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外伝ー6 武経七書、中でも孫子の話

 話が変わり、武経七書、中でも孫子の話になります。

 実はマリー・アントワネットの頃、フランス大革命以前には、クラウゼヴィッツの著作もジョミニの著作も無かったのです。

 そのために主人公のマリー・アントワネットは欧州制覇のための軍事思想等をフランス軍士官に説くために武経七書、中でも孫子の導入を図ることになります。

 私は元フランス陸軍士官の自分が、マリー・アントワネットに転生したことに気付いてすぐの際に、将来はフランス王妃に自分はなって、フランスを欧州の覇者にしようと決意したのだが。

 フランス軍の強化をしようにも、重大な問題があることにすぐに気づいた。

 私が21世紀のフランス陸軍士官としての教育を受ける際に役立った古典、軍事思想や軍事理論を説いたジョミニの「戦争概論」やクラウゼウィッツの「戦争論」は未だに出版されるどころか、その著者自体が私よりも年下なのだ。


(註、マリー・アントワネットは1755年生まれだが、ジョミニは1779年生まれ、クラウゼヴィッツは1780年生まれになる)


 冷静に考えて見れば当然の話で、その2人はナポレオン戦争をきっかけに軍事思想や軍事理論を説いたのであり、また、ナポレオン戦争があったからこそ、2人の軍事思想や軍事理論は注目されたのだ。

 かといって、この2人より前の欧州に軍事思想や軍事理論があるかというと、私の頭ではマキャベリ程度しか思い出せなかった。

 勿論、この頃の欧州に軍事思想や軍事理論が全く無かった訳ではないのだが、きちんとまとめられた古典的な書籍等としてあるか、と言われるとどうにも私の疑念が先立つ有様だったのだ。


 そして、散々に私が悩んだ末に選んだ手段が。

 当時の清帝国、現代で言えば中国から「武経七書」、中でも「孫子」を導入することだった。

 幸いなことに(この世界では)フランス王国とローマ教皇庁、更にイエズス会との関係は良好極まりない状況にあり、イエズス会は清帝国の首都北京に宣教師を駐在させていた。

 また、史実でも、イエズス会士のジャン・ジョセフ=マリー・アミオが「孫子」を抄訳ながら、フランス語に訳している。

 だから、この伝手をフルに使えば「武経七書」を手に入れることが出来る、と私は考えた。

 

 だが、こうした繋がりを私が駆使できたとはいえ、この時代の中国は余りにも遠すぎる国だった。

 散々な苦労の果てに、私は武経七書(「孫子」、「呉子」、「尉繚子」、「六韜」、「三略」、「司馬法」、「李衛公問対」)の中国語版の原本と、それのフランス語版を入手することができた。

 又、武経七書ということで当時の清帝国では、これらの解説本、参考書まで出版されていたので、私はそういった参考書の幾つかについても、原本とフランス語版を入手することが出来た。


 とはいえ、そのままでこれらをフランス軍の士官教育に使えるか、というと使える訳がなく。

(何しろ戦争に違いはないと言われ、また、幾ら「孫子」等には普遍の戦争に関する原理が書かれていると言われるだろうが、「武経七書」の描写は古代、中世の中国を念頭においているのであり、18,19世紀の欧州の現実に合わせる必要がある)

 こうしたことから、(内心では苦労の余りに泣きながら)私は「武経七書」の「孫子」等に注釈を自ら付して、また、フランス軍の士官学校の教官らと議論をして、欧州の現実に合うように軍事思想や軍事理論を修正して、フランス陸軍の士官教育を行うことになった。


 尚、この苦労は全く無駄だったわけではなく、むしろ極めて有効だった。

 それによって欧州大戦において、我がフランスの勝利の原動力になったのは間違いなかった。

 そして、私が「武経七書」中でも「孫子」を称揚して、又、フランス軍が欧州大戦の勝者になったことから、大戦後の欧州において「武経七書」中でも「孫子」は世界最高の兵法書と評価されるのが通例になったのだ。

 

 又、私が「武経七書」に付した注釈が、結果的に欧州の軍事界において「武経七書」の研究の基本になってしまったのは、本当に私にも思いもよらないことだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 何だかんだで知識チートなんだなって 火薬武器とか出てきてる時代だから古代の理論は役に立ちそうにないけど、そうでもないのね。
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