罪悪感の始まり(5)
朝が始まり、母が起きて洗濯物を干すためにバタバタしているのが聞こえた。
私もそろそろ起きて部屋から出ようと思った。
部屋を出るといつもの時間が当たり前のように過ぎている。
リビングに行くと、父もうるさくならないようにモップで床を拭いていた。
妹はまだ起きていなかったが、母と家を出るのでそろそろ起こさなければと思った。
妹を起こし、2人で洗面所に向かい顔を洗う。
その後、食パンをトースターに2枚入れ、冷蔵庫から牛乳を出してコップに注ぐ。
テーブルには目玉焼きと果物がラップに包まれて置かれている。
妹と二人でご飯を食べ、食べ終えたら食器を洗い、妹の準備を手伝う。
それが終わったら、私も制服に着替えて家族の中で一番早く外に出る。
父も母も妹もそこからあまり時間がたたないうちに家をあとにする。
私のいつもと変わらない日常が始まる。
近所の人がすれ違う度に挨拶をし、私もそれを返していく。
途中、友達と合流して賑やかになる。
山と畑や田んぼの緑色が広がる。
あまりにも変わらない時間に、ついて行けなさそうになった。
表面上は何にも変わってないのだと思った。
このまま誰にも気がつかれなければ元に戻ると信じたかった。
それから何日も過ぎたが、変わらない日々を過ごした。
梅雨も明け、夏休みに入った。
あれから1ヶ月過ぎると普通に過ごせる時間が出来た。
祖母の家に行って宿題したり、一緒にご飯を作ったり、友達と遊びに行ったりした。
家でも父も母も妹も変わらなかった。
夏休みでもあまり変わらない時間に起きて、父と母と妹を見送って、しばらくしてから鍵をかけて祖母の家に行く。
そんな日が続いていた。
その日はいつも通りに3人を見送って、部屋で宿題を手提げカバンに詰め、そろそろ祖母の家に行こうとしていた。
玄関が開く音がしたので、家族の誰かが何か忘れ物をしたりして帰って来たのかな…ぐらいでいた。
足音は私の部屋で止まり、部屋のドアが開いた。
「今日はまだ居たんだ…。」
いとこのエイタが立っていた。
急な出来事で驚いたが、今から祖母の家に行くことを伝えた。
私より5つ年上の父の兄の子供で、小さい頃は祖母の家によく来ていた。
わりと調子がよくわがままな性格があまり好きではなかった。
出かけるから帰るように伝えたたが、動いてくれなかった。私が強引に部屋を出ようとすると、腕を捕まれ倒された。
そこからは断片的にしか覚えていない。
「この事を誰にも言うなよ。」
エイタはそう言って部屋を出た。
私は脱がされた服を拾って、洗濯機に入れた。
他の服を着たが、外には出れなかった。
あの時もエイタだったんだと思った。