表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/60

外伝ー5 激突、アウエルシュタット3

 王妃ルイーゼとその護衛が戦場からの逃亡を図った行動は、結果的にプロイセン軍の連鎖崩壊を生み出すことになった。

 王妃ルイーゼの危機を知って彼女を守ろう、とプロイセン国王フリードリヒ・ヴィルヘルム3世は手元にいる近衛兵の一部と共に王妃ルイーゼの下に向かおうとした。

 だが、この国王の行動は、プロイセン軍の多くの将兵に国王が戦場からの逃亡を図ろうとしているように映ってしまった。


 そして、ブラウンシュヴァイク公の戦死によってプロイセン軍の名目上の総司令官が不在という状況になっていたのが、プロイセン軍の状況を更に悪化させた。

 何しろフランス近衛師団の勇戦によって既に自らは2割近い死傷者を出している。

 後方からの援軍を頼みにしていたが、最早、当面は援軍が来る見込みがなく、眼前のフランス近衛師団は崩れる気配が無い。


(実際にはフランス近衛師団も既に3割近い死傷者を出しており、崩壊寸前だった。

 だから、この時の私は夫と共に1個の歩兵大隊と共に最前線に立って、

「国王夫妻が最前線に立っている。近衛兵達、国王夫妻を護りなさい」

 と懸命に号令を出して、最前線の崩壊を食い止めている真っ最中だった。

 だが、そんなことはお互いに分かる訳が無い)


 そうしたところに、自らの国王が王妃と共に戦場からの逃亡を図ろうとしているという情報が、プロイセン軍内に流れたのだ。

 国王夫妻が戦場から逃亡するのならば自分達も逃亡しよう、そう考えて行動するプロイセン軍の将兵が続出するのは当然だったし、それによってプロイセン軍が連鎖崩壊するのも、又、当然だった。


 私は眼前のプロイセン軍が崩壊していくのを見て、容赦のない追撃をフランス近衛師団に命じた。

 早朝から始まった激戦はこの時点で昼前になっており、最精鋭のフランス近衛師団と言えど長時間の戦闘でかなり疲弊していたが、敵のプロイセン軍が崩壊して敗走している以上、追撃を行うのには絶好機としか言いようがない。

 その日の日没が近づくまでフランス近衛師団は追撃を行い、プロイセン軍に更なる打撃を与えた。


 そして、フランス近衛師団は最終的に約6000が死傷、全滅判定を受ける事態となった。

 一方、プロイセン軍は約1万が死傷するという、歴史上にも稀な双方が大損害を受ける死闘となった。


 尚、この間にイエナ周辺では、残置されていたプロイセン軍の一部にフランス軍主力が襲い掛かり、順当に勝利を収めている。


 イエナとアウエルシュタットの戦闘の結果、プロイセン軍は事実上は崩壊し、私は夫と共にベルリン入城を果たした。

 そして、プロイセン国王フリードリヒ・ヴィルヘルム3世は和を乞う事態となったのだが。

 ドレスの無い私は当然のことながら軍服姿で、プロイセン国王夫妻と会うことになった。

 その一方で、プロイセン王妃のルイーゼは精一杯の威勢を取り繕おうとドレスで着飾ってきたので、どちらが軍国の王妃なのか、ということになってしまった。


 また、このことで王妃ルイーゼの評判は暴落した。

 フランス王妃にして神聖ローマ皇帝の皇女が軍服を着て軍馬に乗って戦場に赴いているのに、プロイセン王妃にしてメクレンブルク公女は馬車に乗ってドレスまで持って戦場に行っていた。

 自国の王妃は戦場に行く覚悟がなっていない、王妃失格だ、とプロイセンの世論は激昂した。

 更にアウエルシュタットの大敗は、王妃ルイーゼの逃亡によるものだ、という噂まで流れたのだ。

(尚、私がその裏でホーエンツォレルン家潰しのために、その噂等を更に流したのは言うまでもない)


 そのためにプロイセン革命の際には王妃ルイーゼは薨去していたので処刑という悲劇は無かったが、革命時に墓が破壊される事件が起きたのだ。

 ご感想等をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公である王妃の活躍と評判、 他方の王妃との対比があり楽しめました。 ルイーゼ妃が不憫で笑ってしまいました。 落ち度はあっても悪い王妃ではなかったろうに。 それに、わかってはいましたが…
[気になる点] うわ~~、コレは革命が起きても仕方が無いな。 ただ、主人公もかなり執念深いなあ。 ......オーストラリア継承戦争、普仏戦争、WW1、WW2、ウッ頭が。 [一言] 続きがまた読…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