第十話
「えーっと、細かくどこまで話したか教えてもらえるかな?」
怒気の抜けきらず、一周回って優しい言葉遣いで空也を問い詰める響だが、やはり焦りで周りが見えていなかった。
「謝るからいったん落ち着こか、楓ちゃんがびっくりしてるし、結構目立っちゃってるよぉ」
その言葉で周りを確認する響、楓は空也の隣で申し訳なさそうな顔でこちらを見ており、周囲の学生は好奇を向ける。顔見知りに関しては少しにやついた顔を向けてきている。
顔見知りの目線が癇に障るも、徐々に落ち着きを取り戻した響はとりあえず楓に謝罪を述べる。
「急に取り乱してしまいすみません、個人的にちょっと大事なことでしたので」
「気にしないでください、あと敬語はやめていただけると嬉しいです。多分私のほうが年下なので」
「あー、わかった、そういうことならやめさせてもらうね、その代わりといっては何だけど君も無理して敬語とかは使わなくてもいいからね」
「わかりました、でも基本的には敬語であることが多いので大丈夫です」
謝罪と簡単なすり合わせを済ませた二人であったが、響はこの場で空也を問い詰める気になれずまた学校の始業時間も迫っていたため、学校が終わったころにもう一度集まることを約束してこの場は解散した。
解散したあと空也と一緒に教室に向かっている時も響は黙ってさっきまでのことについて考えていた。
「何も言わずに話しちゃったことに関しては謝るけど、そんなに怒るかぁ?」
「雪が危険になりそうなことはあんましたくないんだよ、人に広まったら連れて行かなきゃならない時が増えるかもしれないだろ」
「でも雪ちゃん乗り気なんやろ?連れて行くこと自体は多くなりそうやん」
「ほかの人がついてくることがあったときに前回みたいな安定感を保てる保証がないってことが一番怖いんだよ」
その言葉を聞いた空也は少し黙り込んでしまった。
空也に関してはあまり警戒せずにいた雪であったがほかの人に対してどんな態度をとるのかがわからず、ダンジョンの中で計関心が高まって勝手な行動をされた時が一番警戒すべきことである。
「せめて安定することが分かってる相手だったら、まだ安心できるんだけど」
しれっとこぼした響の言葉に空也が食いついた。
「いったん雪ちゃんと楓ちゃんの顔合わせをしようや、ダンジョン行くまでもないし問題ないやろ」
急な言葉に響は驚いたがそれくらいであればいいだろうと考える。
「俺は別にいいけど、それに関しては楓ちゃんが会いたいといえばの話だからな」
「昨日話した時に猫のことが好きそうな雰囲気あったから多分大丈夫やと思う」
自信ありげに話す空也をどこまで信じていいもの考えていると教室に到着したので、空也と別れて講義を受ける準備をすることにした。
普段から持ってきているカバンの中を見るといつもは入っている道具のうちいくつかがないことに気づいた。
普段から完全に集中して授業を受けていたわけではなかったが、この日の講義は昨日のダンジョンのことに加えて空也のちょっとした暴走を受けたことで、ほとんど頭に入ってこなかった。
「雪に気を取られてしまっていたのかもしれないな」