第14話 瞼落としの拷問
「さて、お前に聞きたいことがある――」
俺は盗賊団の頭領が目を覚ました後で尋ねる。
ラヌール村を蹂躙していた盗賊団を叩きのめしたことで、村人たちを苦しめていた癌は取り除くことができた。
しかし、ラヌール村での一件はまだ根本的に解決していないと、俺はそう踏んでいた。
「な、何だ……?」
俺はすっかり萎縮した盗賊団の頭領に嘆息しつつも、さっそく本題から入ることにした。
「お前ら盗賊団にラヌール村を襲うよう指示を出していたのは誰だ?」
「……っ! さ、さて、何のことだか……」
頭領の男の、明らかに見て取れる動揺。
カマをかけてみたがやはりそういうことか。
今回のラヌール村襲撃事件の裏では、盗賊団を指揮していた人物がいたのだ。
「まあ、おおよその見当はつくんだが。村襲撃の裏で糸を引いていたのはラヌール村の領主だ。そうだな?」
「そ、そンなことはねえ! なに勝手なことをほざいてやがる!」
俺は一つ息をつき、往生際が悪い頭領を睨めつけた。
黒幕を執行しておかないとまた同じことが繰り返される恐れもある。
ラヌール村の人たちの今後を考えれば、トカゲの尻尾を切って終わらせてはいけない。
――仕方ないな。
「なあ。お前、《瞼落としの拷問》って知ってるか?」
俺は努めて冷ややかな声を頭領の男に投げかける。
「は? 瞼落とし……? なに言って――」
「その拷問のやり方は簡単だ。対象の瞼を斬り落とすんだよ」
「……っ!?」
「そうするとな、瞼が無くなるもんだから、そいつは瞬きすることができなくなる。死にはしないんだが、それが逆に恐怖でな。目が乾いて乾いて日常が地獄に変化するらしい」
その後に俺が言うことを察したのか、頭領の顔から血の気が引いていった。
俺はイガリマの切っ先を徐々に頭領へと近づける。正確には頭領の瞼に向けてだ。
「俺も初めて聞いた時はそんな残酷な方法を思いつく奴がいることに驚いたんだが、今はそれに感謝してるよ。だって――」
「ラヌール村の領主だっ!!!」
頭領の男は俺が言葉を言い終えるより早く、ありったけの声量で叫んでいた。
「ん?」
「は、白状するっ! 裏で絵を描いていたのはラヌール村の領主だ。アイツは村の小作料の支払いが少なかったからってンで、オレたちを経由して金を集めようとしてたンだよ! 小さい村だし、潰しても構わねぇからってな。た、頼む。これで許してくれ……!」
「オーケー」
俺は頭領の男に突き付けていたイガリマを引き、肩に担ぎ直す。
頭領に拷問をしようと見せたのは答えを引き出すための「フリ」だ。もちろん。
とにかく、必要な情報は引き出せたことだしこれで良しとしよう。
盗賊団の連中はきっちりと縛っておき、トニト村長から王都の自警団などに突き出してもらうなどすれば良いだろう。
「さて、それじゃ領主の館に向かうとしますか」