記憶の拘束(2)
人混みで無神経にもスマホで写真を撮っている人が数名見えた。
それを私を支えてくれた女性の方が止めてくれ、その中にいたユウがスマホのデータを消すようお願いしていた。
「女性は被害者です。もし、写真が拡散された場合、必ずあなた方を訴えます。」
ユウはそう言って、その場にいた人混みにスマホを向けて写真を撮り始めた。
スマホのデータをその場で消去してもらい、人混みが消えた。
「お知り合いの方ですか?」
女性が私に尋ねた。
「はい、そうです。」
力なく答えた。
ほとんど人がいなくなり、ユウが私に近づいた。
「ありがとうございました。僕が変わります。」
ユウはその女性にお礼を言い、私を支えた。
「家に帰りたい…。」
私は呟き、それを聞いて彼は家へ向かった。
本当に歩いてすぐの距離。
とにかく、家に帰って考えないと。
これ以上、傷つけられたくなかった。
家に帰って鏡を見た。
ひどい状態。
化粧も落ち、髪の毛も乱れ、足には擦れたであろう細かい傷が入り、服も雨で濡れて破れていた。
「リナ、まずケガを見せて。手当てをしよう。」
つらそうに彼は声をかけた。
「ユウ、私もう振り回されたくない。これ以上、傷つけられたくもない。警察に行く。スマホで傷の写真を撮って。」
怖くないわけがない。
何年も何年も蓄積されて私を精神的に支配してきた。
何度も死ねばいいのにと願った。
「…わかった。」
彼は私を気遣いながら写真を撮る。
ふくらはぎ、太もも、胸元、頬、腕と写真を撮りながら、何度も謝っていた。
「遅くなるなら、迎えに行けば良かった。ごめん。」
何度も何度も彼は謝っていた。
「ユウのせいじゃないよ。大丈夫。正直、今はツラいし、怖いし、頭が処理できないことも多い。でも、私は怒ってる。許せない。エイタにこれ以上傷つけられるのはイヤ…。」
私の言葉に彼は少し戸惑った。
「従兄の?」
彼はそう私に確認した。
「私はちゃんとしたい。今は昔みたいに何も出来ないわけじゃない。ちゃんと怒れてる。それにユウもいてくれるんでしょ?」
私はいっぱいいっぱいで気持ちが折れそうになるのを、言葉にして耐えた。
「本当は触られたところを洗いたい。この服だって捨ててしまいたい。でも、もう逃げたくない。」
私は服を着替え、破れてしまった服を手提げ袋に入れて準備をした。
「そばにいるから、ツラいときには言って。ちゃんと支えたい。」
彼は私の手を握り、玄関のドアを開けた。
あの記憶が私を今まで苦しめた。
きっと、それは変わらずこれからも苦しむ。
それでも、これ以上傷つけられるのは違う。
あの時はただツラくて、自分を責めていた。
罪悪感から何も出来なかった。
だけど、今はちゃんと怒れている。




