外伝ー3 激突、アウエルシュタット1
本編では1話で流されたアウエルシュタットの戦いを3話掛けて描きます。
尚、所々で史実のアウエルシュタットの戦いや他の史実の戦いが出てきますが。
全くオリジナルでは却って描写しづらかった事情から、ということでご寛恕を。
そして、私は夜間を利用した急行軍により、フランス近衛師団の先鋒部隊をアウエルシュタットに早朝にたどり着かせることに成功したのだが。
アウエルシュタットで一息つく暇もなく、
「何でプロイセン軍、しかも国王直卒の主力の約4万がこっちに向かっているのよ」
私は唖然とする余りに、(内心で)上記の様に絶叫する羽目になっていた。
私の事前計画では、フランス近衛師団がアウエルシュタットを抑える。
そして、イエナ周辺のプロイセン軍主力に動揺が奔った頃合いに、フランス軍主力がハンマーとなって攻撃を加えて、プロイセン軍に大打撃を与える。
その間に、フランス近衛師団はアウエルシュタットで野戦陣地を築く等して迎撃準備を整えておき、金床の役割を果たして敗走してくるプロイセン軍に致命傷を与える予定だったのだ。
ところが、早朝の霧の中でプロイセン軍の斥候騎兵の集団を発見したことから、近衛兵の一部が彼らを捕らえて尋問したところ、プロイセン国王率いる約4万の軍勢がイエナ周辺からアウエルシュタットを通り、エルベ川方面に向かっているという情報が手に入ってしまった。
私は表面上は平静を装ったが、真っ青になった。
私の手元にはフランス陸軍最精鋭といえる近衛師団がいるが、その総兵力はほぼ半分の約2万だし、その多くがアウエルシュタットに向かっている途中なのだ。
今からでは迎撃のための野戦陣地を築く時間的余裕が、フランス軍にはない。
手元の兵力を全て搔き集めても2倍になる敵軍を相手に、野戦の遭遇戦で戦うしかないのだ。
だが、今更、後悔してもどうにもならない。
不幸中の幸いだが、私が少し趣味に奔ったことから、史実でアウエルシュタットで戦った師団長が連隊長としてフランス近衛師団にいる。
彼らと共に史実同様の勝利を収めるまでだ。
私は腹を括って、プロイセン軍を迎撃することにした。
さて、何でこんなことになったのか。
後で私に分かった事情も併せてこの際に説明すると、王妃ルイーゼとその馬車が主な原因だった。
プロイセン国王フリードリヒ・ヴィルヘルム3世は、最終的には渋々ではあったがプロイセン軍上層部の説得を受け入れて、約4万の主力と共にベルリンに向かうことにしたのだ。
だが、例によって王妃ルイーゼとその馬車はノロノロとした移動になる。
それにプロイセン軍は足を引っ張られて、アウエルシュタットを私が主に率いるフランス近衛師団が先に抑えるという事態が起きてしまったのだ。
プロイセン軍主力の方も、アウエルシュタットをフランス近衛師団が抑えているというのを知って、軍上層部は真っ青になったらしい。
既に後方にフランス軍、それも近衛師団が回っている状況等は全く想定していなかったのだ。
フランス近衛師団がアウエルシュタットを抑える事態になっているとは、既に他のフランス軍はベルリンを抑えようと向かっている状況なのではないか。
このままではベルリンがフランス軍に容易に占領される事態が起きかねない。
何としても目の前のフランス近衛師団を突破せよ、そして、あわよくばフランス国王夫妻を虜囚とせよ、目の前にいるフランス近衛師団は半分の兵力に過ぎないのだ。
そうプロイセン国王フリードリヒ・ヴィルヘルム3世は呼号し、王妃ルイーゼもそれに賛同した。
又、その場にいたプロイセン軍上層部も皆、それに賛同した。
実際に彼らにしてみれば、千載一遇に近い好機だった。
半分の軍勢しかいない状況で、フランス国王夫妻が目の前にいるのだ。
フランス国王夫妻を虜囚にすれば、プロイセン軍は大勝利を収められるのであり、自分達が約2倍の軍勢を率いているのだ。
この絶好機を前に彼らが目の色を変えるのは当然の話だった。
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