黎明の策
こんにちは
書道家、そして歌手として活動している太幽と申します。
僕が皆さんに贈るこの物語は、単なるフィクションではありません。それは、僕が長年抱き続けてきた「問い」への、一つの「答え」です。
幼い頃、ウルトラマンなどの影響で空や宇宙を見上げるのが好きだった僕は、やがて「ブラックホールには実は『地面』がある」という、これまでの常識を覆すような着想を得ました。それは、ブラックホールが全ての物理法則を歪めるものと知り、膨大な情報を集めて辿り着いた、僕なりの真理です。そして、「ブラックホールの重力は無限大に対して、限界があるから宇宙空間で安定する」という哲学が生まれました。
この「黎明の策」は、僕なりの宇宙的な哲学を、僕らが生きるこの日本社会に適用したらどうなるか、という壮大な問いに挑んだ社会派フィクションです。長年くすぶり続ける経済問題、閉塞感に満ちた社会を、どうすれば立て直せるのか?マイナンバー制度の真価、給付と減税の緻密な連携、そして段階的な税制改革と、その先にある国民一人ひとりへの公平な還元――これらは、僕が「小説すら読んだ事がないにも関わらず」創作活動に踏み切った、類稀なる視点から導き出した具体的かつ緻密なプランです。
この物語が、読者の皆様に「この国は、必ず立て直せる」という希望と覚悟を感じていただければ幸いです。
黎明の策
・序章:筆と歌と、凍てつく夜空
帯広の冬は、星空が特に美しい。シンとした冷たい空気の中、無限に広がる漆黒のキャンバスに、無数の星々が凍てつくような輝きを放つ。
書道家として、歌手として、太幽はそんな夜空を何よりも愛していた。筆を持つ指先から、声帯から、生まれる「間」と「響き」。それは、混沌とした世界に秩序をもたらす、彼なりの祈りだった。
しかし、その夜空の美しさとは裏腹に、日本の経済は長く「低空飛行」を続けていた。
若者には希望が見えず、高齢者は不安を抱え、格差は広がるばかり。政治家は口を開けば理想を語るが、現実は変わらない。
太幽は、自身の芸術を通して人々の心に響くことを願ったが、根本的な解決には至らないもどかしさを感じていた。
「この国は、どうすれば立て直せるのだろうか?」
ある晩、墨を磨りながら、彼はふと呟いた。その時、テレビのニュースで映し出された、無機質な数字の羅列――マイナンバー(個人番号)。
多くの国民が不安や不信を抱くその番号が、太幽の頭の中で、全く別の意味を帯び始めた。太幽は「無限大」という言葉を「単位」と捉え、ブラックホールに「物理の理を覆す存在にも地面がある」と考える男だ。
そんな彼にとって、マイナンバーもまた、国民一人ひとりの「経済の器」を測る、新たな「単位」に見えたのだ。
・第一章:二刀の剣、三ヶ月の奇策
太幽の提唱した政策は、あまりにもシンプルで、だからこそ常識外れだと批判された。
「給付金と減税を同時に行う?しかも3ヶ月限定で?そんな無茶苦茶な!」
政治家たちは嘲笑し、経済学者たちは眉をひそめた。だが、太幽は揺るがなかった。彼の理論は、「足したら引く」「掛けたら割る」という算数の基本、そして宇宙の法則「限界があるから安定する」という哲学に基づいていた。
複雑にしすぎた日本の経済は、一度「限界」を認識し、その中で安定を見出すべきだと。
「この国の問題は、複雑にしすぎたことです。本来、税とは、国民から集めたお金を公平に再分配するためのもの。しかし、いつの間にか目的を見失い、複雑な制度が国民を疲弊させている」
彼は、政府が持つマイナンバー制度の真価に目をつけた。
「マイナンバー制度は、せっかく作られたのに十分に活かされていません。どれだけ膨大なお金をこれに費やしたことか。しかし、その膨大な投資を無駄にせず、今こそ真に国民のために活用する時です」
太幽はこう提言した。
