第三話
帰宅し、夕餉や湯浴びを済ませた響は自室にこもり、人以外のレベルについて考えていた。
「人間やモンスターに関してはレベルごとに運動能力や勘が変わっていくが、それ以外の生き物もそうなのか?」
「犬や猫なんかの動物に関してはわからんでもないが、植物に関しては何とも言えんな」
「ほかに経験値を得られる方法は…」
考えに耽っていた響は膝の上に感じた重さに目を向けると、愛猫の雪が膝の上に丸くなっていた。
雪は半年前から飼い始めた白猫で年の割に普段からあまり動くほうではないが、時折ふらっといなくなり心配をかけるかわいいがちょっと困った猫であった。
「おっと、扉が若干開いていたか、どうかしたのか?」
「にゃ~ん…」
普段は誰かの膝で眠るようなことはめったにないため、何かあったかと思ったがそういうわけでもないらしい。
「まぁ、こういうことも悪い気はしないよな」
優しくなでながら小さくつぶやき、和んでいる時ふとさっきの考えが頭をよぎった。
「お前をダンジョンに連れて行ったらレベルは上がるだろうか」
「にゃ」
ふと思いついたその時に雪が鳴いた。
「まさかそんなことないよなぁ、第一上がったとしても確認できないし、雪を危ないところに連れていきたくない」
頭を振って思いついた考えを振り払い、止まっていたなでる手を再開した。
「危険の少ない方法で検証するとしたらダンジョンに植木でも持っていくとかになるが……」
「……にゃーぉ…」
時間を忘れ自分の世界に没頭する響に撫でられながら雪は眠そうな声で弱弱しく鳴いた。
二日がたち、いつものごとく学校での勉強を終えた響は慎二を見かけた。
「おーい、慎二、ちょっと話に乗ってくれ」
「なんだ、ダンジョンなら行かないぞ」
「別に連れていきたいわけじゃないぞ、ダンジョンのことで相談に乗ってほしいだけだ」
「それならいいが手短に頼む、僕はダンジョンより法制度あたりの勉強がしたい」
慎二はあまり乗り気ではないが相談に乗ってくれそうなので、ダンジョンで試したことについて軽く説明した。
「経験値については了解だが、その報告だけか?」
「いや、聞きたいのは「人以外の生き物が経験値を得られるかどうか」だ」
「それを知ってどうするんだ?」
「いや別に、興味本位だけど」
慎二は二の句が継げず無言の間が流れたが、呆れ顔の慎二が何とか考えを述べ始めた。
「…人以外の生き物が経験値が得られるかどうかについては、おそらく可能だろう」
慎二の意見に対して興味深そうな反応を示し、響は続きを待った。
「戦闘経験値の関してはあまり現実的ではないが、基礎経験値に関してはもらえる可能性が高い。しかし基礎経験値の条件に関しては検証不足だな」
慎二の意見を聞き、「なるほど…」と響は考えを整理する。
人が基礎経験値を得られる条件をしっかりと調べてはいなかったが、武器を持って戦闘の場面居合わせていれば経験値が得られていたが、武器の有無やモンスターとの距離、視界、敵意など検証すべき部分が多く残っている。その点を試す必要があるといえるだろう。
「ありがとう、諸々踏まえて試してみる」
「そうか、ほどほどにしろよ」