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第85話 魔族少女シシリーの告白


「流石ね、執行人サン。惚れ惚れしちゃった」


 アベンジオを縛り付けた後で、シシリーが魔女帽子を被り直しながらそんなことを言った。

 どこか恍惚とした表情を浮かべているが、恐らくまた楽しんでいるだけだろう。


「お前な、またからかってるつもりか?」

「ふふ、どうかしらね? まあ、それはそれとして――」


 掴みどころなく、するりと抜け出すように。シシリーは突っ伏していた盗賊団員の腰からナイフを抜くと、ぐったりとしているアベンジオに歩み寄る。


「さて、これで《魔晶石》のことを話してくれる気になったかしら?」

「……話すつもりは無いと言ったら?」

「命は大事にすべきよ」


 シシリーは短く呟き、手にしていたナイフを目の前に差し出して見せた。


「わ、分かった……。話す、話すさ」

「いい心がけね」


 シシリーはにこやかに笑っていたが、アベンジオにとっては逆に恐怖だろう。顔は引きつり、少しでもシシリーから距離を取ろうともがいていた。


「それじゃあ、まずは貴方にその《魔晶石》を授けたのは誰?」

白髪(はくはつ)の、長身の男だった。けっこう痩せていたな」

「……もっと詳しく」

「ついひと月ほど前のことだ。ここの前にアジトとしていた場所に、その男がやって来たんだ。いい話があるってな。最初はどうにも怪しいやつだと思ったんだが」

「それで?」

「お、おい、あまりナイフを近づけるな。嬢ちゃん、目が怖えぞ」

「いいから、早く話しなさい」

「そ、その男は黒いローブを纏っていた。この《魔晶石》を渡して使い方を教えてくれたんだが、一方的だったからな。俺から連絡を取る方法もねえし、どこにいるのかも分からねえ」


 いつぞやの悪徳領主にやったようにヘルワームを召喚することも考えたが、その必要はなさそうだ。

 シシリーにナイフで脅されているためか、アベンジオは青白い顔で質問に答えていた。


 シシリーが何かを考え込むようにして黙っていたので、次は俺が質問を飛ばす。


「どうしてお前みたいな盗賊にその石を渡したんだ? 《魔晶石》はどう考えても普通の石じゃないだろう?」

「そのローブの男の口ぶりでは、いくらでも作れるから自由に使えって感じだったぜ。俺が王家に恨みを募らせていることも知っていて『そのために使え』とか言ってたな」

「……その男の目的は?」

「いや、それは俺にも分からねえ。俺の目的を知って声をかけるくらいだから、ルーンガイアの王家に恨みを持っている人物なんじゃねえか?」


 確かに、そう考えるのが自然だが……。


「……」


 シシリーがアベンジオの言葉を聞いて神妙な面持ちを浮かべているのが気になったが、俺は続けてアベンジオに問いかける。


「その男の名前は?」

「……ヴァリアス」


 俺の問いに答えたのは、アベンジオではなくシシリーだった。


「ヴァリアス・ランダーク。違う?」

「あ、ああ。その通りだ。何だ嬢ちゃん、その男を知って――」


 突然、シシリーが手にしていたナイフを振り下ろす。それはアベンジオの顔のすぐ横を通過し、壁に突き刺さった。


「な、な……」

「情報提供、感謝するわ。やっぱり、間違っていなかった」


 シシリーは告げながら、アベンジオが指にはめていた魔晶石を回収する。

 そしてそのまま踵を返し、入り口の方へと向かっていく。


「おい、待てシシリー。どうしたんだ?」


 俺はシシリーを追いかけ、盗賊団のアジトから出たところで肩を掴んだ。


「ゴメンね、執行人さん。ちょっと取り乱しちゃった」

「いや、それは良いが……。知っているのか? ヴァリアスって奴のこと」

「ええ。昔からね」

「昔から? ってことは」

「ヴァリアスは私と同じ、魔族よ」


 シシリーが振り返る。


 それまでの余裕のある感じは消え、至って真剣な表情を浮かべていた。


「それで、お前とヴァリアスとの間にはどういう関係が?」

「……」


 シシリーがどこか遠くを見るような目をして、胸に手を当てる。そして静かに語りだした。


「私は、家族をヴァリアスに殺されたの」

「――っ」


 唐突な告白に、思わず息を呑む。


「同族を殺したっていうのか? 何故ヴァリアスはそんなことを……」

「コレを作るためよ」


 言って、シシリーは手にしていた《魔晶石》を示した。


「この《魔晶石》っていうのはね、私たち魔族の力を石に宿したものなの。正確には、『魔族の死体からジョブの力を抽出したもの』ね……」

「……」

「ヴァリアスは私たち魔族の中でも、有能な科学者だった。そして、いくつもの発明を生み出し、魔族に繁栄をもたらした。あの地下水道にいたガーディアンキマイラもヴァリアスの発明の一つよ」


 シシリーの言葉で、俺は《救済の使徒》のアジトで戦った機械仕掛けの魔獣のことを思い出す。


 確かに、あの時シシリーは古代の遺物だと言っていたが、それがヴァリアスという男が生み出したものらしい。


「ヴァリアスはある時、魔族の死体からジョブの力を抽出する技術を発見した。当時の魔族の中では、寿命を迎えた者からのみ力を抽出することが認められ、ヴァリアスも最初はそれに従っていたわ。けれどある時、ヴァリアスは凶行に走ったの」


 シシリーは語る。


 ヴァリアスはシシリーの家族のみならず、生きている魔族を何人も殺め、大量の《魔晶石》を作り出したと。ヴァリアスが何故そのような真似をするようになったのかは分からないが、結果として大勢の魔族が手にかけられたと。


 俺はシシリーの話を聞くうちに、いつしか拳を握っていた。


「ヴァリアスは魔族の中でも危険因子であると認定され、極秘裏に封印されたわ。それでも、咎めを受ける前、ヴァリアスは何一つ省みる素振りを見せなかったらしいの。ただ《魔晶石》は素晴らしい技術なのだと誇って」


 常軌を逸した、猟奇的な人物。

 それが、ヴァリアス・ランダークという男に抱いた印象だった。


 シシリーが儚く笑い、それが朝日に照らされる。

 そのまま光に溶けて消えてしまうのではないかという馬鹿な幻想を浮かべたが、当然そんなことはなく、ただシシリーはそこに立っている。


「封印されていたヴァリアスが、何故今になって動き出したのかは分からない。何故《魔晶石》をばら撒いているのかも。でも、いずれにせよヴァリアスは何かのために暗躍している。きっと、多くの《魔晶石》を手に、ね……」

「それは、脅威だな」

「ええ。でも、私にとってそんなことはどうでもいい」

「……」

「盗賊団のアジトに案内してくれたら、私の目的を教えるって話だったわね」

「ああ」


 俺が頷くと、シシリーは僅かに目を細めて話し始める。


「私は、ヴァリアスの行方を追いたい。そして――」


 シシリーは一度言葉を切って、そして続けた。


「ヴァリアス・ランダークをこの手で殺したい。例え、差し違えたとしても、ね」



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