「マイナンバーは、国民一人ひとりの『経済の器』を正確に把握するための唯一のインフラです。これを基盤に、まず全ての国民に対し、定額給付金を3ヶ月限定で支給を開始します。これはマイナンバーによる申請限定とします。」
「このマイナンバー限定の給付には、反対論が多発するでしょう。しかし、マイナンバーを作るくらいなら給付は要らない、と天秤にかけるような人は、藁にもすがる思いで給付を望む極度の生活貧困者に比べたらまだ余裕が感じられます。どうにもならない人はマイナンバーを活用するのです。税金のばら撒きを防ぐためにも、本当に困っている人に最小限の手間で確実に届けることが重要です」
同時に、もう一つの剣を抜いた。
「そしてこれと同時に、消費税を3%減税します。 この減税分の1.5%は社会保障に、残りの1.5%は賃上げに備えた企業支援に充てることを明確にします。」
太幽は、消費税の持つ隠れた利点も強調した。
「この消費税という財源は、外国人からも徴収できる、唯一無二の素晴らしい財源となりうるのです」と。
給付金は、国民の懐を温め、減税は消費者の購買意欲と企業の売上を直接刺激する。まるで血液を流すポンプと、血管を拡張する薬を同時に投与するようなものだ。
明確な使途は、国民の税への不信感を払拭する狙いがあった。彼の言葉は、まるで書道の筆運びのように力強く、歌声のように人々の心に染み渡った。
・第二章:反発と光、そして微細な変化
しかし、当然ながら反発は大きかった。既存の税制で恩恵を受けていた既得権益層、そして変化を恐れる保守的な政治家たち。彼らは太幽の政策を「素人の夢物語」「バラマキ」「社会主義への逆戻り」と罵った。
「国民の個人情報が流出する!」「国の管理が強まる!」といった不安を煽る声も上がった。
太幽は、かつてAIとの対話で「長年の研究者が素人に負けてちゃダメよ」と喝を入れたことを思い出す。まさに今、彼自身が「素人」として、長年の既成概念に囚われた「専門家」たちに挑む立場だった。
だが、彼は怯まなかった。彼は全国を回り、自身の書と歌、そして言葉で、人々に政策の真意を訴え続けた。
子供たちが「なぜ空は青いの?」と問うように、彼は大人たちに「なぜこの国は変われないの?」と問いかけた。
「私たちが見ている『常識』は、誰かの都合の良い『視点』に過ぎません。ブラックホールの内側で物理法則が適応されるように、この社会にも、視点を変えれば新しい秩序が生まれるのです」
彼の真っ直ぐな言葉は、次第に国民の心を掴んでいった。特に、長年の停滞に苦しんでいた若者世代や、年金だけでは生活が苦しいと感じていた高齢者層からの支持は絶大だった。彼らは、太幽の政策に「希望」を見出したのだ。
・第三章:法案可決、そして3ヶ月後の変貌
国民の声は、ついに政治を動かした。太幽の政策は、与野党の垣根を越えた若手議員たちの共感を得て、国会で審議されることになった。連日、激しい論戦が繰り広げられた。太幽自身も参考人として招かれ、論理と情熱を込めて証言した。
「この政策は、国民の『足元』を固め、同時に『未来』への種を蒔くものです。宇宙が無限に見えても、ブラックホールの力でさえも限界があるからこそ宇宙空間に定着し安定する。
この国も、無限の成長を求めるのではなく、確かな『限界』を見つめ、そこから安定と繁栄を築き直すのです」
最終的に、国民の圧倒的な支持を背景に、法案はギリギリのところで可決された。太く、重い、歴史の扉が開かれた瞬間だった。
政策はすぐに実行に移された。3ヶ月限定の定額給付金は、マイナンバーによる迅速な申請と支給を実現し、貧困層の生活を直接的に支え、消費に直結した。同時に、3%の消費税減税は、人々の購買意欲を劇的に回復させ、街には活気が戻り始めた。
この施策により、消費税は実質ゼロとなり、経済活動の初期段階における障壁を限りなく取り除いた。大手企業も中小企業も、売上の増加に活気づき、特に賃上げに備えた企業支援策は、経営者たちの背中を押し、労働者への還元を促し始めた。
