第十二話
喫茶店の中に入ると静かそうだが優しい雰囲気を纏う店主がコーヒー豆を挽いていた。
店主に軽く会釈をして店の中に入り、奥のほうのあまり人に迷惑のかけにくい席を探し三人で席に着いた。
「先に注文だけしようか」
そういって響は二人にお品書きを渡したが、受け取ってすぐに空也は店主に話しかけた。
「すいませんが、店主さんのおすすめのメニューは何ですかぁ?」
空也の問いかけに対して店主は暫し考えた後、飲み物といくつかの料理を挙げた。
「飲み物はブレンドの珈琲ですかね、私の好みではありますが酸味を強く感じられるように配合を工夫しています。」
「食べ物ですとサンドイッチが定番ですかね、具を一種か二種でつくることで食べやすくつくっております。そのほかですとナポリタンやピザトーストなんかがおすすめですね」
「そうなんですねぇ、ありがとうごさいます」
そういって一通りの会話を終えた空也が響と楓のほうに振り返って何にするかを相談し始めた。
「おすすめはそんな感じやって、小腹がすいてるしトースト食べよかな、飲み物は珈琲に少し牛乳を入れてもらおかなぁ」
「俺はブレンドの珈琲のサンドイッチにしようと思う」
「私もサンドイッチにします、飲み物は紅茶をいただこうかな」
頼むものが決まった三人はそれぞれ店主に伝え、響はこの待ち時間から朝のことを聞き出すことにした。
「さて、そろそろ昨日のことについて聞いてもいいかな?」
早速切り出した響に対して空也が答えようとする
「大体話したとは言ったけどでもそんなに気にしなきゃいけ……」
「一旦ストップ、空也じゃなくて楓ちゃんに答えてもらう」
続ける響。
「楓ちゃんは聞いた話しか知らないはずだから、それについてある程度詳しく教えてくれればいいよ」
空也の話を途中で遮って話を続けることになったため区長や雰囲気に関しては気を付けたが、言うべきことをはっきりといった。
「それもそうやなぁ」と空也は響の言い分を理解し、その後は静かになった。
「わかりました、覚えている範囲で要約してお話しますね。」
楓はあまり緊張した様子がなく、しっかりとした口調で話を始めた。
「まず、昨日聞いた話を大まかに分けると響さんと空也さんの二人でダンジョンに入ったこと、そのときに猫を連れて行ったことですね」
「ほんとに大体話したんだな」
呆れた目で空也を見ながら文句を垂れる響に対して、空也は反省する気のなさそうな顔をしていた。
「まあ中でどうこうなんかは何も言ってないからさぁ、そこまで問題ないんちゃう?」
「それはこれから話すこと次第だから」