自己肯定感と依存(2)
LINEがかなり溜まっていた。
大半はやはり両親と妹。
会社に着いて少し確認をする。
そのなかでヒナコからの連絡が来ていた。
“来週金曜日にそっちに仕事で行くから泊めて”
とスタンプと共に送られてきた。
OKのスタンプをひとまず送った。
今日も付箋にタスクを書いて、メールチェックから仕事が始まる。
少しずつ社内が賑やかになってくる。
午前中の仕事が押してしまい、少し遅い昼ごはんを食べている。
自動販売機でお茶買い、持ってきたおにぎりとお惣菜のタッパーをレンジにかけ、休憩室の窓際の席に座る。
LINEを見るとヒナコから“ユウも一緒にご飯に行かない?”と連絡が来ていた。
ユウはヒナコと共通の友達。
大学生の頃はよく3人でいることが多かった。
私とヒナコは高校から友人になり、県外の同じ大学に進学した。
ヒナコは背が高く細身で目を引く美人だ。
物事をはっきり言うタイプだが物腰が柔らかく社交的で、女子校だったためかなりモテていた。
たまたま高校で1年生のときに同じクラスになり、席が近かった。
ヒナコから話しかけてくれて今に至る。
大学の学部は違っていたが、バイト先は同じだった。
ヒナコは、あまり人と関わらないようにしていた私に普通に接してくれていた。
高校に入った頃の私はあまり積極的に人に話しかけず、話しかけられていたら当たり障りのない言葉を選び、表面上は楽しそうにしていた。
「今日、学校帰りにカラオケ行こう。」
と、前の席の子から話しかけられた。
まだ、クラスのグループが曖昧な頃で、居心地の悪さもあった。
その子は続けて、
「中学の時の男友達もいるんだけど、行かない?」
と言った。
正直行きたいと思えなかったけど、なんとなくまわりのみんなで行く感じに押されて、
「…じゃあ…。」
と、頷こうとしていた。
「高梨さん、先に私と部活見学に行こうって約束してたのに…」
と、ヒナコが明るく話に割って入った。
突然で驚いたがヒナコは構わず、
「みんな、ごめんね。」
と、私の肩にポンポンと手を置いた。
ヒナコとはあいさつをまだ交わす程度だったけど、綺麗で明るい空気を感じさせる彼女を気にはなっていた。
彼女の言葉でその場は収まり、前の席の子は“また今度ね。”と話を終えてくれた。
実際、その日はヒナコと部活見学に行った。
「強引にごめんね。なんかカラオケとか苦手そうだったから、違ってたらごめん。」
と、放課後移動しながらヒナコは言った。
スラッと伸びた手足と綺麗な背筋の後ろ姿に、一瞬見とれた。
「部活見学もイヤなら無理しなくていいよ。」
と、私の方に振り向きヒナコは笑っていた。
「助かったよ、ありがとう。津山さん。」
私はようやく言えた感謝に安堵した。