表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/81

記憶の拘束(6)

その日、お風呂から上がり、かさぶたになったふくらはぎの傷痕を見た。


「リナ、髪乾かすね。」

最近は当たり前のように準備をして待っている。


「サルとかのグルーミングみたいだね。」

私は彼に伝えた。


「グルーミングは衛生面での機能もあるけど、縄張りの表現だったり、愛情表現だよ。」

と、私の髪を丁寧に乾かす。


彼は髪を乾かし終えると、パジャマから覗くかさぶたに触れた。

私は少し身体がすくむ。


「やっぱり怖いよね。ごめん。だけど、ケガしたところを見ると、僕も少しだけツラいかな。もちろん、リナの方がもっとしんどいのはわかるから…。だから僕の心配はしないで。」

まだ、不意に触られると私の身体が強張る。

それを自分の痛みのように切ない顔で、彼は伝える。


少し出来た会話の隙間がもどかしくて、お互い言葉を探した。


「まぁ、とりあえずお風呂入ってくるね。」

彼はリビングを出た。


そして、今日も向かい合いながら眠る。


次の日にエイタの弁護士から連絡があった。


前回と同じ感じで被害者の気持ちが置き去られている。

すべての弁護士の方がそうではないと思うが、一方的に示談交渉の話が出た。

今決めれる精神状態ではないので、後日という話で終わった。


今後の事は決めないといけない。


裁判をしたとして、なぜ私にそんなことをしたのかでエイタはなんと言うだろう。

前回の被害届で恨みを持ったというのなら別に構わない。

でも、昔の話が出てきたら私はどうしたらいいのだろうか?

虐待されていたことが話に出たら、私は気持ちが耐えれるのだろうか?

父や母にもそれが知られてしまったら、どうなるのだろうか。


不安しか出てこなかった。

まわりにも知られてしまう可能がある。

何が正解なのか分からなくなる。


数日前はちゃんと前を向けていたのに、また気持ちが揺らぐ。


「お姉ちゃん、お父さんが心配してる。近所でお姉ちゃんがどんなことをされたのか詮索する人がいて、面白おかしく言ってたって。田舎だから暇なんだよって言ったけど、もし、大袈裟な事になったらお姉ちゃんが傷つくって、お母さんも泣いてた。」

数日後、妹から連絡が来た。


「なんか私も心配で、お姉ちゃん、大丈夫?」

妹が珍しく泣きそうな声で話している。


「カナ、やっぱり示談にするよ。早く終わらせたい。お父さんとお母さんにも伝えといて。」

私は電話切った。


田舎では狭いコミニティが全てだ。

少しでも異質ならいろいろ詮索される。

密な分、本当に厄介だ。

心配しているからとかなんでも相談して等、口当たりの良い言葉で尾ひれがつく。

もちろん、本当に心配してくれる人もいる。

普段なにもない分、いろいろ気になるのだろう。

無意識か意識的か分からないが、確実に誰かを蝕む。

人を傷つけることに鈍感な人間はいる。

体を傷つけるのも、心を傷つけるのも同じことなのに。

血が流れたり、骨が折れたりしないと分からないものなんだろうか?


これ以上は父や母、妹も心が持たない。

私も心が折れそうだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