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第十五話

「楓ちゃんはそっちのほうに興味はあるん?」


空也はダンジョンの話から展覧会の話に移していく。


あまり長い付き合いではないが、芸術分野にそこまで興味がなさそうだと感じている。

空也は本人の世界観のようなものは強いが、だからと言って芸術の方面に向けて意識があるわけではないようであった。


「そうですね、絵に関してはそこまで詳しくはないですが音楽に関しては触れる機会が少しありましたね」


「音楽とは驚きだな、あまり明るい人は多くないと思うけど」


芸術の分野がなんであれ、この時代に芸術に触れられる環境にある人は少ない。そのため楓の返答に二人は驚きつつも空也は楓に質問を続ける。


「どんなことをやってたん?」


「ピアノが一番身近でしたね、その他に声楽も教わる機会もありましたよ」


二人ともさっき以上に驚いていた。声楽に関してはある程度のお金は必要になるが、触れられる環境は少なくない。しかし、ピアノに関しては現在普及が少しずつ進んでいる状況であるが、まだ実物が少ないため一般の人は聞く機会すら滅多になく、引いたことのある人などもってのほかである。


「あの、どうかしましたか?」


そんな中でピアノが一番身近にあったという楓の発言に対して二人が驚くのは当たり前と言えるが、楓に関しては当たり前のように話しており、反応がないことに疑問を浮かべていた。


その態度を見て、二人は他のことがどうでも良くなるほどに彼女の出自について興味が向いた。


「いや流石に驚いたわぁ、ピアノを弾いたことのある人なんて初めて会ったんよ」


「俺もそうだな、それどころか今までピアノに関しては演奏を聴くことすら滅多になかった」


二人は進学ができているため、一般人かと言われると怪しい部分があるが少なくとも生まれは普通であり、そういった面では二人の話は一般的なものであった。


「そうなんですか?演奏会なんかはそこそこ開かれているので一度は聞いたことあるものだと思っていたんですけど」


二人はまた言葉に詰まる。

確かにこの付近ではピアノが置かれている場所は他の地域に比べれば多いかもしれないが、置かれていないことが普通になのでわざわざ聴きにに行かない限り見かけることはない。それゆえに演奏会が開かれようのもなら多くの人が集まり、入場券の入手はとても難しい。


「演奏会の入場券なんて事前に準備しておかないと買えないからね、安易に買えるほど安いものでもないし」


驚きつつもその感情に慣れてきて回復が早くなった響が率直な事実を伝えると、楓は逆に少し驚いた表情を浮かべた。


「そんなことになっているんですね、経緯などは分からないんですけどこれまでに何度か入場券が家に届けられていたので、そういうものだと思っていました」


一周してもはや驚かな苦なった二人だが、今の話から楓に関して確信を持った。

正確なことはなんとも言えないが、明らかに生まれが普通ではない。身近に楽器がある時点で普通ではないが、それを疑問に思わないこと自体普通ではない。


裕福な家の人であれば服装や小物、態度なんかから見分けがつきやすいことが多いが楓にそういった部分が見られなかったため、気づくことができなかった。


「まさかお金持ちのとこの娘さんだったとはなぁ」


「気づかなかったな、他の人と比べてそういった雰囲気を感じなかった」


いったん落ち着いて飲み物を飲んでおき、空也と会話を交わしていると楓が疑問を浮かべた表情で聞いてきた。


「えっ、そうなんですか?」


二人は揃ってため息をつくしかなかった。

(分けるといっていたけど普段から区切りなんてなかったんや)

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