドクドク鳴る。

これが女子としてのプール初体験――。

俺の夏が、また一つ踏み出そうとしていた。


体育の先生の号令で、着替え終えた女子たちがぞろぞろとプールサイドに集まる。

キラキラと陽光が水面に反射して、眩しいくらいに輝いていた。


「着替え終わったら集合〜!」


その声に従い、みんながワイワイと話しながら体育座りで並ぶ。


――いやぁ……壮観だ。


年ごろの女子たちが、ずらりとスクール水着姿で並んでいる。

健康的な肌、髪をまとめる仕草、笑いながら友達と肩を寄せる姿。

どれも眩しくて、まるで青春のワンシーンを切り取ったみたいだ。


(……この中に、俺も入っているのか)



――どうやら俺の夏、本番が始まったようだ。


「〜でーますから……」


先生の声が、まるで遠くの世界の音みたいにぼやけていた。

さっきから胸の奥がざわついて、変な妄想まで浮かんできてしまう――。


(う…なんかお腹が…変な感じ)


ピタリと肌に密着するスクール水着。

お腹のあたりがきゅんっ!

としたくすぐったい快感がじんわり広がる。


次第に今度は股部がじわじわと熱を帯び

胸はより張ってくる…ような気がしてきた。


(これ…俺が夜にたまにする時に近い感覚…!)


落ち着け、落ち着け俺……こんな所で発情するな…変態か!

熱気は強くなり、ムラムラが止まらない…まずい…


そんなとき、横から小さな声がした。


「ゆかっち……ゆかっち?」


「……へ?」


「顔、赤いよ……大丈夫?」


「あっ……」


うわっ、やばい。

変なこと考えてたの、バレた!?

いや、まさか……顔に出てた!?終わった……!


と、思ったその瞬間――。


「先生〜!みんな暑そうなので、さっさとシャワー浴びましょう!」


真桜さんが、まるでタイミングを見計らったように声を上げた。


「神宮寺さん……まったく。まぁ、そうですね。最初にさっと流してきましょうか」


先生の合図で、みんながぞろぞろとシャワー室へ。

……助かった。マジで助かった。


「ふふっ、ゆかっち。ドキドキしちゃったか笑」


「ちょっと…色々と想像してしまって…」


「素直だね!」


また救われた。

あのままだったら…俺はどうなってたことやら。


シャワーに入ると、冷たい水が一斉に降り注いだ。


「きゃー!」「つめたーい!」


響き渡る明るい声。

その中で俺も、冷たい水を浴びる。


冷たいっ!!

けど、これくらいでいい。

今の俺の煩悩まみれの頭には、ちょうどいい冷却だ。


(よし……リセットだ。落ち着け、落ち着け俺……)


冷たい水が肌を打つ音が、ようやく頭の中の雑音を静めてくれた。


おかげで頭も冷え、すっかり冷静になった。

もう大丈夫そう思いながら再び整列する。


「皆さん、入水しましょう」


先生の号令で、プールサイドのはしごから順番に一人、また一人と入っていく。


そして、俺の番。


「あぁ…気持ちいいな…」


胸の奥がじんわり温かくなる。

さっきまでの妄想もどこかへ消え、

いまはただ、真っ青な水と夏の光に包まれている。


(こういうのが青春ってやつなのかもな)


浮かぶような気持ちでそう思った。


「それじゃあ、二人一組でバタ足の練習をしましょう!」


うわ……出た。陰キャ殺しの地獄のヤツ…!!

体育は翔は飯田くんって人と組んで俺は余りがちだった

クソ…!トラウマが蘇ってきた…!!


(頼む、真桜さん……一緒に……!)


「ヒカ!一緒に泳ご!」


「おー!真桜!いいぞ!」


……終わった。

俺の希望の星が、桐谷さんに連れ去られていった。


心の中で静かに崩れ落ちそうになっていると――。


「裕香さん……私とどうかな?」


「えっ……いいの?」


「うん。話しやすい人と組んだ方がいいし……裕香さん、他の人とだと気まずいかなって思って」


「……ありがとう!」


ああ、なんて優しい人なんだ……。

白石さん、あなたは天使ですか。

いや、もう女神だ。こんな俺に救いの手を差し伸べてくれるなんて……!


