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書記の推理


 5


 生徒会室の電気を点けると、千歳は室内を見回した。やはり鍵を使わず外から侵入できるような出入り口は見当たらない。


 窓の外は放課後になってもまだ明るく、カーテン越しでも室内を陽が照らしていた。


 壁に掛けられたカレンダーを見ると、まだ4月のままになっていた。今日から5月だ。千歳は左手で端を押さえ、右手でカレンダーを丁寧にめくった。


「鍵を使わず」千歳は生徒会室の出入り口から、カレンダーへ視線を移した。「破いた」


 目を瞑り、後頭部を掻いた。さっぱり分からない。


「苦戦してるみたいだな」山吹が生徒会室へ入ってきた。


 千歳は振り向いて彼を見た「何のこと?」


「日誌の頁が破られた件だよ。先月のカレンダー持ちながらボーっと立ってるの見たら、誰だってそう思う。考え込んでたんだろ?」


 千歳は手に持っていたカレンダーを見て慌てて丸めると、ゴミ箱へ捨てた。


 山吹はそんな様子を見て、頬を緩めながら「どこまで分かったんだ」と訊いてきた。


「さっぱり」千歳はかぶりを振った。


「それじゃ、どのように侵入して頁を破いたのかではなくて、頁を破いた動機について考えてみるっていうのはどうだ?視点を変えてみるってやつだ」


「動機……」彼女は手を口に当てた。


 あれから俺もいろいろ考えてみたんだ、といった山吹は棚から去年の生徒会日誌を取り出すと、机の上で11月30日の頁を開いた。


「何で犯人は、12月から2月の頁を破いた?それにこの文」山吹がある頁に指さした。「いつ、月原くんに渡されたのか?」


 この2つの謎を解けば犯人が絞れてくるはずだ、と山吹は鋭い指摘をした。


「月原くんって……」千歳の声が少し低くなった。


「心当たりがあるのか?」


「うん……まぁ」


 千歳は頭の中にある記憶が蘇らせた。書かれた時期から絶対にあの事件であることは間違いない。だが、芽生が犯人で決着がついたはずだ。


「月原に何かあったのか?」


 千歳は去年の11月に起きたことの詳細を話した。話し終えた頃、あることに気づいた。


「えっ、待って」千歳は日誌に書いてある文を見た。「何で去年の生徒会の人たちはこの件を知ってるの?」


「今更か」


「だって、ずっと鍵を使わないで生徒会室に入る方法を考えてたんだもん」千歳は頬を膨らませた。


「だから視点を変える必要があるって言ったんだ。いくつか質問があるが、いいか?」


「何?」


「月原の机に置かれてたノートってのは、市販のものか?」


「うん」千歳は頷いた。「普通に文房具屋さんで売ってるやつ」


「そうか」山吹は腕を組みながら唸った。


「何か気になることあった?」


「いや、仮にだが、蔭平がノートを置いた後、他の誰かが別のノートにすり替えたっていうことは考えられないか?どこにでも売っているならできるだろう?」


「うーん、確かに考えられるけど……」千歳は顎に手を当てた。


「その社会の授業って何時間目だった?」


「……6時間目だけど」千歳は上目使いで答えた。


「ノートを置けるタイミングは、5時間目と6時間目の間の10分間か……」山吹はいった。「これで日誌に書かれた文の意味が分かったな」


 2人は、机の上に置いてある日誌に目を落とした。


『いつ、月原くんに渡されたのか?』


「やっぱり去年の生徒会は、この件について調べていんだ」


「じゃあ、12月から2月に書かれていたのは、掴んだ証拠とか、調査内容ってこと?」千歳は山吹に視線を向けながら訊いた。


「だろうな。日誌には、犯人にとって不都合な情報が書かれていた。それを知った犯人が次にとる行動はなんだと思う?」


「隠滅する」千歳は閃いたようにいった。「だから頁を破いた」


 山吹はそうだ、といって頷いた。「去年起きた事件の犯人を突き止めれば、日誌の頁を破いた犯人も分かるってことだ。鍵を使わないで生徒会室に入ったトリックも、そいつから訊き出せばいい」


「そうだね」千歳は口角を上げた。

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