ミラ17歳春
イース視点
「ゾーマさんイースです聞こえますか?」
イースはスヤジ邸の自室で独り言のように呟く。
『久しぶりだな聞こえてるぞ。何かあったのか?』
「ゾーマさんがくれたチャームのおかげで好きな人と結婚出来る事になりました。ありがとうございました」
『良かったな。おめでとう』
「ミューさんの行方はうちの商会で探してみましたが手掛かり無しです」
『そうか…そのうちそちらに出向いて探してみるさ』
「ゾーマさんその時はグランエース商会のイースを頼って下さい。力になります」
『その時は頼む』
「ありがとうございました。何か分かればまた連絡しますね」
『了解した。またな』
「はぁ…ゾーマさんに何か御礼したかったけどミューさんは見つからないし…」
ミラ視点
「今日はリーフ先輩のお葬式でしたが一転して明日はイースの結婚式ですわ。お母様準備は宜しくて?」
「リーフ嬢は残念な事をしたな。学園の筆頭を務めるほど強かったらしいが…私もジーノも準備万端だよ。イースも妊娠安定期に入ったからやっと結婚式が出来るな」
「リーフ嬢はあの若さで百人隊長だからな…それにしても見た目だけじゃなくて性格まで子供っぽいイースが結婚とはね…しかも妊娠してるって驚きだな」
「スヤジ子爵も隅に置けませんわ…イースに興味無い振りしてちゃっかり子供作っているのですから…」
「私もイースと同年代の婚約者が現れたら身を引くと聞いていたから驚いたよ」
「スヤジ子爵は分別無い大人だったようですわ」
「イースも好いているし年齢はたいした問題ではないよ。政略結婚なら大人と幼児の結婚も有り得るからね」
「イースが幼児でなくて良かったですわ。スヤジ子爵は幼児相手でも怪しいですわ」
「ミラさすがに幼児だったら子供は出来ていないよ」
翌日
ジーノは燕尾服を着てソワソワしている。
「おかしくないか?」
「カッコイイですわ」
「お父様お母様お久しぶりでございますわ」
イースが待機部屋に入ってきた。
「イースお久しぶりですわ。少し縮みましたか?」
「ミラが伸びたんだよ!」
イースはミラの背中をバンバン叩いている
「うふふ冗談ですわ。イース言葉が戻ってますわ」
「ミラのせーじゃん…お父様失礼致しましたわ」
「もうこのじゃれ合いも見られなくなるのか…」
「今生の別れでもなかろう。それでは私とミラは席に着いて待ってるからジーノ頼んだぞ」
「任せとけ!」
しばらく後
「花嫁入場です」
楽団の音楽が鳴りイースが入場して来る。花嫁衣装のイースはとても可愛かった。まるでベールガールだ。ジーノがイースをスヤジ子爵に渡して席に戻ってくる。誓の言葉結婚腕輪交換(この世界は相手の瞳の色と同じ色石を入れた腕輪を交換します)そして誓のキスが行われる。ミラの前には豪華な料理が並ぶ。
「美味しいですわ」
牛ヒレ肉のステーキをもぐもぐ食べるミラ。
ステーキは小ぶりだが塩コショウをして両側を軽く焼いてミディアムレアに仕上げてある。柔らかいステーキにナイフを入れると軽くすっと切れる。口に入れると牛肉の味がガツンと来て噛むと肉汁が口内に溢れ出す。脂が甘いとはこの事だろう。かなり高級なお肉のようだ。付け合せの人参グラッセは綺麗にオリーブ剥きされていて砂糖とバターを入れた水で人参を弱火でコトコト。最後に強火で照りを出せばほんのり甘くてバターが香る美味しい人参グラッセが完成だ。
そうこうしているとイースとスヤジ子爵がワインを配りに来た。
「イース綺麗ですわ」
「ありがとうございますわ」
「イース幸せにな」
「スヤジ子爵イースを頼んだ」
「任せてくれ。全力で幸せにしよう」
イースに注いでもらった高級ワインを飲み楽しい時を過ごした。