第43話
どうしても話が相前後してしまうが。
私の息子ルイ(17世)がフランス陸軍の主力と共に英本土へと赴いたのと時をほぼ同じくして、私は夫と共にプロイセン等を制圧する作戦のためにフランス陸軍別動隊と共に行動していた。
このプロイセン制圧作戦のフランス陸軍総司令官は表向きは夫のルイ16世だが、実際の総司令官は私であることはフランス陸軍上層部では公知の事実と言って良かった。
それこそ、夫は士官学校に入る等して軍事教育を受けたことが無いのに対して、私はそれこそラウドン将軍等を家庭教師として軍事教育を受けたことのある身である。
更に言えば、フランス陸軍の師団編制等について、表向きはラウドン将軍等の発言等としてだが、実際には私が意見を述べて多大な影響を与えたのは、フランス陸軍上層部になる程に知られた事実だった。
だからこそ、夫と共に軍の会議に私が出席して、夫が沈黙している傍で私が積極的に軍議を事実上は取り仕切っていても、誰も何も言わない事態が起きたのだ。
さて、英国とフランスの本格的な交戦が勃発すると共に、それに連鎖してプロイセンとロシア等がフランスに宣戦を布告して、更にそれに呼応してオーストリアとポーランド等がプロイセンやロシアに宣戦を布告する事態が起きたのだが。
オーストリアやポーランド等の軍事力は、相対的にプロイセンやロシア等の軍事力に対して劣位にあるという現実があった。
このために私は夫と共に、オーストリアやポーランド等を救援するために、フランス陸軍別動隊をプロイセン等を制圧するための作戦に至急向ける必要があったのだ。
本来から言えば、英仏開戦と同時にこの作戦を開始すべきだったかもしれないが、プロイセンやロシアが英仏開戦に中立を保つ危険性を考えたことから、プロイセンやロシア等の宣戦布告の情報が入り次第、フランス陸軍別動隊を動かすということにならざるを得なかった。
このためにプロイセンやロシアの行動に先んじられるという事態が生じた。
又、私としても優先順位の問題から、優秀な将帥、ドゼーやダヴー等を英本土制圧作戦に投じねばならないという事態が起きてしまった。
(それに何だかんだ言っても、フランス革命勃発に伴う暴動や内乱鎮圧任務に従事したことはあっても、この世界ではドゼーやダヴーらも実戦経験に不足しているのは否定できなかった。
そのために却って、実戦経験不足を少しでも補うために、私はドゼーやダヴーらをまとめて英本土へと向けざるを得なかったのだ)
そういった事情から、フランス陸軍別動隊の指揮官は余り良い人材が集まっているとは言えなかった。
それこそ私が近衛師団の事実上の指揮を執る程だった。
そのためにアウエルシュタットでプロイセン軍約4万とフランス近衛師団約2万が交戦した際に、プロイセン軍約1万人が死傷したことからプロイセン軍が退却したために一息付けたが、フランス軍約6千が死傷してしまいフランス軍が事実上敗北する事態が起きてしまって、私は反省した。
私がこの世界(?)に来てから50年余りが経っており、それこそ七年戦争以前の将帥と私は言われても仕方ない程、気が付けば実戦から遠ざかっていたのだ。
こうしたことから、実戦勘がさび付いてしまっており、こうした事態を招いてしまった。
ほんの2倍のあのプロイセン軍を相手にしてこの体たらくとは、と私は猛省した。
とはいえ、オーストリアやポーランド等にプロイセン軍は対処する必要もある。
結果的にはプロイセン軍は敗北を余儀なくされ、英本土占領も相まってドイツ諸小国はフランスとオーストリアに相次いで屈服していくこととなり、ロシア以外の諸国はフランスに屈服する事となった。
感想欄で多々、指摘があったので少し補足説明をすると。
本来から言えば、戦闘開始前に自軍が有利な態勢で戦うのが重要なのに、主人公は2倍の大軍を迎え撃つ戦いをアウエルシュタットでする羽目になっています。
また、損害比率から言えばフランス軍の方が損害が大きく、プロイセン軍が退却していなければこちらの敗北でした(プロイセン軍の損害は約25パーセント、フランス軍の損害は約30パーセントです)。
こうしたことから、主人公は猛省する羽目になりました。
ご感想等をお待ちしています。




