↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/81

栗の花の匂いがする頃(2)

私が拗らせていた曖昧な関係が単純なくらいほどけていく。

私が素直になれたきっかけはほんの少しのタイミングなのか、彼の気持ちなのか。

けれどすべてはあの日の幼い自分に起きた出来事から始まった。

エイタが亡くなり、それでもすべてリセットできないけれど、私なりにちゃんと向き合う事を決めた。


朝ごはんの片付けを終え、ヒナコに電話をかける。


「もしもし、ヒナコ。ちゃんと伝えたよ。」

私がそう言うと、


「なかなか長かったね。でも、良かった。これで安心して帰れるよ。」

と、笑っていた。


彼にもLINEでヒナコからすぐに連絡が来たようだった。

彼は笑っていて、幸せそうに返信をしていた。


「ヒナコ?」 

と私が尋ねると、彼はスマホを私に見せてくれた。


“長期戦、お疲れ様です。必ず幸せになるように。”


「自分でも驚くくらい長かった。でも、待つのはイヤじゃなかったよ。」

と彼は穏やかに笑う。


なかなか前に進まなかった気持ちが少しだけ動く。

私が大事に思う人を大事にしたい。

彼がいる当たり前を大事にして、これからも同じ時間を過ごしていきたい。


彼は着替えを始めて、私にも準備をするように促す。


「どこかに行くの?」

私は分からず準備を始める。


「リナ、一緒に暮らそうか?」

彼は終始笑顔で話す。

私が反応しきれずにいると、


「家族になろう。」

と、造作もないように話した。


テーブルでメイクをしながら聞いた唐突な話に手を止める。

あとリップを塗るだけでほぼ仕上がっていた。


昨日素直に伝えて自分の中では精一杯だったから、スピードの早さに驚いた。


彼はそんな私のそばに寄り、当たり前のようにキスをして、


「家族になりませんか?」

と、もう一度私に尋ねた。


愛おしさ全開の笑顔に頷くしか出来なかった。


「リナ、僕は一般的な家族は知らない。父親、母親が一緒に穏やかに暮らすのも、子供が普通に親に甘えるのも知らないけど、出来るだけリナとそうなりたいと思ってるよ。」

と、私に優しく伝えた。


私は彼を抱きしめた。

幼い頃の彼を私は知らない。

私の想像も及ばないくらいツラい時期があったと思う。

ただ、彼の優しさや仕草を見ればお父さんから離れてからのお母さんやおじいさん、おばあさんの愛情の深さはわかる。

私が彼に支えられたように彼をこれから支えていきたい。


小さい頃のユウも抱きしめてあげたかった。


「ユウ、家族になろう。」

と伝えた。


手早く準備をして、2人で外に出た。

彼は今から実家に行くと言っていた。


あまりにも目まぐるしい。

けれど、愛おしい。


いつも引っ掛かっていたものが少しだけ軽くなる。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。