表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】小説&コミック2巻発売決定|黒衣の執行人は全てを刈り取る~謎ジョブ《執行人》は悪人のスキルを無限に徴収できる最強ジョブでした。【剣聖】も【勇者】も【聖者】も弱者を虐げるなら全て敵です  作者: 天池のぞむ
第2部5章 復讐代行屋、アデル・ヴァンダール

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/91

第88話【SIDE:シシリー】願いの果てにあるもの①


 久しぶりに、夢を見た。


 辺りが黒く塗りつぶされているのは夢だからなのか、それとも私にとって苦い記憶だからなのか。それは分からない。


 ただ虚空の中に幼い頃の自分がいて、私はそれを見下ろしている。


 夢の中の私はまだ本当に幼くて、そして無力だった。


 ――お父さんっ! お母さんっ!


 幼い私が叫び声を上げる。

 その声は虚しく反響するばかりで、何の解決にもならなかった。


 目の前には二つの人影が転がっている。それは、絶命した父と母だった。


 ――フフフ。これでまた《魔晶石》が手に入る。


 倒れている父と母の傍らで、白髪の男が心底嬉しそうに笑っている。

 へばりつくような、他人の心を抉るような、そんな笑い。


 白髪の男は私の両親の亡骸に手を当てると、そこから黒い石のようなものを取り出す。

 その石は淡い光を帯びていて、不思議な存在感を感じさせた。


 そして、白髪の男が私を一瞥する。


 ――ふっ。まだジョブを授かっていない子供か。なら、用は無いね。


 白髪の男はそれだけ呟くと、黒い石だけを手にして私の元から去っていった。


 ――あ……あ……。


 夢の中の私はすがるようにして父と母の元に膝をつく。


 ――あぁあああああああああああ!


 もう一人の自分が絶叫する声を聞きながら、最悪な感情と共に私はまどろみから覚めていった。


   ***


「千年経っても、忘れられないものね……」


 目を覚まして、ぐっしょりと寝汗をかいているのに気付く。

 今見た夢……いや、昔の記憶のせいだった。


「……」


 私は無言で体を起こし、汗で張り付いた衣服を脱ぎ捨てていく。


 幸いにも湖畔近くの木陰で睡眠をとっていたため、水場には困らなかった。

 湖の中に足を踏み入れ、細い手足を水に付けていく。


 魔族は歳をとっても見た目が変わらないとされているが、私の場合、幼い外見が当時から変わっていないのは呪いのようなものではないかと思ってしまう。


 湖水の冷たさに震えるが、沈んだ気持ちごと洗い流してくれるようで、今はその冷たさが逆にありがたかった。


 体を清めた後で衣類を羽織り、最後に自分の肩幅よりも広い魔女帽子を被る。


 亡くなった母が遺してくれた、私にとって大切な形見だった。


「さて、これからどうしましょうか」


 水を浴びたことで幾ばくかは気持ちが晴れたものの、依然として心は重いままだ。


 夢の中の私のように泣き叫ぶことができたなら、少しは楽になるかもしれないのにと、仕方のないことを考える。


 ――俺にとって、お前が魔族だからとかは関係ないからな。


 不意に、彼の言葉が胸の内に浮かぶ。


 始めは利用しようとして近づいたつもりだった。


 私の目的のために役に立ってくれればいいと、そう思っていたはずだった。


 でも……。


 彼にすがることができたのなら、私のこの心の靄も晴れるのだろうか? 助けてと叫べば、彼は手を差し伸べてくれるのだろうか?


「……何を馬鹿なことを。もしかして、本当に惚れちゃったのかしらね」


 そんな言葉を呟いて、自嘲気味に笑う。


 ヴァリアスを殺したいというのはあくまで私個人の、身勝手な復讐だ。無関係の彼を頼って良いものではない。


 そう心に蓋をして、私は視線を上げる。


 私が先程まで水浴びをしていた湖の先には、巨大な滝があった。


 遠目に見ても綺麗な滝だ。水の王国ルーンガイアの地に相応しいなと、そんな印象を抱く。


「……?」


 不意に私は何かの気配を感じ取り、その滝の終点に目を向けた。


 ――魔獣かしら? でも、それとは何か違う感じがしたような……。


 私の持つ【錬金術師】は魔力の流れを操作し、物質の持つ性質を変化させるジョブだ。

 普段から扱っていることもあってか、微細なものでも魔力の流れには敏感だという自負があった。


 そんな私の、第六感めいた感覚が告げる。


 何かがあの滝の元にあると。


 心がささくれ立ったような、そんなざわつきを覚えた私は、その巨大な滝の方へと足を進めることにした。


「さっき気配を感じたのはこの辺りね」


 私は滝の元までやって来て、上を見上げる。


 大きな滝だ。幅も広く、滝の始点は薄い雲がかかるほどに高い。


 しかし、それ以外には特段おかしなところは無いように思える。


「やっぱり、気のせいだったかしら?」


 呟いて元いた場所に戻ろうとしたところ、また何かの気配を感じる。


 ――滝の方から? いや違う。もっとその奥から……。


 私は膨大な水量が降り注ぐ滝に向き直った。

 そして、地に手を付けてゴーレムを召喚し、滝の水を遮るよう命令する。


「こ、これは……」


 そこにあったのは、岸壁をくり抜いたような穴。奥へと続く洞窟だった。


 この奥に何かがある。


 私は予感めいたものを感じ、召喚したゴーレムと共に中へと進んでいく。


 そうして歩き、十分ほどが経っただろうか?


「おやおや、どうやら僕の隠れ家に鼠が侵入したみたいだね」


 開けた空間にいたその男に、私は思わず目を見開く。

 その声とその姿に見覚えがあったからだ。


 いや、見覚えがあるどころの話ではない。


 そこに姿を現したのは、私が追い求めていた白髪の魔族だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▼▼▼ランキング1位の新作です!ぜひお楽しみください▼▼▼

追放された田舎農家のオッサン、うっかり最強ドラゴンを倒す様子を配信し伝説となる~一緒に配信をしたいと美少女たちが押しかけてきて、スローライフを許してくれません~




本作の小説第②巻が9/5発売です! 新規エピソードに加えて大幅に加筆・修正しておりますのでぜひお楽しみください!
※画像を押すと詳細ページに移動します

黒衣の執行人は全てを刈り取る2





本作の小説第①巻はこちらです!
※画像を押すと詳細ページに移動します

黒衣の執行人は全てを刈り取る

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