(この人と結婚したい……!)

(日本は早く同性婚を認めてくれ……!!)


「それでは、手をつないで片側がバタ足してくださいね〜」


先生の声に従い、俺たちはプールの端で向かい合った。

最初は白石さんから。

彼女の両手を握り、ゆっくり支える。


ジャバッ、ジャバッ。


水しぶきがきれいな弧を描く。

軽やかに動く足先、無駄のないフォーム。

その姿はまるで人魚みたいだった。


「上手いなぁ……そもそもセンスが高いのかな」


「そんなに対したことじゃないよ、子どもの頃から泳ぐのが好きだったからかな」


そして、交代の番。


「よし……やるぞ!」


バシャッ! バシャシャッ!!


……うん、溺れてるみたいだな、完全に。

自分でも情けないほど下手だった。


「はぁ……はぁ……あんまり進んでない……」


「ふふっ、裕香さん、力任せになってるよ。

もう少し肩の力を抜いて、足で水を切る感じでやってみて」


「や、やってみる!」


何度か教えてもらいながら、言われた通りに意識してみる。

白石さんがそっと俺の腕を支えながら、目線でタイミングを合わせてくれる。


ジャバッ、ジャバジャバッ。


「おーっ!だいぶ上手くなったね!」


「や、やったー!!」


いつの間にかちゃんと前に進めてた。

白石さんが笑顔で拍手してくれて、胸がいっぱいになる。


(ああ……こんなに優しく教えてくれるなんて……)

(ありがとう、白石さん……いや、ありがとう神宮寺製薬……!万歳!!)

水泳の練習も無事に終わり、残りの時間は――自由時間。

つまり、プール遊びの時間だ。


キャッキャと水を掛け合い、はしゃぎ回る女子たち。

その光景を、俺はプールの隅でぼんやり眺めていた。


「……冷静に見てみると、みんな本当に楽しそうだな」


当初はムフフな目線を向けてたけどなんというか…

そんな気持ちはどこかへ消えてただ純粋に

この空間に入りたいと思うようになっていた。


(俺も……もう少し、ちゃんと馴染みたいな)


そんなことを考えていた矢先――


「ゆかっちー!!こっちきなよー!!」


「一緒に遊ぼ!レイも!」


元気いっぱいな真桜さんと桐谷さんが、手を振りながら呼んでくれた。


「あ、うん!今行く!」


二人の方へ向かおうとした、その瞬間。


ズルッ!!


「うわっ――!!?」


バシャァァン!!


冷たい水が顔にかかる。

視界が一気にぼやけ、どこが上かも分からなくなる。


ゴボゴボッ……!


「ごぼぼっ!!お、溺れる……!!」


「あー!ゆかっちが滑って溺れた!!」

「ちょっと大変!」


すぐに誰かが水中へ潜る音がした。


ザバァッ!!


そして、俺の身体をしっかりと掴む強い腕の感触――。


「ぷはっ!! はぁ……!!」


水を吐きながら必死に呼吸を取り戻す俺の耳に、心配そうな声が飛び込んできた。


「裕香さん!!大丈夫!?」


その声を聞いて、視界がはっきりする。

間近にあったのは――濡れた髪を頬にはりつけ、息を切らしながらも必死に支えてくれている白石さんの顔だった。


「……え、し、白石さん!?」


腕の中に完全に収まっていた。

彼女は俺を離さないように、しっかりと胸のあたりで抱きしめている。

肩も、腰も、脚も――水中でぴったり密着していた。

濡れた肌とスクール水着越しに伝わる柔らかい胸やお腹感触に、頭の中が一瞬真っ白になる。


「……………」プシュー


「よかった…!裕香さん小柄だから深かったのかな?」


「あ、あの……だ、大丈夫……ありがとう……助かった…」


「ほんとによかったぁ……もう、びっくりさせないでよ……!」


白石さんは胸に顔を埋めるようにして、ほっとしたように笑った。むにょんっと確かに彼女の大きくて素敵な胸が顔を覆う…

心配してくれてるのに下心を感じて申し訳ないが


(あー…やばい…せっかく煩悩を消してたのに…なんかもうもう…死んでもいいや…幸せ……)


こうして俺は人生で

いちばん危険で、そしていちばん幸せな溺れ方をしていた。




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