第66話 聞き込みの開始と執行
ゼイオス王の襲撃者を拘束した翌日。
俺、メイア、テティは王宮の正門に集まっていた。
今日はルーンガイアの城下町に出て、この国の行方不明事件に絡んでいると思わしき組織――《救済の使徒》に関する情報の聞き込みを行う予定になっている。
「アデルさん、それに皆さん。お気をつけて」
「ああ。……それにしてもクレス。街へ聞き込みに行くだけなんだから、わざわざ見送りに来なくても良かったのに」
「いえ。アデルさんたちがルーンガイアのために動いて下さるのです。王女としてこれくらいのことはさせて下さい」
見送りに出てきてくれていたクレスが柔らかく笑う。
律儀さと、頑固さが入り混じったような、クレスの意思の強さが感じられた。
「本当なら私もついて行きたかったところなのですが」
「……王女様が街に出たら騒ぎになるから駄目だと昨日言っただろう」
「そ、そうですよね……」
見るからに落ち込むクレスがぎこちなく相づちを打つ。
そんなに同行したかったのか。
「ゼイオス王を襲撃した女性のことはフランに任せておくッス。情報屋としてのメンツもあるッスからね。新しい情報が掴めたら、アデルさんが戻ってきた時にでも」
「分かった」
同じく見送りに来ていたフランに向けて俺は頷く。
「じゃあ、恐らく夕刻までには戻るから」
「ええ、アデルさん。また後で」
「……?」
笑みを浮かべたままクレスが言った言葉から、何か含みがあるように聞こえたのは気のせいだろうか?
俺はかすかな疑問を抱えながらも、メイアとテティに声をかけ、城下町の方へと向けて歩き出した。
***
――コソコソ。
「アデル様……」
「アデル……」
「…………ああ」
城下町を歩きながら俺、メイア、テティの三人は「その事実」を確認して溜息をついた。
理由は俺たちを尾けてくる人物がいて、それが先程別れたばかりの人物だったからだ。
――まったく、あの王女様は……。
俺たちは街の大通りからわざと遠ざかり、人通りの無い路地へと進む。
裏路地とはいえさすがに水の都だ。
脇には整備された水路が引かれており、綺麗な水が心地よく流れている。
そして適当な所まで進み、俺は前触れ無く振り返った。
「っ――」
俺たちを尾けていた人物が建物横に置かれていた大樽の影に素早く身を潜めるところだった。
中々素早い動きだ。
「クレス、こんな所で何をしている」
「あ……」
大樽の影を覗きながら声をかけると、深めに被ったフードの奥で金色の髪が揺れて、クレスは引きつった顔を浮かべた。
「お、おやアデルさん。それに皆さん、偶然ですネ」
「いや、それは無理があるだろう」
観念したクレスを見て俺はまたも溜息をつく。
「むぅ。どうして分かっちゃったんですか? これでも従者のハリムを何度も撒けるくらいにかくれんぼは得意なのですが」
「テティちゃんは鼻が利きますし、私も人の気配にはそれなりに敏感です。それに何より、アデル様は私がジョブ能力を使ってても見破っちゃうくらいに鋭いですから」
「そうなんですね……。後で皆さんを驚かせようと思ったのに」
メイアの解説を聞いてクレスはがくりと肩を落とした。
それにしても本当に付いてくるとは。
「王女様、かなりお転婆だね」
「うっ……。い、いやテティさん。これにはちゃんと理由が」
「理由?」
テティが小首をかしげて耳をピクピクと反応させる。
それにクレスが答えようとした時だった。
俺は複数の気配を感じて俺は路地の先、建物の物陰へと目をやる。
――ジャリ、と。
そこから現れたのは赤い外套を羽織った不気味な連中だった。
「「「……」」」
数は3人。
連中は物を言わず、ただ黙って歩を詰めてくる。
「なあ。この国ではああいう連中、よくいるのか?」
「い、いえ……。見たこともありませんが」
俺の問いにクレスは困惑気味に回答する。
連中の目は虚ろで生気が感じられない。
と、観察していると先頭にいた人物が片手を天にかざし、後の二人も揃って同じ姿勢を取る。
「無力化し、捕らえよ……」
「無力化し、捕らえよ……」
「無力化し、捕らえよ……」
赤いローブの集団は無機質な言葉で呟くと、かかげた手の先から火球を発生させた。
火の粉が舞い、近くに置いてあった木箱が引火する程の熱量。
「かなり強力な魔術の使い手のようですね……」
「だな。しかし、こんな所であんな魔法を使われたら大迷惑だ。ここはこの国の資源を使わせてもらおう」
「なるほど。アデル様、あれを試すんですね」
メイアに応じながら、俺は【執行人】のジョブ能力を使用した。
目の前には青白い文字列が表示される。
==============================
累計執行係数:19,563,010ポイント
執行係数6,000ポイントを消費し、【聖騎士】のジョブ能力を使用しますか?
==============================
承諾――。
今まさに火球を放とうとしている赤いローブの連中に向け、俺はそのジョブ能力を実行する。
「水球の牢獄――」
「「「ッ――!!!」」」
俺が唱えると、路地脇の水路を流れていた水が集まっていき、路地の幅一杯に水の球を形成する。
それはさながら巨大な水の檻で、赤いローブの連中を火球ごと飲み込んでいった。
「こ、これは――」
クレスがその光景に目を見開き、言葉を漏らす。
精霊の加護を受けることができる聖騎士のジョブ能力の内、水を駆使する技だ。
赤いローブの連中はのたうち回るようにしてもがいていたが、それも長くは続かず、俺がジョブ能力の使用を解除した頃には地面に力無く倒れ込んでいた。
「ふう」
「流石ですアデル様。消火活動までお疲れ様でした」
「練習してた甲斐があったな」
俺は今使用した能力の感触を確かめるように手を何度か握る。
どうやら水が豊富なこの国だと尚更この能力は相性が良いらしい
「す、凄い……。あれだけの水量を操るなんて、王宮で一番の魔術師でもできませんよ。アデルさんは規格外すぎますね……」
「まあ、そこはアデルだから」
クレスの言葉にテティが見慣れたものだと反応している。
「さて、どうやら俺たちの聞き込みの最初はこいつらになりそうだな」
俺はそう言って、気絶した赤いローブの連中へと足を向けた。
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