第69話 シシリー・グランドールとの再会
後書きにて大切なお知らせがございます。
是非ご覧くださいませ。
「久しぶりね、黒衣の執行人サン。またお会いできて嬉しいわ」
地下水道の最奥部。
救済の使徒の根城であるその場所にいたのは、大きめの魔女帽子を被った少女――シシリー・グランドールだった。
「お前、一体ここで何をしている……」
「アハハ。散歩してたら迷っちゃって、ね」
シシリーは俺の問いに不敵な笑みで返す。
まさか俺がそんな冗談を真に受けるとは思っていないだろうが、実に楽しげだ。
幼い外見には見合わないミステリアスな雰囲気。そして掴みどころの無い印象は初めて会った時と変わらない。
「貴方は……」
「あら、ルーンガイアの王女様も一緒だったのね。初めまして」
「初めまして、なのか? 前に会った時クレスのことは知っているようだったが?」
「ええ、会うのは初めてよ」
シシリーの意味深な物言いに俺はクレスと顔を見合わせる。
前回会った時はゴーレムをけしかけられたこともあり、戦いになってもいいよう準備していたのだが……。
︎ どうやら今は俺たちに敵意が無いらしい。
あれはシシリーが言っていたように戯れだったと、そういうことなのだろうか?
けろりとしているシシリーを見て、メイアやテティも毒気を抜かれた様子だ。
「シシリーさん、本当のところはここで何を?」
「こんにちはメイドのお嬢さん。ちょっと悪巧みをしている人たちのお仕置きをね」
シシリーが言いながら指したのは脇に転がっている赤いローブの連中だ。
それを見てテティが疑問を投げかける。
「救済の使徒が悪いことをしてるからそれを襲ったってこと? アデルみたいなことをするんだね」
「私は黒衣の執行人サンみたいに立派なことをしているわけじゃないわ。私には私の目的のためにそうしているだけ」
「目的のため?」
「そ」
「それは――」
テティが続けて問おうとしたその時だった。
「侵入者め……。我らに手を出したこと、後悔するがいい……」
シシリーの傍で倒れていた救済の使徒の男がボソリと呟き、何かのスイッチを押して気絶した。
――ゴゴゴゴゴ。
「何だ? 壁の方から……」
「アレが見当たらないと思ってたけど、隠してたか……。厄介だね」
シシリーが悪態をついて音のした壁面を見やる。
そして――。
――ドゴォッ!
石造りの壁を破壊し、そこから現れたのは巨大な兵器だった。
いや、兵器というより見た目は魔獣に近い。
四つ足に獣型モンスターのような三つの頭部を持ち、赤く明滅した瞳が俺たちの方へと向いていた。
所々が鉄とも鏡とも見える外殻に覆われている。
それを見てシシリーが隣で舌打ちしたのが聞こえた。
「シシリー、知っているのか?」
「あれは機械仕掛けの魔獣――ガーディアンキマイラ」
「機械? しかし、あそこまで大仕掛けで精巧なもの、今の時代に稼働しているなんて聞いたことないが……」
「そうでしょうね。大昔に滅んだとされる文明の遺物だもの」
言ってシシリーは目を細める。
シシリーは魔人だ。古代の文明についても何か知っているのだと思うが。
「そんな古代の遺物をどうして救済の使徒が……。しかし、今はゆっくり話している余裕は無さそうだな」
「そうね。本当は黒衣の執行人サンともう少しお話したかったのだけれど、残念」
そう言いつつ、シシリーは俺たちに背を向けて距離を取る。
「おい」
「それじゃあ、後はよろしく」
「何故だ。お前は救済の使徒を殲滅しにやって来たんじゃないのか?」
「ふふ。それはそうだけど、もう十分に戦力は削いだしね」
「……」
「あと、アレの相手は骨が折れそう。黒衣の執行人サンなら任せられるでしょうしね」
シシリーは「ああそうだ」と言って、こちらを振り返る。
「黒衣の執行人サン。これを」
シシリーが投げて寄越したのは、黒い石だった。
それは黒水晶のように光沢があり、不思議と熱を感じない。
「……これは?」
「それを持っていれば私たち、きっとまた会えると思うわ」
意味が分からない……。
「それから、王女様」
「え? 私ですか?」
「アナタのお兄さん、気をつけて見てあげてね」
「ジークお兄様を? それってどういう――」
クレスの問いにシシリーは笑みを返すだけで答えない。
そうして初めて出会った時と同じく、トプンと地面に溶けるようにして消えていった。
「何だったんでしょうか、アデル様」
「さぁな。意味深なことばかり並べて去るのは勘弁してほしいが」
俺はシシリーから受け取った黒い石を懐にしまい、ガリガリと不協な音を立てている機械獣に目を向ける。
「とにかく、今はあれをどうにかしないとな」
俺の言葉に皆が頷き、ガーディアンキマイラと対峙した。
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本当に本当にありがとうございますm(_ _)m
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