そして、3ヶ月後。
給付金は予定通り廃止された。しかし、経済は冷え込むことなく、むしろ熱を帯びていた。
多くの企業が実際に賃上げを実施し始め、それに伴い人々の購買力は維持された。経済指標は明確な回復の兆しを示し始め、GDP成長率はプラスに転じ、失業率は徐々に改善。
太幽の政策は、絵空事ではないことを証明し始めたのだ。
第四章:成長と増税、そして公平な再構築
経済が確実な回復を見せた4ヶ月目、太幽は次なるステップへと踏み出した。
「4ヶ月目からは給付金は廃止し、企業には賃上げを継続していただきます。そして、消費税を5%に引き上げます。 この5%は、社会保障に3%、そして残りの2%は、賃上げ企業への地盤支援に充てることで、経済の回復をさらに後押しします。」
この発言に、再び批判の声が上がった。「せっかく回復した経済を冷やすつもりか」「減税したばかりなのに増税とは矛盾している」と。
しかし、太幽は冷静だった。
「増税は、経済を冷やすためではありません。回復した経済で得られた富を、次なる社会保障や未来への投資に回すためです。惑星の質量が増えれば重力が増すように、経済が成長すれば、その支えもまた強固にしなければならない」
彼は、国民への説明を徹底した。増税の基準となる経済指標(GDP成長率や雇用状況など)を明確にし、その財源が何に、どのように使われるのかを透明化した。特に、増税分が社会保障(医療、介護、子育て支援)の充実に直結することを強調し、国民全体の安心感へと繋がることを訴えた。
さらに経済が活性化し、企業の賃上げが追いついてきた段階で、太幽はさらなる消費税率の引き上げを提言した。
「経済が安定的に成長し、賃上げが社会全体に浸透したならば、消費税を8%に引き上げます。 この8%は、社会保障に5%、そして残りの3%は農家への重点的な支援に充てます。」
食料自給率の向上と地域経済の活性化を目指すこの政策は、地方から大きな支持を得た。太幽の故郷である帯広の農家からも、期待の声が上がった。この段階的な増税策は、経済の「過熱」を防ぎつつ、持続的な成長を促す「調整弁」として機能した。国の財政は健全化し始め、国際社会からも日本の経済政策は注目されるようになった。
・第五章:マイナンバーが紡ぐ、きめ細やかな未来
数年後、日本経済は完全に安定軌道に乗った。経済は潤い、社会保障も充実。そして、太幽が構想していた最終段階の政策が実行に移された。
「経済が十分に潤ったならば、消費税を最終的に10%に引き上げます。 この10%は、全て社会保障に充てることで、国民が老後や病気の不安から解放され、安心して暮らせる社会の基盤を磐石なものとします。」
しかし、太幽の構想はそれで終わりではなかった。
「そして、ゆくゆくは消費税を15%まで引き上げます。 しかし、これは単なる増税ではありません。この消費税率引き上げの最大の目的は、他の所得税や住民税などの税負担を軽減することにあります。 そして、マイナンバーを最大限に活用し、緻密に計算された減税策を同時に開始します。」
この「緻密な減税策」こそが、太幽の政策の真骨頂だった。マイナンバーのデータに基づき、所得、家族構成、医療費、教育費、地域貢献度、環境配慮型消費など、国民一人ひとりの生活状況をリアルタイムで把握し、過払いとなった消費税は自動的にポイントとして還元される仕組みが導入されたのだ。
「このシステムなら、高所得者が何らかのトラブルで支払いが多くて一時的に生活が苦しくなるような方々も、マイナンバーを通じて手厚く保護できます。 一律の非課税世帯に限定するのではなく、真に支援が必要な層に効率よく税金を還元できるのです。また、例えば非課税世帯でも裕福な高齢者に一律で給付が行くような無駄を徹底的に排除することができます。」
