表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/81

罪悪感の始まり(4)

家はいつもとかわりなく時間が過ぎた。


父が大好きな妹はまだテーブルに座り必死に今日の出来事を話していて、父と母はそれを聞きながら食事をしている。

時折、笑い声がしたりしていて、少しいたたまれなくなってきて、


「お風呂に入るね。」

と、リビングを出ていった。


遠くでまた笑い声がしている。


誰にも話してはいけない気がして、忘れるようにしようと思った。

気持ち悪くて、何度も何度も身体を洗った。


イヤな感覚はまだ微かにあるけれど、そもそも何故そんなことをされたのかもわからなかった。


いけないことをされている認識はあるけれど、それをどう説明すれば良いのかわからなかったし、何よりそれを他の人に知られるのはイヤだと思った。


あの時、どうすれば良かったのだろうか。


「お風呂、上がったよ。」

大きな声でリビングに叫んだ。


妹が楽しくアニメの歌を歌っているのがわかった。

ガチャガチャと食器の音がした。おそらく食事を終えて、母が片付けをしているのだと思った。


父と妹がお風呂の準備をして、こちらに向かう前に自分の部屋に戻った。


1人で部屋にこもり気持ちが追い付かず、もて余していた。

明日から祖母の家に行っても大丈夫なのか不安になった。


誰があんな事をしたのだろう。


ふと、あの時の感覚がよみがえり気持ち悪くなる。

捕まれた足に残る感覚や雨上がり特有の部屋の湿度、外からする栗の花の匂い。

上手く説明が出来ない不安や恐怖に襲われる。


途中、母が“桃食べる?”と私に向かって部屋の外から話しかけた。


「もう眠いからいらない。」


私は早く忘れようと電気を消してベッドに寝転んだ。

暗い部屋は恐ろしく思えた。

見えないことの不安から起き上がって、また電気をつけた。


このまま寝てしまおう。

早く忘れよう。


布団の中に丸まったが、なかなか眠れずにいた。

時々眠りに落ちるのだが、不安で目が覚めた。

短い睡眠を繰り返す。


時計を見ると5時前で少しずつ外も明るくなっていた。

カラスの鳴き声がした。

あまり寝ることが出来ず、身体が重い。


それでもいつも通りにしていないと、まわりにヘンに思われてしまうのが怖いと思った。

出来るだけ今まで通りに過ごそう。

祖母の家にも祖母がいる時にいれば良い。


多く集まっていたいとこ達は私が4年生になる頃には、中学生や高校生になり、祖母の家に集まらなくなっていた。


1人でさえいなければ大丈夫だと思った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