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外伝ー2 王妃ルイーゼの馬車

 さて、歴史のバタフライ効果というものがある。

 歴史を変えた結果、思わぬところに影響が出ることを主に指す言葉だが、私が歴史を変えた結果、史実だと大人気を馳せている王妃がこの世界では汚名に塗れることになってしまった。

 その王妃の名はルイーゼ、プロイセン国王フリードリヒ・ヴィルヘルム3世の妃である。


 王妃ルイーゼは、史実同様にプロイセン国王フリードリヒ・ヴィルヘルム3世とこの世界でも大変に仲が良かった。

 このこと自体は極めて良いことだったのだが、それこそジャコバイト問題をきっかけにこの世界での欧州大戦が引き起こされた際に大問題を引き起こした。

 王妃ルイーゼは、私マリー・アントワネットが夫ルイ16世と共に行動してプロイセン王国目指して進撃を図るというのを聞き、自分も夫フリードリヒ・ヴィルヘルム3世と共に従軍すると言い出したのだ。


 だが、問題が多々、発生した。

 私と違って、王妃ルイーゼは馬を乗りこなしての何日もの行軍訓練等はしたことが無かった。

 だから、王妃ルイーゼは必然的に馬車に乗って従軍することになった。

 更にその馬車は特注の6頭立ての代物になり、王妃の身の回りの世話をする侍女2人も連れて行くことになり、更に様々な物、それこそ戦場には全く不要なドレスまでもを乗せた馬車も2台が添えられた。


(尚、これに対して、私の方は侍女すらいなかったし、衣装にしても、この当時の技術からいって紛い物に過ぎない代物だったが、21世紀の女性用のフランス陸軍士官の軍服を数着に、また、それ以外の綿を使った下着類等を仕立てて貰って、専らそれを従軍時には着まわしていた)


 このためにフランス軍とプロイセン軍が激突する直前、プロイセン軍内で大問題が起きた。

 実はプロイセン軍内部では、フランス軍も王妃を従軍させている以上は、自分達と同様に軍の行動が鈍重であると予測されていた。

 ところが、フランス軍はそれこそフリードリヒ大王率いる往古のプロイセン軍を凌ぐ行軍速度でプロイセンに侵攻してきているのである。

 もっとも、それは当然の話で私までがラバに乗っての急行軍をフランス軍が断行したからなのだが。

 そして、自分達には王妃ルイーゼとその馬車等という鈍重な重荷があるのだ。

 この重荷に縛られていては、フランス軍の機動力の前にプロイセン軍は苦戦は免れない。


 このためにプロイセン軍内では議論の末に、この重荷を無くすためにエルベ川沿いにまで主力を転進させて、王妃ルイーゼを後方に置いた上での決戦を挑むことにした。

 だが、王妃ルイーゼを重荷扱いした軍上層部に対して、国王フリードリヒ・ヴィルヘルム3世が不快感を示したことから、議論が結果的に更に長引いてしまい、結果的にフランス軍を迎撃しようとするプロイセン軍主力はイエナ周辺に集結したままで中々動かなかった。


 そして、プロイセン軍主力がイエナ周辺にいることを、様々な戦場情報から知った私は重大な誤断をしてしまった。

 どうのこうの言っても、私と夫はフランス国王夫妻である。

 最前線で戦うのは万が一を考えれば、出来る限りは避けるべきだった。

 私と夫は近衛師団を率いてアウエルシュタットに向かってプロイセン軍の後方を断って、その情報でプロイセン軍が動揺する頃合いを見計らって、フランス軍主力をイエナ周辺のプロイセン軍に襲い掛からせて勝利を収めよう、そうすればフランス軍は大勝利だと考えたのだ。


 この辺り、完全に私の戦場の勘がボケまくっていた。

 相手のプロイセン軍が自分の思い通りに行動すると考えていたのだ。

 イエナ周辺のプロイセン軍がエルベ河方面に向かうとなると、アウエルシュタットは要地である以上は激戦になるのを看過していた。

 幾ら何でも王妃ルイーゼをバカにし過ぎ、というツッコミが起きそうなので、少しフォローをすると史実のヴァレンヌ逃亡事件の際のマリー・アントワネットの行動を参考にしています。

 実際、私が調べる限りではこの頃の王妃でしたら、ルイーゼのようにドレス等を持参して、更に侍女と共に行動するのが当然の話で、この物語のマリー・アントワネットのように軍服を着て、侍女もナシで行動する等はアリエナイ話なのです。

 そのために、主人公の思考とプロイセン軍首脳部の思考は噛み合わず、アウエルシュタットでフランス軍とプロイセン軍が激突する事態が起きます。


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