その頃イースは?2☆
「ここは…」
イースは簡素な小屋の中で目が覚めた。
周りを見渡すが誰も居ない。
「逃げなきゃ」
イースは身体を起こそうとするが…
「えぇぇぇぇぇー!」
イースの両手両足は金属の塊に埋まっていた。
「うぅ…重!」
両手は後ろ手で1つにまとめられて肘の上まで、両足も同じく膝の上まで金属の塊に刺さっていた。非力なイースでは身動きすら出来ず金属の塊は手足にピッタリフィットしている為指1本動かすことが出来なかった。
「1回逃げたからってここまでする事ないじゃない!!!」
イースは男に対する怒りがふつふつと湧いてきた。
「服は綺麗じゃないけどドロドロって訳でもないねー」
泥沼に嵌った後水球で洗われたのでドロドロではなくなっていたしイースが気絶した後風魔法で乾かしたのでそれなりに乾いている。
「うへぇ…寝返りも打てないや…あの男が帰って来るまで何も出来ないよ…」
ぐぅー
「はぁ…お腹空いたー」
「今日は泳がなくて良かったか?」
ゾーマが入ってくる。
「こんな状態で動ける訳ないじゃん!」
イースは頭を振って怒る
「泳ぎたいなら連れてってやるが?」
「要らないよ!てか起こしてよ!重くて全然動けないよ!」
「そうだな、君と話がしたかったんだ。椅子に座る感じで良いか?」
「なんでもいいよ…」
ゾーマはイースの首根っこをひょいと持ち上げる
「痛たた千切れる!千切れるって!」
「創造錬金!」
ゾーマが魔法を使うとイースの手足から金属が増えていき椅子のような形になった。
ゴス!
ゾーマが手を離すとボーリングの玉を落としたような音が響いた。
「痛いって!優しくしろー!」
「すまん…」
金属の椅子に手足が埋まったような状態のイース。その前に机と椅子を作って置くゾーマ。
ゾーマは椅子に座ると
「さすがに3日も食べてないとお腹が空いたろう。食べるといい」
皿に乗せられたおにぎりを置く。
「おにぎり!前の世界で食べて…って食べれるかー!犬じゃないんだよー!だいたい届かないし!」
イースは前かがみになろうとするが口はおにぎりまで届かない。
「食べさせてやろう」
ゾーマはイースの口元におにぎりを持っていく。イースはお腹が空いているのでもぐもぐ食べる。おにぎりはまだ暖かくふわっと握られていてほんのり塩味がする。海苔も今巻いたのでは?と思うほどパリッとしていた。もぐもぐしているとほんのり甘みが出てとても美味しい。具は強めに塩を打った鮭でおにぎりのほんのり塩味にとてもあう。メダリスト国にはお米も海苔も無いので懐かしさに涙が出た。水も飲ませてもらって落ち着いたようだ。
「…トイレ…」
イースが小さな声で言う
「ん?」
「トイレ!」
「そのまましていいぞ?オルハリコンはおしっこかけた位では錆びん」
「オルハリコン!これ一体いくらになるの?貰ったら大金持ちに…」
「欲しいなら帰す時そのままにしておいてやろうか?」
「一生このままは嫌です…帰る時外して下さい…」
「そうか…では話をしよう。俺は海野蔵摩日本人だ。お前の予想通り自衛隊員で妹の美羽を探している」
「私の名前はイース。シェンタ商会の娘よ」
「日本での名前は?」
「木村千恵」
「日本人に見えないのだがハーフか?」
「私は日本で1回死んでこの世界で産まれたんだよ?」
「俺とは違うんだな。俺は任務中に身体が光ってこの世界に来た。魔王に召喚されたんだ」
「妹さんも一緒に?」
「いや、妹は俺より前に行方不明になった。こちらの世界に呼ばれたのかもしれんから探しているのだ」
「そっか…会えるといいね…」
「ありがとう」
「それよりもおしっこ!漏れるって!逃げないからオルハリコンに埋めるのやめて!」
「逃げると野良魔物に食われるから逃げられないようにしたんだが?」
「魔物に食べられる!?」
「まぁいい出してやるからトイレして来い」
ゾーマはイースの首根っこを掴む
「猫じゃないんだからその持ち方やめて!」
ゾーマは胴体を持って持ち上げる。
「おっぱい触ってる!変態!」
「おっぱいなんか何処にあるんだ?」
「バカー!」
気にしている事を言われてイースは顔を真っ赤にして怒る。ずるっとイースの手足がオルハリコンの塊から抜ける。イースはドアの前でモジモジしている。
「行かんのか?」
「着いてきてください」
イースは恥ずかしそうに言う。
「ん?」
「着いてきて!魔物に食べられたくない!」
「わかった」
ゾーマはイースと外に出る。イースはソワソワしている。
「どうした?しないのか?」
「あなた本当に日本人?目の前に居たらできないでしょ!」
「美羽なら気にせんのだが…」
「私は妹じゃないから気になるんだよ!」
「わかった。何かあったら叫べよ?」
ゾーマは少し離れた所で後ろを向いた。
「スッキリした…」
イースはゾーマの所にトコトコ歩いて戻る。