第十一話
何とか授業を乗り越えた響は空也と合流して二人で楓のことを探していた。
「集合場所ここだったよな?」
あまりに楓が来ないので逆に間違えたのかと心配になる響に対して、空也が返す。
「せやね、ここで間違いないわ」
空也の返事を聞いて安心しつつ、響はその代わり逆の心配が思い浮かんだ。
「じゃあなんで来ないんだろうか、迷子か?」
さっきとは別の不安をつぶやいたら空也が反応した。
「あー、あり得るかもなぁ、前に会った時も、ちょっと縮こまってきょろきょろしてたんよ」
嫌な予感がした。合流場所を決めたのは響であり楓は納得していたが、相手が本当に知っている場所ではなかったかもしれない。合流できなかった場合のことを想定していなかったため、どうやって探そうか考えていると、隣の空也が「あっ」と声を上げた。
「いたのか?」
「遠いから何とも言えんけどな、前見た時もあんな感じにきょろきょろしてたんよ」
空也の指さす方向を見ると朝見た彼女と同じ髪型をした女性が少し縮こまっておどおどした様子できょろきょろと周囲を見ていた。
「あー、確かにあれっぽいな、とりあえず見失わないように近づいてみて本人かどうかを確認しようか」
そういって二人でまっすぐ近づいていくと途中で気づいた女性の態度が少し緩み、安心したような顔に変化した。
「見つかってよかったな」
「申し訳ありませんでした、よくここら辺に来るので迷子にはならないだろうと思っていたんですけど」
そう言う楓であったが迷子にならないという点についてはあまり何とも言えない二人であったが、いったん流して話を先に進める。
「とりあえず合流できたし、近くの喫茶店に入ろうか」
朝とは異なり一定の冷静さを保っていた響であっても、空也が細かくどこまで話してしまったのかを確認しておきたかった。その心情を気取られないように注意しながら話をできる場所への移動を提案した。
「わかりました、ここから近い場所に落ち着いたいいお店があるんですよ」
「おぉ、そうなんや、なんてお店なん?」
不自然にならないように店の名前を聞き出す空也に安心感を覚えつつ、響は二人についていく形でそのお店に移動した。
「今度はちゃんと着きましたね」
「時々怪しかったけどね…」
響は小声で聞こえにくいようにつぶやいたつもりだったが、楓の耳に届いてしまい方をすぼめた。
所々迷いそうな雰囲気のあった楓だったが、近くの人にすぐに話しかけて確認してくれた空也のおかげで、三人は道を間違えずに目的の喫茶店板とりつくことができた。
「ここがさっき話したお店の月影庵です!」
お店の外観は話に聞いていた通り落ち着いており、月の出る夜が似合いそうな雰囲気のお店であった。