第七話
少し前にダンジョンに入ったときと同じくらいのところまで進んだところで空也に声をかけた。
「そろそろ帰らないか、雪もずっと抱えられてるものストレスになるだろうし」
「そかそか、まあ今回はお試しみたいなもんやしまた今度にしよか」
賛同しつつもまるで次があるかのように話す空也に若干の呆れを感じつつも、楽しんでくれたことに安心した響は、無理を承知であることを空也に提案する。
「帰りにスライムにあったらとどめだけは刺さずにおいてくれないか?」
「ん?ええけど」と疑問を抱えつつも返事をする空也が少し考えて「そういうことかぁ…」響の意図にたどり着いた。
「あんなに過保護だったのに、いいのかぁ?」
「スライム相手で弱らせておけば大事にはならないと思ってさ、何かあったらダンジョンにもう来ることがなくなるだろうが」
「それはちょっとなぁ」となぜか不満げな空也のことがよくわからなくなってきた響だが、雪に関してはモンスターに関しては興味津々であり、時折戦いたそうな様子さえ見られたため、響は戦闘の実践させてみようと考えた。
スライムに出会う前に出会ったモンスターは空也がすぐに討伐したため、帰り道はすんなりと進んだがいつもよく遭うスライムはなかなか出てこなかった。
「なかなか来んなぁ」
「求めだしたら来ないのはよくあることだけどな」
そんな話をしているとなんだかんだ出てくるスライム、噂はしてみるものだと思った二人は雪のためのお膳立てを始める。
「スライム相手にこんなに気ぃ使ったことないわぁ」
中心から少しずらした攻撃を繰り返しながら空也が珍しく愚痴をこぼす。
「簡単に討伐できるモンスターの代表だからな、あえて相手を活かすように攻撃するほうが難しい」
そんな返事をしつつスライムの様子を見ていると攻撃を受けるごとに少しずつ小さくなっていく。二回りくらい小さくなったところで空也が攻撃をやめ、こっちを向いて確認してくる。
「そろそろ大丈夫やない?」
「もう過保護って人に言えないだろ、瀕死にもほどがある」
そういいつつも雪に戦わせるとなると心配な気持ちが残る響きだが、雪を下ろして手を離す。その瞬間にすごい勢いで駆け出した。
小さなスライムに突っ込む様子はさながら追いかけた鼠を捕まえるような様子であった。
スライムの少し手前から雪は勢い良く飛びあがり、両前足を使って着地と同時にスライムの真ん中を貫いた。
その様子を見た響は開いた口がふさがらず、空也は少し目を見開きつつ口笛を吹いた。
「こうなるとは一切考えてなかったわ」
「誰もこんなになるとは考えんやろ」
突っ込むことを許した二人が唖然としている中、雪は興奮冷めやらぬ様子で倒したスライムの粘液を前足でいじって遊んでいた。
「にゃぁーー」
「あ、まずい」
我に返った響が一目散に雪に近づいていき、間違っても雪が粘液を舐めないように持ってきていた布で粘液だらけの足をきれいに拭った。