↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/34

第02話:夢を現実に

 僕、石倉実哉(いしくらさねや)は、トラックに轢かれて死んだ。なのに、何故か目が覚め、目の前には森盛(もりもり)した違和感だらけの森が広がっていた。


 この2つの事実を結び付けて、僕は1つの結論を導き出した。



 僕は、トラックに轢かれて異世界に転生したらしい。ベタベタでテンプレな王道展開だ。



「……短絡的すぎるかな?」


 異世界転生だと決めつけるのは早計な気もする。


 ただの夢かもしれない。というか、異世界転生に比べたら夢の可能性の方が高い。どこから夢だったのか分からないけど。もし夢だとするなら、たぶんきっと十中八九E判定を取ったところからだ。


 うん、そうだ。そうに違いない! Eハンテイナンテナカッタンダ。



「よし。じゃあ、早く目を覚まして本当の模試の結果を受け取りに――」


 

 行きたくななぁ…………。すっごく取りに行きたくない。


 夢だとしても覚めなくても良いのでは? むしろ覚めたくない。


 少なくとも、模試の結果が悪いことは確定している。数学と物理基礎がボロボロだったのだ。自己採点なんてするまでもない、白さが眩しい解答用紙を提出した覚えがある。そこから夢だったら嬉しいのだが、模試を受けたときからずっと夢の中だというのは無理があると思う。


「…………」


 夢から覚めたら、勉強しなくてもはならないのだ。したくない。とてもしたくない。絶対にしたくない。夢じゃない気がしてきたなぁ。てか、夢なら夢で、急いで目覚める必要は全くないのだ。



 …………よし、決めた。これは夢じゃない。僕は異世界転生を成し遂げたのだ!



「念願の異世界転生だぁ!」



 僕は異世界転生に憧れていたのだ。というか、ネット小説を読んでたら当然の帰結として異世界転生に憧れるだろう。


 先に死んでしまって両親には申し訳ないが、悪いのは絶対トラックの運ちゃんだ。僕は歩きスマホなんてしてなかったし、ちゃんと歩道を歩いていた。未練はそんなにないから、別にトラックの運ちゃんを恨んだりはしないけど。


 とにかく、僕はトラックに轢かれて異世界に転生した。少なくとも、僕はそう信じることにした。






 ※※※※※






「よしっ」


 異世界に転生したら、まずやるべきこと。数々の異世界転生モノを流し読みしてきた僕に抜かりはない。むしろ序盤で脱落することが多いから、中盤以降何するのが王道なのかはよく知らない。


 異世界転生したら、まず初めに言ってみるべき魔法の言葉があるのだ。先人たちの教えに素直に従おう。


 いざ――



「ステータス、オープン!」



 先人に感謝。魔法の言葉の力はすごかったようだ。期待通りステータス画面が表示された。



 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 名前:サネヤ

 種族:人間

 性別:男

 年齢:16


 固有スキル:スキル【殲滅】

 保有スキル:スキル【収納】



 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 わりと簡素なステータス画面だ。よくあるSTRなどの能力値みたいなものは表示されていなかった。まぁ、普段あまりゲームをやらないから、なくても構わないんだけど。


 他にも苗字が消えていたり、種族が表示されていたりと気になることは多い。だが、なによりも気になるのが。


「スキル【殲滅】か。…………穏やかな響きじゃないなぁ」


 殲滅って、僕に何をさせる気なんだよ。スキルの詳細とかは分からないんだろうか。そう思いステータス画面のスキル【殲滅】を(空中だけど)タップしてみる。


 すると、詳細な説明が表示された。うむ、便利な仕様だ。気が利いている。さすが異世界。



 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 スキル【殲滅】


 一定範囲の魔力反応を追尾し自動的に攻撃し、殲滅する。範囲内の魔力反応が消滅するまでスキルは発動し続ける。



 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 どうやら、スキル【殲滅】は文字通り、ずいぶん物騒なスキルのようだ。でも、これわりと当たりの部類じゃない? 強そうだし。


