第一部 第二節
遅くなりました
次に王子の目が覚めた場所は王国の王城内の病室だった。王子はすぐにやって来た王から夢うつつながらいくつかの話を聞かされた
初めに魔王城からの使者から自分が受け渡されたこと、次にアリスのことは残念だったがしょうがないことだったということ、最後にしばらく心を癒す期間として欲しいものは出来る限り用意するから安心して欲しいということだった
王子は拒否したりすることもなく数週間を自室で廃人のように過ごしたが、その後唐突に壁を殴ったり中で暴れる音が数ヶ月続いた。そしてその後は大人しくなり、歴史書や帝王学についての本を要求するようになった
王は王子が落ち着き、人前には出れないものの王としての道を歩み始めたと感じて、刺激を減らすため王子の部屋周りで一層の人払いをした
時は飛んで光暦2689年 王子はついに自室から出て自ずから政治に関わるようになった
しかし、この8年の間に魔王と平和条約が結ばれており、それを主導した宰相が極一部の政治家と共に議会と王を蔑ろにして多くのこと決定しており王子の権限もないに等しかった。このことを宰相に問い詰めると、
「そんなそんな、滅相もございません。王は体調が優れず私に政治の決定権を一時的に移していらっしゃるだけでございますとも、えぇ本当に」
「嘘をつくな!王はなぜ継承権のある僕ではなく、お前みたいなやつが任されるのだ!」
「それは王がまだ若い王子には見て学んでもらった方が成長に繋がろう、というお考えでございましたので」
「あぁあ!本当に言い訳ばかり述べる!では何だ?お前は良い政治をしているとでも言うのか?」
理知的に会話しようと思っていたが、胡散臭い、そして何より宰相の慇懃な態度に声を荒らげてつい叫ぶようになってしまっていた
しかし、そんな王子なども意に介さないように、
「もちろんでございますとも。王に信任された分私の信頼できる者達を中心に王国の未来を作っております」
「はっ!冗談も大概にしろよ。民を見たことがあるか?無視される選ばれた民の代表たる議員の意見を聞いたことがあるか?民はお前の無駄な功績稼ぎの大規模な工事に駆り出され疲弊し飢えている。
議員は自身の信念を持ち選ばれたがお前によってその望みを汚されている。これのどこが善政なんだ!?」
「王子よ、これは……」
「もういい。言い訳は聞き飽きた、なぁお前も人の心が残っているのなら王と僕に実権を返せ。今ならまだ引き返せるんだ、工事をやめて民を救い、高潔な議員を救える、そうだろう?」
「工事を中止する…?分かりました。王子がそのつもりなら此方にも考えがあります。くれぐれも反乱などを起こされぬように、と諫言をしておきますぞ」
「王子が反乱?これは面白い冗談だな。逆賊は貴様だろう!奸臣は元来より王自らが処断するのだ、お前こそ肝に命じておけよ」
そうして王子は話の分かる議員やその配下を使い徐々に民衆から評価を集めていった
掲げたのは「奸臣打倒 再び自由をここに」というスローガンであった
その裏で宰相は自らの側近と共に対王子の計画を練っていた
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