自己肯定感と依存(5)
あれから進路相談や夏の大会の本格的な練習などで忙しく過ごした。
2年生の夏は本格的に受験準備を考えないといけなくなる。
ヒナコは割りとしっかり考えていて、理学療法士になりたいと言っていた。
私は母からいつも今からは資格を持った方が良いと言われていたため、漠然と料理が好きだからと理由で管理栄養士を目指した。
最初軽い気持ちくらいでヒナコが同じ大学に行けたら良いよねと言っていたが、だんだんしっかり二人の目標になった。
ヒナコは中学の頃にも陸上で結果を残していた分、陸上での推薦で大学を決めるのかなと思っていたが、
「現実的に私くらいじゃ、難しいよ。」
と笑い、中学の頃から理学療法士になろうと思っていたと私に話してくれた。
夏の大会の前にまた合同練習があり、佐藤さんに顔を合わせるのが気まずかったが、佐藤さんは変わらず接してくれていた。
「難しいかも知れないけど、あんまり嫌わないであげて。一応、選手としては私も尊敬してるし。リナの気持ちが一番だけどね。」
と、ヒナコは優しく話しかける。
彼女はいつもいろんな事の先回りをしてくれていた。
佐藤さんの事もあえて遮ることはしなかった。
いつも気を遣ってくれている。
「ヒナコ、いつもありがとうね。もう少し人とちゃんと向き合えるように頑張るよ。」
と、しっかり彼女の目を見て感謝した。
「…リナが成長している。」
ヒナコは私にハグをした。
びっくりしたが、イヤではなかった。
むしろ、心地よかった。
夏の大会も無事終わり、ヒナコは惜しくも決勝進出するも表彰台には上がれなかった。
佐藤さんは全国大会に出場することになった。
うちの学校も数名全国大会に出場が決まり、浮き足だった。
私はヒナコを見たが彼女は、
「仕方ない。来年は絶対行く!」
と言っていた。
また、気を遣わせてしまったと思った。
すると、
「リナ、私はやりたいようにしてるし、好きな人も大事にしたい人もちゃんと選んでるよ。」
と、静かに私に伝えてくれた。
「リナはあまり器用ではないけど、いつも一生懸命に頑張ってる。しっかり考えて悩むからなかなか言葉がでないときもあるけど、私は優しいリナが好きだよ。あわよくばもっとリナ自身自分を好きになって欲しいな。」
ポツポツゆっくりと私に言葉を届けてくれた。
私は自己肯定感が低くい。
わかってはいるのだけれど、どうしても自分を好きになれないでいる。
ヒナコは深く干渉はせず、そばにいてくれる。
そんなヒナコだから一緒にいられるのだけれど、おそらく自分を好きになることはまだ難しい。