その頃イースは?☆
「うっぷ…助けてー」
イースは沼に首まで沈んでいた。
1時間前
イースは簡素な小屋の中で目が覚めた。
「ここは…」
周りを見回すが誰も居ない。
「逃げなきゃ」
起き上がろうとしたが手が後ろで繋がっているようだ。
「手が…硬い…手枷付けられてるみたい…」
後ろ手に手錠を掛けられたイースは身体全体を使って起き上がる。手錠を外そうと藻掻く。
「んー…あぁぁぁーダメだ…外れないや。足は縛られてないからこのまま逃げよう」
イースは壁に寄りかかって立ち上がり小屋の入り口に行く。
「んん…後ちょっと…」
前屈みになり手を上に上げてドアノブをなんとか掴む。鍵は掛かってなかった。外へ出たが雨が降った後のようで足元はドロドロだ。泥をはね飛ばしながら走るイース。
「ここ何処だろう?」
見覚えの無い風景に不安になるイース。
「あっ…」
泥に足を取られるイース。泥だらけの地面のせいで沼との境目が分からなかったのだ。
「ヤバ…んー…足が抜けないよー」
走っていた為膝までズボッと沈んでしまった。
「あーん…手が使えれば抜け出せるのにー」
必死に抜け出そうともがいていたが転びそうになり踏ん張る。さらに沈むの繰り返しだった。もがいているうちに腰まで沈んでしまった。
「誰かー助けてー沼から出られないのー」
大声で叫ぶが返事は無い。
「誰かー居ないのー」
イースは叫び続けるがどんどん沈んでいく。顔を上に向け泥が口に入らないよう必死だ。
「うっぷ…助けてー」
「小屋に居ないと思ったら泳ぎたかったのか?」
「そんな訳ないでしょー助けてよー」
ゾーマは沼の上を平然と歩いていきイースの首根っこを捕まえると沼から引き抜いてぶら下げる。
「もうちょっと優しく助けてくれてもいいじゃん!」
「わかった。やり直そう」
ゾーマは手を離しイースの頭を押して沼に沈めようとする。
「ストップ!ストップ!もう一回沈めないで!」
「なんだ?優しく助けなくて良いのか?」
「もういいから沼に沈めないで」
イースは半泣きだ。ゾーマは再度首根っこを持ってぶら下げると沼から出る。手を離しイースを落とすと…
「いったぁい!優しくしてって言ってるでしょ!」
「まぁいい気にするな」
「気にするよ!」
「手が汚れてしまったな」
ゾーマは魔法で水球を出すと手を洗いはじめる。
「お前も随分汚れたな」
ゾーマは大きな水球を出して地面に座り込むイースにジャボンと被せる。溺れるイース。男は魔力で水球内の水を循環させてぐるぐる回す。
(溺れる!息が…)
イースは気を失ってしまった。




