第十六話
「何の話してたんだっけか」
逸れた話が衝撃的過ぎて元の話が上書きされてしまい、響は何が何だか分からなくなっていた。
空也も同じように冷静さを欠いていたので考えている様子であったが、二人が驚いている理由があまりわかっていない楓が話の流れを確認する。
「展覧会の話でしたよね、そこから芸術とか音楽とかの話が広がったはずです」
「あぁー、確かにそやったわ」
確認してもらった内容に二人が納得する。その確認に対して空也が反応し、加えて空也が続ける。
「響さぁ、楓ちゃんに展覧会についてきてもらえば?」
空也が唐突にそんな話を吹っかけてくる。楓の話に対する驚きと比べて驚きが少ないのは衝撃度ではなく付き合いのの長さであろう。
「なんでそんな話になるんだ?」
「絵にはあんま詳しくないって言ってたけど、絶対俺らには理解できない部分が分かっていると思うんよ」
一理ある、教養に関しては言うまでもなくものの見方も二人とは違った視点で見れる人であるといえる。
そんなことを考えつつも芸術分野に対して何の知識もない響なので、ちょっとしたことであっても何かを言ってくれる人がいれば少しは楽しめそうだと考える。
「予定に関しては問題なさそうだけど、ほぼ初対面の人相手なんだが」
ついてきてもらえるのかどうかに尽きる問題なので、それについて話しておかなければならない。
それに教わる側である以上こちらから何かできることは少ない。
「ついて行っていいんですか?落ち着きたいと言ってましたけど」
ついてくることに関しては抵抗がないようであった。
「落ち着ける場所に行きたいと考えていたんでね、ついてきてくれるならこっちからも頼みたいかな」
落ち着きたいという話に嘘はない。確かに楓が言うように初対面の相手がいる状況で落ち着けるかというと怪しいが、あまり楓に気を遣うように感じていない。
それに響は展覧会で面白味などを感じたことはほとんどなかったが、今回は違ったことが感じられるかもしれない。そういった面でついてきてもらったほうがよさそうだと思った。
「さっきも言いましたけど、絵はあんまり詳しいことはわかりませんよ?」
「それに関しては俺もわかんないし、思ったことがあったときに話してくれるだけでもうれしいよ」
「なら一緒に行かせてもらいますね」
合意がとれたので、話を明後日の予定に関して決めることに移す。
「展覧会は別に時間の指定がないから、ダンジョンのほうについての時間をまず決めようか」
「展覧会がいつまでかかるかわからんのやから遅めでいいよなぁ?」
あまり時間を使う気はなかったが一緒に行く相手がいるとなると早めに上がることもなさそうなので、遅めの時間にすることには納得して時間を考えていく。
「なら三時くらいにするか、ちょうど展覧会終わってから一度帰ることになるからな」
「わかりました、では展覧会はどうしますか?」
それを聞かれて少し時間を悩んだので候補を挙げる。
「九時か十時のどっちがいいと思う?どのくらい見ることになるかわからないからさ」
「それなら九時にしましょう、早めにしておけばそのあとの行動もとりやすいですし」
「そうだね、なら久慈に現地にしようか、今度は迷子にならないでね?」
から解を踏まえて忠告をしておくと、楓はすこし顔を赤くしつつも返事を返しその場はお開きになった。