第70話 決戦、ガーディアンキマイラ
ルーンガイア王国、地下水道の最奥部にて。
俺たちは《救済の使徒》が喚び出した機械獣、ガーディアンキマイラと対峙する。
「金属製の外殻……。生半可な攻撃は通りそうにないですね、アデル様」
「ああ。どんな攻撃を仕掛けてくるか分からない。慎重に対応しよう」
俺の言葉にメイア、テティ、クレスが頷き、臨戦態勢を取る。
――離脱したシシリーによれば、あれは古代の遺物ということだが……。なぜ《救済の使徒》があんなものを保持していたのかは後回しだな。
『侵入者ヲ探知シマシタ。殲滅行動ヲ実行シマス――』
赤い瞳が明滅し、無機質な声が響き渡る。
直後、ガーディアンキマイラは四つの足で石畳を蹴り、こちらに跳躍してきた。
「――っ。疾い!」
メイアがガーディアンキマイラの攻撃を宙返りで回避しつつ、一本の短剣を投げつける。
が、それは突き刺さること無く、鈍い金属音を立てて弾かれるだけだった。
「やはり堅いですね……。それなら――!」
メイアは身に纏った給仕服を翻し、スカートの中から新たに抜いた短剣を手にガーディアンキマイラの背へと着地する。
と同時、鱗のような外殻の隙間へと剣を突き入れた。
「やった……!?」
「いや――」
テティが声を上げ、ガーディアンキマイラは一瞬怯んだ様子を見せるが、すぐに体を振り回して背に乗ったメイアを剥がそうとする。
「くっ――」
俺は疾駆し、態勢を崩して地面に叩きつけられそうになっていたメイアを空中で抱える。
そこに追撃を仕掛けようとするガーディアンキマイラだったが、それはテティとクレスによって阻止された。
「やぁああっ!」
「ハァッ――!」
テティは【神狼】のジョブ能力により強化した拳で、クレスは刺突剣で外殻の隙間を攻撃。
どちらもガーディアンキマイラを仕留めるまでは至らないものの、追撃を阻むことに成功した。
俺はその隙に距離を取り、腕の中に抱えたメイアに声をかける。
「メイア、無事か?」
「え、ええ。でも色々と刺激が強いかもしれないです……」
む……。咄嗟のことだったとはいえちょっと強く抱きすぎたか。
俺はメイアをそっと降ろすが、今度は何故か少し残念そうな顔をされた。
「しかし、厄介だな。《亜空間操作魔法》なら仕留められるだろうが、あれだけの速さで動き回られると当てること自体が難しい」
「ええ、アデル様のイガリマなら斬れるかもしれませんが、執行係数を持たない機械相手では喚び出せないでしょうし……」
先程の攻防で分かったのは物理的な攻撃では効き目が薄いということだ。
外殻の隙間から剣を突き刺しても決定打にはなっていない。
それなら――。
距離を取った俺たちに対し、ガーディアンキマイラは長い尾を振り払ってきた。
その攻撃を跳躍して回避しつつ、俺は瞬時に青白い文字列を表示させる。
「神をも束縛する鎖、発動――」
空中から現れた黄金色の鉄鎖がガーディアンキマイラに絡みつき、その動きを封じる。
ガーディアンキマイラは逃れようともがくが、金属同士の擦れる音が響くだけだ。
俺は間髪入れず別の能力の使用を試みる。
――物理が駄目なら、魔法だ。
「紫電召雷――」
――グルキュッ!?
精霊を操るジョブ能力で喚び出した紫色の電撃が体躯を伝い、ガーディアンキマイラは激しくのたうち回る。
そして音が止むと共に、ガーディアンキマイラは石畳の地面へと倒れ込んだ。
『駆動機関ニテ致命的ナ損傷ガ発生シマシタ。機能ヲ停止シマス――』
そんな無機質な音が辺りに響き、ガーディアンキマイラの赤い瞳も消滅していた。
「やりましたね、アデル様!」
「ああ。《亜空間操作魔法》を使わずに仕留められて良かった。これで色々と調べられるな」
「あんな強敵相手にそんなことを考えながら戦ってたんですね……」
「アデル、さすが」
駆け寄ってきたクレスとテティとも言葉を交わし、俺たちは互いの健闘を称え合う。
《救済の使徒》が何故こんな代物を持っていたのか気になるし、離脱したシシリーが残していった謎の石のことも気にかかる。
が、今は誘拐されていた人たちの救出が先決だ。
そう考え、俺たちは救済の使徒のアジトを調べることにした。






