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第18話

 ともかくそういった事態が起きたことから。

 英国は史実ではアメリカ独立戦争鎮圧に投入されたドイツ傭兵約3万人を得られなかった。

 ドイツの諸小国にしてみれば、それこそフランスの脅威に対するために少しでも自国の軍を拡大しておかねばならない。

 幾ら金を積まれても、それによって自国の防衛が疎かになって自国が占領されて自らが領土を失ってはどうにもならないからだ。

 だから、ドイツの諸小国はアメリカ独立戦争に対するための英国からの傭兵供出の申し出を拒絶した。


 そして、たかが3万人と思われそうだが、アメリカ独立戦争においてはこの3万人の兵力は極めて大きい存在だ。

 それこそアメリカ独立戦争の主要な戦闘と言えるサラトガの戦いにおいて英軍の総兵力は約8千といったところであり、ヨークタウンの戦いでも英軍の総兵力は約8千程だった。

 史実のアメリカ独立戦争においては、ドイツ傭兵は英軍の総兵力の3割以上を常時占めていたという推計がある位だ。

 だからこそアメリカ独立戦争において、戦う前からドイツ傭兵が全て失われたことは英国にとっては大きな痛手となった。


 だが、そうなると英国は他から兵を確保せねばならないが。

 アイルランドは伝統的に住民の多くがカトリックということもあり、英国からの傭兵募集についての協力は極めて消極的だった。

 スコットランドにしても1745年のジャコバイトの反乱の際に、英国が行ったハイランダーへの残虐行為の恨みつらみが多々残っていたのが現実だ。

(更に私はわざとスコットランド人の誇りであるアーブロース宣言を持ち出して、北米大陸で独立を求めている面々はアーブロース宣言に共鳴して独立運動を起こしたという宣伝まで行った。

 実際、このことは真っ赤な嘘では無くてかなり本当に近い嘘だ。

 史実の米国独立宣言においてアーブロース宣言が参考にされているのは事実だからだ)

 ともかくその影響から、スコットランドでも傭兵募集に応じる者は少ない有様で。

 結局はイングランドから兵を主に集めるしか無かったが。


 これはこれで英国にしてみればつらい話になるのは必然だった。

 外国傭兵を集めることで、戦争による国民の損耗を抑えていたのに、アメリカ独立戦争という内戦で英国の本拠と言えるイングランドの国民が失われていくのだ。

 更に外国人傭兵を集めるよりも自国民の兵を集める方が高くついていたのが、英国の現実だった。


 こうしたことから、アメリカ独立戦争に伴う様々な損耗に結果的に英国は耐えかねてしまい。

 史実と大幅に異なる流れのアメリカ独立戦争ではあったが、フランスが参戦することなく、アメリカが独立を果たすという私にとっては極めて美味しい結果がもたらされた。


 英国政府上層部の一部においては、ドイツの諸小国が傭兵募集に応じてくれていればアメリカ独立を阻止できていたのに、という声がかなりあったらしいが、ドイツの諸小国にしてみれば半ば並行して起きていたバイエルン継承問題の方が遥かに重要だった。

 実際に戦争勃発という足許に火がつく寸前で、下手をするとフランスがドイツの諸小国に本格的に侵攻してくるのではないか、と怯えていたのだ。

 そして、これまた私が介在したことで、歴史が変わったことの一つでもあった。


 史実ではこのバイエルン継承問題は、バイエルン継承戦争を引き起こしている。

 プロイセンとオーストリアが小競り合いの戦争を主にベーメン方面で行った。

 私はこの戦争のてん末を知っていたので、母マリア・テレジアと陰で連携して、兄ヨーゼフ2世の野望を阻止しようと動くことになった。

 兄ヨーゼフ2世としてはバイエルンを自国領にしたいのだろうが、私の立場としてはそれは困る事態になるからだ。

 作中で「アーブロース宣言」が出てきますが、史実であった話でもあります。

 本当に米国独立宣言にも影響を与えており、欧米では中世においてマグナカルタ(大憲章)に匹敵する人権の重要性を称える存在という人もそれなりにいる存在だとか。

 日本では何で余り知られていないのか、と残念な想いが私はします。

(と言いつつ、私自身も「時の旅人クレア」シリーズを読むまで知らなかったという、私の歴史の無知を晒す話でもあるのですが)


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― 新着の感想 ―
[気になる点] ここまで邪魔してヨーゼフ2世と仲良くやるの無理じゃない? なんかプロイセンなんかより敵というか完全に獅子身中の虫なんだけど
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