第九話
昨夜は倒れるように眠ったため、今朝はすっきりとした様子で目が覚めた響だがそこで一つの違和感に気づく。
「雪はどこに行った?」
昨夜眠ったときは一緒にいたはずであり、扉が開いていたとして出て行ったとしてもその場合は今現在扉が閉まっているのに違和感を感じる。
「まあいっか」と考えるのをやめて部屋を出る。居間について軽い食事の準備をしながら学校ですべきことを考える。
「雪を連れて行くなら空也にもついてきてほしいから、どうせなら今の段階で開いている日があれなまとめて聞いておくか」
白米と味噌汁の準備を終え、昨日余った漬物を持ち出し食事を始める響だが食事の時間であっても雪と顔を合わせていない。
「朝ごはんの時にはいつも顔を合わせるんだけどな」
食事を終えた後に雪の食事の準備だけ行い、学校に行く準備をして玄関に向かうと、昨日とまったく同じような状況で待機している雪がいた。
昨日の出来事が本当に夢であったのではないかと勘違いするほど同じであり、少し頭が痛くなるが頭を振ってその思考を放棄して、雪に声をかける。
「今日はいけないから我慢してくれよ、あとちゃんとご飯食べてな」
雪は返事もせずに首を下ろしてがっかりした様子で玄関から今のほうに向かってとぼとぼと歩く。
仕方がないとはいえ雪を悲しませることは本意ではないため、響は少し気落ちしつつ家を出て学校に向かう。
学校に着くなりすぐに空也のことを探し始める響、今回は死角がないように探していると少し離れたところで誰かと並んで歩いている空也を見つけた。
さすがに誰かと並んで歩いている友人に向けて声をかけるのは憚られるので、無言で空也のほうを向いていた響に気づいた空也が二人そろって近づいてきた。
「おぉ、昨日ぶりやなぁ」
声をかけてきた空也に対してどういう風に声をかけようかと悩んでいると、それを察した空也が先回りして説明してくれた。
「二人ははじめましてやったなぁ、この子は楓ちゃんって娘で昨日の帰りに偶々会った子なんよ」
「はじめまして、楓って言います。よろしくお願いします」
「はじめまして、空也の友人の響です」
簡潔にあいさつを交わし、一応確認する。
「昨日のこと話してないよな?」
数秒の間何を言われたのかわかっていないような顔をした後、何も言わずに目をそらして舌を出した。
「お前、どこまで話したんだよ、ほんとに一から全部話したのか!?」
初対面の人がいるにもかかわらず空也の胸のあたりに掴みかかって大声で問い詰めた。
「あー、まぁだいたい?」
能天気な返答に対して響は急激な頭の痛みを感じていた。