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林檎の下着の継承者 ~スカートをめくり上げてリンゴ柄のものがあなたに眺められ、彼女は頬をりんご色に染める~

作者: 栗野庫舞

りんご、リンゴ、林檎。三つの使い分けが可能です。アップルは英語。

 体育館でおこなわれた全校集会が終了しました。生徒数が多いため、生徒達は学年ごとに教室へと戻ります。


 男子小学生のあなたは、自分の学年の順番が来てから立ち上がりました。学年単位でも人が多く、体育館の出入り口は混雑中です。


「ねえ、リンゴって好き?」


 人混みが進むのを待っていた際、横にいた同じクラスの女子に話しかけられました。


 あなたは、うん、と答えました。


 すると、女子は目の前にいた、別の女子のスカートを持ち上げます。


 めくられた女子の長めのスカートは、かなり上まで引っ張られました。


 下着のお尻側が見えます。


 生地は白で水玉模様のようでしたが、めくる女子の発言から、リンゴ柄の模様だったのでしょう。ただ、あなたも恥ずかしかったので、ちゃんとは見ませんでした。


 めくられたことに気づいた女子は、すぐにスカートを直そうとします。めくっていた女子が手を放し、スカートの裾は()りていきました。


 すぐ……だったはずなのに、スカートが戻るまでの時間が、ゆっくりと流れていたように感じられました。


 めくられた女子は後ろを向いて、女子とあなたの姿を一瞥(いちべつ)しましたが、この時には特に何も言いませんでした。


 彼女とは下校時に、下駄箱で目が合います。


「……えっち」


 小声で言われました。


 あなたは頭に来ます。

 スカートをめくったのは隣にいた女子であり、あなたはその女子がいたずら心でめくったのを後ろから見せられただけなのです。それなのに、いやらしいと思われるのは心外でしょう。


 昇降口から出た後、あなたは女子の手を引っ張って、下校する生徒達が進む方向から外れます。


 ロングスカート姿の女子は、あなたと同じぐらいの背丈で、黒髪は一本の三つ編みにしていました。そんな彼女に対し、自分はリンゴが好きかどうかと聞かれてうんと答えただけ、別に見るつもりはなかったと抗議します。


「でも、見たんでしょ?」


 あなたはその言い草でさらに腹が立ちます。


 そもそもリンゴかどうかも分かっていない、どうせえっちとか思われているのなら確認させろと、あなたは語気を強めました。


 あなたが本気で怒っていたら、女子のほうも折れたようです。頬をりんごのように赤くして、スカートをゆっくりと持ち上げました。


 本当に見やすいぐらい、スカートは限界までたくし上げられました。


 あなたは下着をじっくりと注視します。


 白をベースに、リンゴの形をした薄い青の絵が、水玉模様のように等間隔でびっしりと並んでいました。今回は前側だったので、下着の上部中央に緑のリボンがついているのも確認出来ます。


 あまりにもあなたが熱心だったため、彼女はこの時、勘違いをしてしまうのでした。


 その後、彼女とはかなり仲良くなったのですが、翌年、彼女が転校することになりました。


 女子と学校で会える最後の日に、あなたは人気(ひとけ)のない校舎の裏に呼び出されました。彼女から、リンゴ柄の白い下着を渡されます。


「これ、あげる。……好きそうだったから」


 あなたが驚いて固まっていると、女子はまた勘違いをしたようです。


「だいじょうぶ。他のをはいてるよ」


 女子はミニスカートの裾をちょっとだけ持ち上げて、白い一部分をあなたに(さら)します。


「それを私だと思って、大切にしてね」


 あなたは女子から託された(おも)いを尊重し、ずっとそれを大切にしました。


 あれから……数年の時が過ぎます。


 あなたが高校に入学した時、運命の再会が待っていたのでした。


「久しぶり」


 成長した女子と廊下で出くわします。


 黒髪を三つ編みにしている点は同じでしたが、あなたの淡い記憶よりも綺麗になっていました。まるで、たくさんの実をつけるぐらいに成長したリンゴの木のようです。


 あなたは再会を喜び、彼女と思い出話をし始めました。


 途中、女子が恥ずかしそうな顔をして、


「あれ……、もしかして、まだ取ってあるの?」


 と、聞いてきます。


 女子の言う『あれ』について、あなたはすぐに分かりました。もちろんだと答えます。今でもお守り代わりにして鞄に入れているから持って来ようかと伝えると、


「えっ、嘘でしょ?」


 頬をりんご色にして混乱する彼女の様子が、実に楽しかったです。


 あなたは冗談だと言い、家にしまってあると話しても、彼女の動揺は止まりませんでした。


「ごめんね……あの時はまだ子供だったから……。今になって思うと、なんであんなことをしちゃったんだろう、恥ずかしい……」


 後悔しているようで、彼女は顔を覆い隠します。


 女子には明かしませんでしたが、あれは家宝のように扱っており、あなたは辛い時に何度も助けてもらっていました。


 あなたが今もリンゴ柄なのかと聞くと、


「ううん、違うよ」


 ちょっとだけ女子は膝丈のスカートを持ち上げました。大胆です。紺色の……ハーフパンツの裾だけが見えました。


「……また見られると思った? えっち」


 この女子はそういう挑発をして恥ずかしい目に()った過去を、忘れているのでしょうか?


 じゃあ、リンゴは家で収穫するよとあなたが言ったら、


「リンゴの木でもあるの?」


 的外れな質問が来ました。


 小学生の時にもらったリンゴ……と言うと、ようやく彼女は理解しました。頬はまた、熟れたりんご色になります。


「……あれ、返してもらっていい?」


 いや、あれを返したら小学生の時の思い出を否定することになる。そう理由をつけて、あなたは拒否しました。


「それならいいけど……。それだと今後もずっと、私は、その……パンツのイメージじゃない?」


 あなたは、リンゴの、とつけ加えます。


 なぜなら、彼女のお名前は、“林檎(りんご)”なのですから。


 続けて、あなたは言います。――リンゴ柄のパンツを林檎(りんご)という子からもらったのだから、そういうイメージがついてしまうのはしょうがない。でも、イメージなんて、努力次第で変えることが出来る。


 今日の放課後はどこかに寄ろうか。リンゴ柄の子じゃなくて、魅力的な林檎(りんご)にイメージを変えられるよう、今日は頑張ってかわいく振る舞ってほしい。――と、あなたは頼みました。


「……うん。じゃあ……放課後は、よろしくお願いします」


 けっこう丁重に、頭を下げていました。


 彼女はきっと、あなたの期待に沿ってくれるでしょう。


 放課後のデートが今から楽しみですね。


                    (終わり)

この女子、今もリンゴ柄なのかと聞かれて違うと答えていますが、きっと穿()いているのは白だなーと思った方は、正解です。……いえ、正解の一つです。本文中では明言をしていませんので、あなたがライトブルーと思えば、それでもいいのです! 読了後は、地味な三つ編み女子高生との放課後デートをご想像して下さいませ。


では、最後までお読み頂き、ありがとうございました。『サキュリバーズ!』を筆頭に、こんな作品をたくさん用意しているので、作者の他作品も読んで下さったらありがたいです。

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