第14話
何で数年間に亘ってやる羽目になったか、というと。
私がトコトン王室費の節約削減に拘ったからだ。
何しろ、私の行った改革によって毎年初めにフランス王国の予算と決算は公表される。
そうした中で、王室費が毎年削減されるのが国民に見せられては。
「今年も王室費は削減されたぞ」
「その一方で、王室以上のぜい沢を貴族は享受して免税特権すら謳歌しているらしいぞ。フランスのために、と国王自ら王妃や王子を説いて肉料理を控えて、カブラを自ら食べる態度まで示されて、外国出身で更にハプスブルク家の皇女である王妃マリー・アントワネットまで同意されて節倹に努められているのに、貴族は平然とぜい沢をしている」
「更に言えば、免税特権廃止を国王や王妃が懇願しても、伝統の特権だと貴族は嘲笑する有様だとか」
「貴族の免税特権は何のためにあるのだ。国王以上のぜい沢を享受する権利が貴族にあるのか」
「全くだ。いつの間に貴族は国王より偉くなったのだ」
フランス国民の間で、貴族に対する不満は徐々に増大することになった。
因みに僧侶階級の免税特権は、(メタい話で既述だが)イエズス会復活という飴のお陰で、ローマ教皇庁の口先反対はあったが1776年には廃止されていた。
貴族階級から僧侶になった面々もそれなりどころではない数でおり、僧侶階級の免税特権廃止は、貴族階級内部から猛反対が起きることにはなったが。
「それなら、貴族階級への免税特権廃止を認めるかの二者択一だ」
という私を背後にしたルイ16世の一言の前に、僧侶階級の免税特権廃止は通ったのだ。
そして、僧侶階級の免税特権廃止の引き換えとして、元イエズス会修道士を教師の中心とする小学校がフランス全土に徐々に建設されることになった。
(もっとも、そうはいっても長年に亘る僧侶階級の免税特権である。
中々現場的には難しい話になった。
それこそ袖の下で事実上の免税を図る僧侶が珍しくなかったからだ。
だから、順調にフランスの税収が僧侶階級から入るようになるのには数年掛かりの話になった)
そして、その小学校で広められ、その児童を中心として歌われたのが、
「私達の祖国フランスを愛する歌」
で後に国歌となった。
その元歌(?)は「ラ・マルセイエーズ」だった。
流石に一部の歌詞は修正せざるを得なかったが、私にとっては祖国フランスの国歌は「ラ・マルセイエーズ」しか事実上は存在しない以上、「ラ・マルセイエーズ」が国歌になって当然だった。
この当時に史実同様に不遇を託っていたモーツァルトを呼び寄せて作曲をさせて、私が記憶の中から作詞を行って、夫のルイ16世が作詞者ということにして、
「私達の祖国フランスを愛する歌」
は作られて、フランス各地の小学校で毎週1度は歌われることになったのだ。
21世紀においては世界で最も血腥い国歌の一つとされる我がフランスの国歌ではあるが。
それこそ小学校の児童が歌っていれば、その親も自然と歌うようになるし、必然的にその周囲にも広まるようになるのだ。
更に言えば、(実際には違うが)国王ルイ16世が作詞を行われた歌でもあるのだ。
この歌がフランス国内において順調に「私達の祖国フランスを愛する歌」は広まることになり。
外国に対する反感や祖国を愛していないように見える貴族への反感が、フランス国民の間に徐々に広まっていくのは半ば当然と言えた。
その一方で、私は少し頭を抱え込むことにもなってしまった。
「いい歌だね。最愛の妻が実は作っただけのことはある」
とルイ16世が言って、更に私達の子どもまでが「私達の祖国フランスを愛する歌」を口ずさむようになってしまったのだ。
いい歌なのだけど歴史を変えすぎたかもと私は思った。
本来はフランス国歌である以上、フランス人を作曲者にすべきですが。
私がこの辺りのフランス音楽史に詳しくないので、どうにもこの当時の著名なフランス人作曲家を思い付かず、またネット検索でもヒットしなかったのでマリー・アントワネットとの逸話があるモーツァルトを作曲者にしました。
そのために場合によっては、後で改稿も考えています。
ご感想等をお待ちしています。