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第48話

 ダンツィヒ等の前進拠点からバルト海を経てフィンランド湾へ、そして、ナルヴァの近くに名目上は夫のルイ16世を総指揮官とするフランス軍約10万人は上陸を果たした。

 上陸地点周辺でグズグズしていては奇襲効果が薄れることから、フランス軍はほぼ総力を挙げて、速やかにサンクトペテルブルグを目指すことになった。


 サンクトペテルブルグ及びその周辺には、約5万人のロシア軍がいた。

 これはフィンランド方面にいるボナパルト将軍率いるスウェーデン軍約5万人に対処するためであり、普通に考えれば十分な兵力と言えたのだが、そこにフランス軍約10万人が加わると話は変わってくる。

 ロシア宮廷は半ば慌ててサンクトペテルブルグを捨てて、内陸部への避難を図ることになった。


 また、フランス軍への海上からの補給を断とうとして、ナルヴァ近郊にフランス軍が上陸してきたという情報が届いたロシアのバルチック艦隊はクロンシュタット軍港から総力を挙げて出撃してきたが。

 私の次男アンリ王子を総司令官とするフランス艦隊を主力としてそれにスペインやオランダ、スウェーデンの各国艦隊を集めていた連合艦隊の前にロシア艦隊は大敗を喫した。

 更に言えば、フランス艦隊に蒸気船が含まれていたこと等から、ロシア艦隊は質量共に連合艦隊より劣っていた。

 この海戦以降、バルト海の制海権はロシアから失われ、フランス軍等はバルト海から河川等を活用する内陸水路を軍隊の補給路として活用できることになった。


 こうした状況は私にしてみればサンクトペテルブルグが熟柿のように手に入る状況になったと言えた。

 1809年7月中旬、フランス軍とスウェーデン軍は共同してサンクトペテルブルグを占領した。

 ボナパルト将軍が率いるスウェーデン軍にサンクトペテルブルグ周辺及びバルト海沿岸部の治安維持を任せた上で、私はフランス軍を率いてサンクトペテルブルグからモスクワ方面への進軍を図った。

 そして、モスクワを目指すこのフランス軍の補給には内陸水路が活躍した。


 その一方では、スモレンスク方面からモスクワへの進軍も順調に進んだ。

 この方面のロシア軍は、クトゥーゾフ将軍が総指揮官となって、バクラチオン将軍やバルクライ将軍と共にフランス軍を主力とする連合軍の進撃を食い止めようとしたのだが、兵力差が大きすぎた。

 連合軍は約40万人なのに対して、ロシア軍は約20万人程にすぎなかったのだ。

 更に連合軍には、フランス軍には対英戦を戦い抜いたダヴーやランヌ、ネイやスールトらの優秀な将帥が集まっていたし、ポーランド軍はポニャトフスキー将軍が率いていた。

 こうした事情も相まって、流石にボロディノでの一戦は行われたが、兵力差からロシア軍は軽戦しただけで退却を選択して、連合軍とロシア軍の決戦ということにはならなかった。


 1809年8月初め、スモレンスク方面の連合軍はモスクワを占領した。

 更に8月半ばには、私が事実上率いるフランス軍もサンクトペテルブルグからモスクワへの進軍を果たして、スモレンスク方面からの部隊との合流に成功した。

 尚、スモレンスク方面の連合軍がモスクワを占領した際に、ロシア軍は焦土戦術の一環としてモスクワ市街に対して放火戦術を行い、モスクワは大火によってほぼ焼失していたが。


 史実知識から私はそのための手配も怠ってはいなかった。

 バルト海方面からとスモレンスク方面からの二つの補給路を活用してモスクワを速やかに復興させ、雪が降る前に連合軍がロシア各地で冬営ができるように様々な準備を整えた。

 こうして1809年の冬に私は夫や息子のルイとモスクワを死守できた。

 また、連合軍もロシア軍の冬季反攻に勝利を収めることができた。

 細かいことを言えば、この時代に冬営は無いようなのですが、そうは言っても、20世紀の日露戦争でさえ沙河対陣という言葉が出る程、冬季においては軍事行動が低調になる現実がありました。

 そうした現実を踏まえての描写である、ということで平にお願いします。


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― 新着の感想 ―
[一言] フランス本国と地続きじゃないから大変だよね。 地続きなら併合も不可能じゃないのになぁ。
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