罪悪感の始まり(2)
タオルケットを掛けて、私は眠っていた。
ただ、それだけだったはずなのに、いつもと違っていた。
下半身に違和感を覚えた。
寝ている私の足元に人の気配を感じた。
違和感で意識が少しずつ覚醒する。
下着の隙間から手を入れられ、執拗に触られていた。
とにかく、経験のない違和感に恐怖を感じた。
声が出せない。
私が起きていることは気づかなかったのか、ゆっくり下着が下ろされていく。
抵抗するかのように少しだけ私は身体を動かし、横向きになった。
少しだけその手は止まったものの、ゆっくり私の身体を元に戻し、下着を剥ぎ取っていった。
なま暖かいものが股間を撫でていく。
足を手で固定されしばらくの間、ピチャピチャと音を立てられて、舐められているのがわかった。
私はぎゅっと目をつむり、何故こんなことをされているのか分からず、恐怖に耐えていた。
玄関のガラガラと開く音がした。
祖母が帰宅したようだった。
それと同時に私は解放された。
そそくさと下着を履かされ、何事もなかったようにタオルケットを直された。
誰かが私のいた居間から襖を開けて外に出る音がした。
祖母は玄関からキッチンに向かい、おそらく手を洗っているのか水を出す音が聞こえた。
そのあと冷蔵庫の開け閉めの音がして、夕飯の準備をしているようだった。
いつもだったらすぐに起きて、祖母の側に行き手伝いをするのだが、動けなかった。
下半身の違和感とそれが恥ずかしくいけないものだと直感し、しばらくそのまま居間にいた。
誰にも今あったことは気づかれてはいけないと、子供ながらに考えた。
早く起きて祖母の手伝いをしなくては、おかしいと思われるかもしれないと立ち上がろうとしても、下半身が気持ち悪かった。
その違和感を隠して、タオルケットを畳み、テーブルに置かれている宿題のドリルと筆記用具をランドセルに片付けた。
歩く度に違和感があり、無性に罪悪感が広がった。
「今、ご飯作っているから家に持って帰ってね。」
と、祖母は明るく話す。
私は祖母の顔を見て、少し安心する。
いつもと同じ時間が当たり前のように目の前で流れていく。
「今日は秋にある町内文化祭の練習だったんだけどね、衣装も皆で揃えることになって…」
と、祖母はいつものように今日あった出来事を楽しそうに話をしてくれている。
「リナちゃん、こっちに来て野菜の皮むいてくれる?」
と、ピーラーと野菜を持ってにこやかに祖母は話しかけ続ける。
私はとにかく祖母の隣に行き、いつものように手伝いをする。
祖母にバレないように、普通に見えるように、出来るだけはしゃいで見せた。
きんぴらとアジフライをタッパーに入れて、私に渡してくれた。
夕方6時過ぎには妹と母が家に帰ってくる。
私は祖母の家から、タッパーを抱えて歩いて帰る。
5分もかからない距離だが、近所に住むおばさんやおばあさんに声をかけられる。
「家の前に野菜、置いておいたから食べてね。」
「今、おばあちゃんちから帰り?」
など、外もいつもと変わらない。
何もなかったように私も受け答えた。