これにより、税の徴収は効率化され、無駄な手続きは削減。国民は、自分たちの税金が、最も必要とされる場所に、最も効率的な形で使われていることを実感できるようになった。
そして、政府の介入は最小限に抑えられ、人々はより自由に、しかし責任を持って経済活動を行うことができた。
・終章:新しい地平線
太幽は、もはや政治の最前線にはいなかった。彼は再び帯広の地で、書を書き、歌を歌う日々を送っていた。彼の筆先から生まれる「一」の線は、かつて分断されていたこの国の「統一」を象徴し、彼の歌声は、新しい日本の「希望」を未来へと響かせた。
日本は、かつての停滞から完全に立ち直り、世界に誇れる「持続可能で公平な経済モデル」を確立していた。それは、GDPの数値だけでなく、国民一人ひとりの幸福度が向上していることで証明されていた。
人々は、自分たちの生活が「限界」の中で最大限に豊かになっていることを実感し、社会全体に安心感が満ちていた。
夜空は、相変わらず美しかった。しかし、その輝きは、以前の「凍てつくような」ものではなく、どこか温かく、生命力に満ちているように感じられた。それは、まさに、太幽が築き上げた、新しい「黎明の日本」の姿だった。
そして彼は、静かに筆を置き、空を見上げた。
この新しい日本もまた、宇宙のどこかの「ブラックホール」の内部で、安定した「固体」として、永遠に続いていくのだろうか。
「大丈夫、この国は、必ず立て直せる」
彼の探求は、これからも終わらない。
「黎明の策」を最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。
この物語に登場する経済再生プランは、単なる空想ではありません。僕が「ブラックホールには『地面』がある」と確信するに至った宇宙論的な哲学――「限界があるからこそ安定する」「単純なものの中にこそ複雑な要素が含まれる」――といった思想が、この社会にも応用できるという確信から生まれました。
マイナンバー制度が抱える課題、給付金と税制の公平性、そして高所得者から低所得者まで、全ての国民が納得できるような税のあり方。これらは、僕が書道や歌を通じて「間」や「響き」を追求するように、この国の「根本」を追求した結果です。特に、以下のような緻密な論点を物語に落とし込みました。
・マイナンバー制度が活かされていない現状と、そこに使われた膨大な税金の無駄。
・給付金をマイナンバー限定にすることで、本当に困っている人に届ける「無駄の排除」。
・消費税は外国人からも徴収できる「素晴らしい財源」としての可能性。
・給付と同時減税で消費税を実質ゼロにすることで、経済を活性化させる初期段階の設計。
・段階的な消費税率の調整と、その使途(社会保障、賃上げ企業支援、農家支援)の明確化。
・最終的に消費税を上げて他の所得税や住民税を下げるという、より公平な税制への移行。
・マイナンバーによる「過払い消費税のポイント還元」という緻密なシステムにより、生活困難者のプライバシーを保護しつつ、高所得者であっても一時的に生活苦になる人まで手厚く保護し、無駄を徹底的に排除するという考え方。
僕が歌手として手掛ける「絆プロジェクト」の歌詞が「聴き手の誰もが物語の主人公(自己投影)になれる」よう作られているように、この小説もまた、読者の皆さんがこの国の未来を「自分ごと」として考え、希望を見出すきっかけとなれば幸いです。
書と歌、そして言葉を通じて、この国の新しい「黎明」を共に築いていけることを願っています。
※絆プロジェクトとは私、太幽のオリジナル曲のプロジェクト
人と人の出会いから絆が紡がれるまでの物語を5曲構成の組曲として作成しております
この絆プロジェクトの歌詞を使った小説の物語はいつかきっと
太幽