熱中症
私柚月はいつも男友達と一緒に過ごしている。
なんとかの姫みたいな立ち位置じゃなく、完全な男扱いだ。
友達の彼女達とも私は仲が良く“柚となら”と懐が深い女性達である。
いつも誰かの部屋に夜集まり、夜通し遊ぶがお決まりだ。
主にくるのが、えいた・かの・ひろ・たく、の4人で偶に誰かの彼女が混じるという感じ。
私は多分、えいたが好きだ。
でも好きの感情があまり分からない私はお子様だと思う。
かの・ひろ・たくは彼女の話をする時凄くキラキラしていて、それを羨ましく思う自分がいる。
今日は私の部屋に集まることになっている。
決まった時間はない。
なんとなくな時間でみんなポツポツと集まってくる。
いつ誰がくるか分からない為、鍵を開けっぱなしで私はベットの上でゴロゴロと転がった。
まだ6月と言うのに真夏並みに暑い。
暑いがなんとなくエアコンをつけたくなくて、汗をかきながら我慢比べをしている。
我慢比べをしているとドアが開き、えいたがやってきた。
「うわあっちー。この部屋軽いサウナじゃん！」
部屋に躊躇いもなく入ってきて開口一番がこれ。
「いらっしゃい」
と私はえいたに向かって話、少し遠目のテーブルの上にあるエアコンのリモコンに向かって歩き出すと一瞬くらっと視界が揺れた。
「おい大丈夫かよ」
えいたは、倒れかけた私を抱き止めそのままベッドに戻す。
その後エアコンのリモコンを手に取りスイッチを入れエアコンの下で服をぱたぱたとさせて身体を冷やしている。
「お前それ完全に熱中症だろう」
ぱたぱたする手を止めずに私に言った。
「熱中症…」
ベットに横になり天井を仰ぎながら、熱中症になるという事を考えていなかった自分に呆れて呟く。
勝手知ったるなんとやら。
えいたは自分の家の様に冷蔵庫からペットボトルを出して私に渡そうとした。
私はその手を掴み自分の方へ引く。
バランスを崩して私の方へ倒れてくるえいたに向かい私は
「ねっちゅうしょう」
と言ってえいたの唇を奪った。
私から唇を奪われたえいたは熱中症になりかけている私よりも赤いと思う。
混乱しながら私を見ているえいたを私は、身体を起こしケラケラ笑ってからかった。
エアコンの風で火照っていた身体が冷え、そこで自分に水分が足りない事に気づきベッドに転がったペットボトルを飲もうと手を伸ばすと、さっとえいたに横から掻っ攫われた。
新しいペットボトルのキャップを外す音が部屋に響く。
喉が渇いている私はえいたが中の水を口に含んでいくのを、呆然と見ているしかなかった。
呆然と見ているとえいたの顔が近づき私の口に冷たい水が流れ込んでくる。
「！！！！？」
水をこくんと飲み込んだ口から声にならない声が漏れる
それを見てえいたは、くくくと笑いながら
「お返しだ」
と言いながら私の真似をして
「ねっちゅうしょう」
と言って私の唇を奪った。
こいつ完全に意味を理解している…
ねっちゅうしょう＝ねっちゅうしよう
他の奴らがいつくるか分からない。
来るまでに真っ赤であろう私とえいたの顔を冷やすのに私達はエアコンの下で涼み始めた。