 いやでも、名前だけ強そうなスキルは大体外れってパターンが多いからな。まぁ、どうせ覚醒したり、真の力が発揮したりするから強くなるパターンの方が多いけど。僕が読んだ小説はそっちのパターンが多かったし。


 つまり、結局当たりなのかな? というか、固有スキルと保有スキルって何が違うんだろう。


 少しでも情報を得ようと、ステータス画面を色々触ってみたが結果は空振り。分かったのは、スキル【収納】の詳細だけだ。それも、とても簡素だった。



 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 スキル【収納】


 物を出し入れすることが出来る。



 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



「…………大雑把な説明だなぁ」


 それくらいは名前から想像できるよ。もっと詳細なことを教えて欲しい。


 というか、せっかく転生するなら神的な存在に会って説明が聞きたかった。情報が少なすぎる。


「これから、どうすれば良いの?」


 一歩も動いていないから当たり前だが、周囲は見渡す限り森だ。


 ザワザワ、カサカサと風の音や何かが動く音だけが聞こえてくる。森に一人はすごい心細い。日本でも猪とか怖いのに、異世界なら魔物とかがいてもおかしくない。


 僕は完全に丸腰だ。トラックに轢かれたはずの体だけど、怪我もなく恐らく万全だ。服も前世のまんまなので、裸一貫というわけでもない。だけど、武器やお金は持っていない。ポケットに入れていたスマホはなくなってるし。


「………………と、とりあえず街を目指そう」


 とにかく、動かないと心細くて泣きそうだ。






 ※※※※※






 ()()()()()。本当に色々あった。



 道に迷ったり、ゴブリンに襲われたり、スキルを試したり、途方に暮れたり、お腹が空いたり、迷子になったり、森を彷徨ったりした。…………基本的に、森をウロウロしていただけな気もする。


 とにかく、色々あったうえで、僕は決意した。



 ――この異世界で、僕が考える最強の『ざまぁ展開』を実現しよう!



 スキル【殲滅】は、無能スキルじゃなかった。森の中で襲ってきたゴブリンに使ってみたが、本当に殲滅できた。というか、あっという間にゴブリンどもはミンチになった。ちょっとやりすぎなぐらいだ。グロい。


 スキル【殲滅】があれば、追放された後に成りあがって復讐が出来る! あえて無能を演じて追放されれば『ざまぁ展開』を実現できるのだ。やらない手はない。


 昨日の小説が読みかけのまま異世界に転生したのも、全ては僕が自分の手で『ざまぁ展開』を創るためだったんだ。


 これは森を散々彷徨って上に、苦手なグロい絵面(3次元)を見せられたことで蓄積されたストレス解消のためでは断じてない…………はずだ。一人で彷徨う森が怖すぎてやけくそになっているわけでも決してない…………と思う。


 僕は元々『ざまぁ展開』がやってみたかったのだ。憧れていたのだ。定期的に追放モノを読みながら、自分ならどうするかなぁ、と日々考えていたのだ。

 度胸と実力がなかったから出来なかったけど。せっかく異世界に転生して、スキル【殲滅】というお誂え向きなスキルを持っている今なら出来るはずだ。



 だから、夢を現実にしよう。



「いっよし! がんばるぞ! …………あっ」



 改めて決意したところで、重大な事実に気付いた。気付いてしまった。というか、我ながら頭が回っていない。


 『ざまぁ展開』を実現するために最も必要で重要なもの。それは、度胸や実力などではない。



 仲間だ。

 くそみたいな仲間がいるからこそ、ざまぁ展開が成り立つのだ。「もう遅い」と言えるのだ。



 つまり、僕は…………。

 まず、仲間を見つけなければならない。

 それも一旦僕を受け入れてくれたうえで、追放してくれそうな仲間を。



「………………」


 え? 難易度高くない? 僕がバリバリの陽キャだったとしても結構な難題なんじゃない? 陰キャの僕にはどうにもならないのでは?


 てか、仲間とかの前に人がいる場所にたどり着けるかな? 僕さっきからずっと迷子なんだけど。



 お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。