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【コミカライズ】アマレッタの第二の人生  作者: ごろごろみかん。
2.罪を抱えた国

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アマレッタとしての第二の人生

分からない。でも、その気持ちが嬉しい。



「ありがとう、サミュエル。だけど、良かったのかしら。今更だけど、あなたの、預言者としての立場も、クリム・クライムの国としての在り方も……部外者である私が、聞いても良かったの?」



外部からの一切の接触を絶っているという、クリム・クライム。

その秘密を、国外の人間である私に教えても良かったのだろうか。


私に機密事項を漏らしたことでかなにか彼になにか(ペナルティ)があったら、申し訳ない。

そう思いながら尋ねると、彼はガーゼを片手に持ちながらあっさりと答えた。



「ああ、それならきみが気にすることはない」



「だけど」



「ガーゼを貼るから、こちらを見て。アマレッタ」



彼に名を呼ばれて、私は再度顔を上げた。



(国の機密事項を外部の人間に漏らすなんて、ふつうは許されない……)



彼は、クリム・クライムと彼の目的は違うと話していた。

クリム・クライムの目的は分からないが、それがあるからこそ、私に情報を与えても問題ないと判断されたのだろうか。

彼に、ガーゼを貼ってもらっている間、私は静かに考え込んでいた。



(これから……私はどこに行きたいのだろう?)



今まで、どこに行きたいか、なんて考えたことは無かった。


私は、稀人だから。

セミュエルで生まれ、セミュエルで暮らし、セミュエルで死ぬのだと、とうぜんのように考えてきた。だから。



(バートリー公爵邸ではとにかく、国を出たい……この場を逃れたい……その思いが、強くて)



これは、逃げなのだろうか。


私は、家から、国から、婚約者から。

逃げてきたのだろうか──?



(……無責任、だ)



ぽつりと、そんな言葉が胸の内で形になった。


稀人として生まれ、公爵家の娘として育ち、自分の存在価値を理解していたにも関わらず、私は国を出た。


これが、無責任でないなら何なのだろう?



「アマレッタ」



「──」



名を、呼ばれて視線を上げる。

サミュエルは、私を真っ直ぐに見つめていた。



(また……この瞳)



なにかを、訴えかけているような。

なにかを、伝えているような。



(あなたは、私に何を言おうとしているの……?)



私は今、彼の顔でどんな顔をしているのだろう。



訝しむような?疑うような?

それとも──不安を感じている、ような?



「きみは今、何を考えてる?」



「何……って」



「責任は、感じなくていい。先にきみを蔑ろにしたのは──きみを搾取し、良いようにしてきたのは、あの国だ。きみが、そこまで尽くす義理はない」


「──」



(どうして……どうして、このひとは)



私が、考えていることが分かるのだろう。


どうして。


(私が……)


私が、求めている言葉を。

私が、言って欲しいと思っていた言葉を……くれるのだろう。


私は、まつ毛を伏せた。

様々な思いが駆け巡る。


季節を守る、国の柱。

国の存続のために、無くてはならない存在。



それが、稀人。

私は、春を司る稀人だった。



「私は今、これから、何をすればいいのか分からなくて、迷っている。今の私は、帆を失った船のよう。だから……見つけたい」



静かに、私は言葉を紡いだ。

今の気持ちを、見失わないようにしながら。



「稀人でも、公爵家の娘でもない、ただの私の──アマレッタとしての第二の人生を。人生の岐路を照らす、灯火のようなものを……見つけたいと思う」



国を出た。

そのことを、後悔してはならないと思う。



だって、あの時の選択が、誤りであったと認めたら。

私の覚悟も、すべてが無駄になってしまう。

サイモン様の言葉も、私兵の彼らの気持ちも、無意味になってしまう。


だから。後悔は、もうしない。

悔やむのも、これで終わりにする。


これからは──今、何ができるのかを。


私は、何をしたいと思っているのか。


何のために、生きているのか。

何のために、生きたいと思うのか。


その意味を、見つけたいと思う。

そう、願うのだ。



「私は私なりに……頑張ってみたいと思うの。だから……まず、その一歩として」



家族は、私の理解者ではなかった。

婚約者は、私の想いを裏切った。



もう、ひとを信じるのはよそうと、そう思ったこともあった。


だけど、それではいけないのだと思う。


ひとを信じられない人生なんて、あまりにも寂しいから。

だから。



「私は、あなたを信じたい。私を必ず守ると、そう言ってくれたあなたの言葉を。私のために、セミュエルを訪れた、と言ってくれたあなたの言葉を」



彼は、静かに私の言葉を聞いていた。


私の言葉を、待ってくれている。


それが心強くて、嬉しくて、だから、最後まで、ハッキリと自身の気持ちを形にすることが出来た。



「だから、私を──あなたの国に、クリム・クライムに連れて行ってほしい。そこで、私に何ができるのかはわからないけど……。あなたが、バートリー公爵邸から、セミュエルの国から、私を連れ出してくれたのは事実だから。その恩に報えるよう、頑張りたい。そう、思うの」




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