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【コミカライズ】アマレッタの第二の人生  作者: ごろごろみかん。
2.罪を抱えた国

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約定の千年の始まり

王は、僅かに沈黙した。

サミュエルの言葉は、まるでそうしなければならない、とでも言うような──。

己自身を戒めているように聞こえたからだ。


そうしなければならない。

そうすることが正しいのだと、思い込んでいるような。


王は、おもむろに口を開く。

その刻んできた時を示すような皺を深くさせ、親として、父として、彼は尋ねた。



「彼女は、それを知っているのか。お前が、彼女に後ろめたさを抱いていることを」



後ろめたさ。

それは、確かにその通りだった。

サミュエルは僅かに目を見開いたが、すぐにまた、微苦笑を浮かべる。取り繕うことを諦めたような、そんな表情だ。



「知りませんよ。知っていたら、彼女は遠慮します。あのひとは、そういうひとだ」



「二度目の予知で、あの娘と何があったのか。そこは尋ねまい。お前にも、個人的な事情というものがあるだろう。しかし、サミュエル。彼女をこの国におき、匿おうとも──恐らく意味などない」



知ったような言葉を吐く王に、彼は瞳を細めた。蜂蜜を溶かしたような甘い瞳が、鋭く王を射抜いた。長く玉座に座る王は、息子の責めるような──問いただすような、そんな刺々しい視線を受けてなお、諭すように言った。



「彼女は、春を司る稀人。そして、バートリーの娘だ。彼女自身は、バートリーとは縁を切ったと話したが、あれの精神は、魂は、そう変わらん。生まれ持ったものを変える、捨て去ることは、並大抵のことでは無い。あの娘は、無意識のうちに、貴族の役目を果たすぞ」



「それは……」



「ただ、守られてばかりのお姫様ではない、ということだ。……お前も、知っているだろう?そんなに、過保護になるのだからな」



「…………」



今度は、サミュエルが沈黙する番だった。

言われずとも、理解していた。


アマレッタは、ただ守られるだけの令嬢ではない。

むしろ、彼女は守るべき人間だ──と、少なくとも、彼女自身、そう自負していることだろう。


貴族としての責務。

生まれ持った、役目。

稀人としての、義務。


それらを、完全に捨て去ることは、きっとできない。


助けを求める人間がいたら、彼女は手を貸すだろう。それで、自身の立場や──命が、危うくなると、知っていたとしても。


そうだ。知っている。

サミュエルはそれを良く知っている。


知っているからこそ、彼女にはクリム・クライムにいてほしい。そう、望んでしまうのだ。


眉を寄せ、考え込むようにまつ毛を伏せたサミュエルに、王は話を変えた。



「して、サミュエル。かの国で動きがあった。……いよいよだ」



その言葉に、サミュエルはハッと顔を上げる。

驚いたように見つめる先で、王が嗤った。



「セミュエル国で、反旗が翻った」



「──」



「三大公爵家による、内乱(クーデター)だ」



その言葉は、ある意味、予想していたものだった。

それでもやはり、驚きは拭えない。



「そう、ですか。ついに……」



アマレッタが巻き込まれる前に、彼女を国から出すことが出来た。

そのことに、安堵する。


そんなサミュエルに、王は肘掛に肘を乗せ、遠くの窓を見つめた。窓の先──海を越えた先に広がる、セミュエル国を見るかのように目を細め、王は言う。




「約定の千年が、始まった」




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