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第38話

 1807年7月13日、ジャコバイトで王位継承権順位第1位のヘンリー9世(枢機卿)が薨去。

 この瞬間(という訳には実際には行かず、その情報が広まった末にだが)、サルディーニャ国王カルロ・エマヌエーレ4世がジャコバイトとして英国の王位継承権の主張を本格的に行いだした。


 これに私というか、フランスはこれまでの行きがかり(かつてのオルレアン公が、自分こそが真のフランス国王であると主張しているのを放置して英国内に滞在することを認めていること等)から、サルディーニャ国王カルロ・エマヌエーレ4世こそが真の英国王であるとしてこれを承認するという発表をした。

 これに英国世論は激昂して、英国政府もこれに対応するかのようにフランスに宣戦を布告。

 この事態に連鎖して、オーストリアやプロイセン、ロシア、ポーランド等も相次いでお互いに宣戦を布告していき、ここに欧州は戦禍に覆われることになった。


「今年のクリスマスまでには英本土を制圧する」

 そして、対英戦勃発と同時に私は固く決意していた。

 何だかフラグに聞こえかねない科白だが、本当にそうしないとフランスは英国に勝てない。

 長期戦では海外植民地を持たず、国力に劣るフランスの勝算は減る一方なのだ。

 短期戦で英本土をフランス軍は制圧して、現在の英王室を政府共々カナダ等に追い出さないとフランスは何れは負けてしまう。

 それこそ、ナポレオンやヒトラーが辿った路を、私の祖国フランスに歩ませてしまうのだ。


 そのために私はフランス海軍に蒸気船の採用を推進する等の方策を講じていたのだ。

 また、フランス海軍の人材育成についても史実よりは遥かにマシな状況にあった。

 史実と異なり、アメリカ独立戦争にフランスが参戦しなかったことやナポレオンのエジプト遠征が無かったことから、フランス海軍の人材の損耗は迎えられていたのだ。

 また、私としては望外のことだったが、私達夫婦の次男のアンリは優秀な海軍の軍人として育ってくれ、王族ということもあって既に提督に叙されていた。


「アンリ、頼みましたよ。何としても我がフランス陸軍を英本土に送り届けるのです」

「分かりました母上」

 私の頼み、願いに応えて、アンリはフランス艦隊の総旗艦「リシュリュー」に座上して、ネルソン提督率いる英国艦隊と戦ってくれた。

 

 英国艦隊はフランス艦隊の蒸気船は外輪船であり、どちらか一つを砲撃で破壊すれば、行動不能になると蔑視していたようだが、それは甘い考えだった。

 外輪の一つが壊れれば、確かに行動が困難にはなるが、舵を巧みに操ることで行動不能にまではならないのが外輪蒸気船の現実なのだ。

(この時代の蒸気船なので、帆走を念の為に保持していることから、帆走も一応は可能でもある)


 そのために英国艦隊は、蒸気船を保有するフランス艦隊の前に苦戦を強いられることになった。

 一応、蒸気船を建造していたとはいえ、まだまだ艦隊の軍艦としては採用していなかったために、風任せでしか動けない英国艦隊に対して、風をほぼ無視して凪の中でも動ける蒸気船艦隊を保有しているこの世界のフランス艦隊。

 艦隊機動力の点でフランス艦隊は英国艦隊に対して優越することが出来て優位に戦えた。

 その結果、ドーバー海峡の制海権は英国から失われて難攻不落のドーヴァーの壁は崩れた。


 こうなったら、フランス陸軍は英本土上陸作戦を展開できることになる。

 流石に輸送船のほとんどは帆船だったが、そんなのは関係ない。

 制海権がある以上はフランス陸軍の輸送が可能になったのだ。

 王太子ルイを総司令官にしてドゼー将軍を総参謀長に据えて、フランス陸軍10個師団、約20万名がドーヴァー海峡を越えて英本土上陸作戦を展開した。

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― 新着の感想 ―
[一言] もし勝ったとしたらイギリスの植民地はどうなるやら? この時代も内燃機関を開発している人はいるけれど、内燃機関実用化の開発者は主人公の死後がメインに成りそう。
[良い点] きゃー、ドゼーですね!? あのドゼーですねっ!! [一言] ドゼーの腰巾着・ダヴーの出演を希望します!
[良い点] “Opération Sea Lion”成功。 『何処ぞの伍長とは違うのだよ、伍長とは!!』 [一言] 大丈夫です。『この戦争はクリスマスまでには終わる』とは言ってません。 あくまで、『ク…
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